中堅企業が実装すべき財務戦略
~ジュニアボードによる
経営者・幹部人材育成~
- 資本政策・財務戦略
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本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第6章の抜粋記事です。
ジュニアボードによる経営者・幹部人材育成
TCGでは、「ファーストコールカンパニー(100年先も1番に選ばれる会社)」という経営コンセプトを提唱している。100年先も会社を存続させるためには承継の成功がカギとなり、事業・後継者・幹部人材の育成を含む組織・財務の承継ストーリーの設計が欠かせない。しかし、実際には株式の相続ばかりに目を向ける会社が多く、事業承継で非常に重要な次世代人材(後継者・経営幹部)の育成ストーリーを設計している会社は少ない。
なぜ、後継者・幹部人材の育成が承継に必要なのか。自社の事業・組織・財務などの全体像を把握しているのは、経営者のみであることが多いからだ。経営者は「この事業であればどのくらいの人員が必要で、どれだけ売上げを伸ばせるか」を常に考えている。だが、後継者は事業や組織がすでに完成している段階から会社で働いているため、どうしても会社を捉える視点が部分的になりがちである。
社長が急に交代して経営が傾くのはこのためだ。幹部人材が経営者の視点を持って経営を支えていれば、急な交代でも経営が傾くことはないはずだが、現実はそうではない。
そのため、社長が交代する前から後継者候補、または幹部人材に対する経営者育成が必要になる。社長に就任してから慌てて勉強するのでは遅く、経営者になる前から経営における視座を高める訓練をしなければならない。
経営者を育成する訓練においては、座学だけでなく実践も必要である。自社単独の育成に限界を感じる場合は、外部機関への依頼をお勧めしたい。TCGでは、このような課題を抱えた会社に対して次世代経営者の育成を行っている。
TCGでは、後継者を経営者へ育成する際、後継者本人だけでなく、後継者を支える幹部人材や将来的に後継者になる可能性がある人材など、階層別の育成計画を提案している【図表6-8】。承継を進めるうえで、経営者人材を次から次へと輩出する仕組み(経営システム)の構築が重要であるからだ。
当然ながら、階層ごとに教育内容(育成システム)は異なる。階層別に育成計画を立てることで、不測の事態が起きてもすぐに代わりの人材を充てることができる。また、若手社員のうちから優秀人材を育成する仕組みとしても活用が可能だ。
TCGのクライアント企業の後継者育成システムを見ると、特に「ジュニアボード」に取り組むケースが増えつつある。
ジュニアボード(青年役員会)とは、若手・中堅社員を〝青年役員〟として任命し、自社のビジョンや経営課題について全社的視点で討議してもらい、生まれたアイデアを経営陣に具申させ、良い提案は会社として取り入れていこうとする仕組みである。ジュニアボードにおいては、後継者をはじめ社員に「経営に参画をさせる」「自社の未来を創る活動に関与させる」仕組みとして運営していくことが重要だ。ジュニアボードはTCG内でも実施しており、社員の育成と同時にそこから出た意見を経営陣へ提言することにより、企業価値向上に努めている。
例えば、ジュニアボードを将来の役員を育てる場としているI社では、中期経営計画の策定など全社横断での取り組みが必要な経営課題について、TCGがファシリテートをしながら、ボードメンバー全員で分析。今後の戦略をディスカッションしたうえで、数値計画を含めた中期経営計画を策定している。策定した中期経営計画は現経営陣へ上申し、実際の中期経営計画にも反映させている。
中期経営計画の策定だけでなく、さまざまなテーマで毎年ジュニアボードを開催し、経営陣に提言しているクライアント企業もあり、経営者視点で考える訓練をさまざまな形で積んでいる。例えば、J社は1年目にジュニアボードで中期経営計画を策定して役員会へ上申した後、2、3年目に中期経営計画から重点テーマを設定し、全社横断型のプロジェクトチームを組成してその具体化を進めている。TCGのコンサルタントはプロジェクトチームの発足当初からメンバーに寄り添い、そのサポートによって他社の成功・先端事例の研究と自社分析を行い、J社のありたい姿と不足部分を明確にして対策を検討し、実行に移して成果を上げている。このようにJ社は、ジュニアボードシステムを活用し、経営に参画する社員を増やすことで後継者の候補人材の底上げを図っている。
未来は予測するためにあるのではなく、創るためにある。後継者には、自社の未来を描く力が必要である。次世代の経営チームでビジョンを描き、それを推進することが未来を創ることにつながるのである。
ジュニアボードを実施する際は、「議論や提言をまとめるリーダーを誰にするか」が重要である。例えば、オーナー経営の会社でジュニアボードを実施する際は、リーダーを後継者(社長の子息など)にし、その人がリーダーとして成果を上げることで社内での求心力を向上させる場としても活用する。
また、後継者の将来の右腕・左腕となる人材は誰かを見極める場としても活用するケースもある。ジュニアボードを通して、普段の業務ではなかなか見ることができない個人のものの見方や考え方が見えるようになり、「信頼に足る人物であるか」「会社の将来に不可欠な人材であるか」を見極めることができる。
ジュニアボードを通じた次世代経営者の育成によって、自社の将来を見据えた「組織の承継」につなげていただきたい。
次世代経営者育成の取り組みは、現経営者が第一線で活躍している間に行わなければならない。ジュニアボードのように、社内での次世代経営者育成の取り組みを進めながら、経営者が持っている経営ノウハウや大事にしていることを、後継者をはじめ次世代のメンバーへと伝承することで組織の承継が完成する。
TCGでは「会社の承継には最低でも10年かかる」と提言しているが、その理由はこの組織の承継にある。次世代経営者および幹部人材を育成する仕組みを社内で定着させるには長い期間を要する。1年、2年では定着しないのだ。
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