リスクマネジメントの重要性と
モデル事例を業界別に紹介
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自然災害、サイバー攻撃、規制の変更、サプライチェーンの寸断など、企業を取り巻く不確実性は高まっています。こうした事象は損益やキャッシュフロー、資本効率の悪化に直結するため、ガバナンスから運用、改善までを一気通貫で設計することが重要です。
本コラムでは上場企業の公開情報を参照軸に、リスクマネジメントを「ステップ1~ステップ5」で実装するためのフレームワークを提示します。業界別の3社の事例に当てはめて整理しているため、自社のリスクマネジメントの参考にしてください。
ステップ1~ステップ5の実装フレームワーク
ステップ1:ガバナンスと方針の確立
取締役会やリスク委員会、経営会議などの監督体制と役割分担を明文化します。
経営戦略や資本政策、投資審査と連動したリスクアペタイト(許容水準)を定義し、統合報告書や有価証券報告書で方針として開示するのが一般的です。
組織横断で適用できるポリシーと、事業特性に応じた運用基準(セキュリティや品質、サプライチェーンなど)を接続します。
ステップ2:リスクの特定と評価(定量・定性)
経営戦略、財務、オペレーション、コンプライアンス、ESGの観点から主要リスクを洗い出し、影響度と発生可能性をもとに優先度を付けます。
定量評価(感応度分析やシナリオ、ストレステストなどによる損益、キャッシュフローへの影響)と、定性評価(成熟度や業界別の規制など)を併用します。
KRI(Key Risk Indicator)候補を設定し、早期警戒に用いる指標を設計します。
ステップ3:対応設計(予防や低減、カバーの組み合わせ)
予防:標準化、教育、アクセス統制、品質保証、構成管理など、発生確率を下げる取り組み。
低減:複数調達、在庫ポリシー最適化、工程・運用改善など、影響度を下げる取り組み。
カバー:保険の活用、為替や原材料の価格変動に対するヘッジ、契約条件によるリスク分担など、外部手段や契約で損失を吸収する力を確保する施策。
これらを費用対効果の観点で組み合わせ、残余リスクを許容水準に収めます。対応ごとにKPIやKRIを設け、運用状況を踏まえて見直します。
ステップ4:事業継続とレジリエンス運用(BCP)
重要業務や重要工程の特定、RTO/RPO(復旧時間目標・復旧時点目標)を設定したうえで、代替拠点・代替ルート・バックアップ・代替人員を計画します。
訓練・模擬演習などを定期的に実施し、実行手順の妥当性や復旧時間の短縮を検証します。供給網やネットワーク、工場や物流拠点の分散・切替手順など、現場で機能する仕組みに落とし込みます。
ステップ5:モニタリングと継続的改善
主要KRIを継続的に監視し、運用ルールを整備します。インシデント発生後は検証を行い、再発防止策を明文化して組織に展開します。内部監査や外部評価を活用し、改善サイクル(Plan-Do-Check-Act)を制度として定着させます。
事例① KDDI株式会社(通信業)
ステップ1:ガバナンスと方針の確立
ネットワーク障害、災害、サイバー脅威に対するリスク方針を公表。大規模障害後の再発防止体制や責任分担を明確化。
ステップ2:リスクの特定と評価(定量・定性)
通信ネットワークの安定運用に関わるリスクを抽出し、影響度・発生可能性を基準に管理。顧客影響や復旧時間に関する指標を設定。
ステップ3:対応設計(予防・低減・カバー)
ネットワークの多重化、監視強化、構成管理の標準化、ステークホルダーへの情報提供プロセスの改善。保守契約やSLAを通じたリスク分担も位置づけ。
ステップ4:事業継続とレジリエンス運用(BCP)
災害時の優先復旧手順、代替ルート整備、訓練の継続実施を資料で説明。
ステップ5:モニタリングと継続的改善
障害後の検証結果と改善状況の公表、KRIと監査を連動させた運用の強化。
事例② 武田薬品工業株式会社(製薬業)
ステップ1:ガバナンスと方針の確立
GxP(適正製造・品質)やファーマコビジランス(安全性監視)を核に、品質や安全性に関するグローバルガバナンスとリスク方針を開示。
ステップ2:リスクの特定と評価(定量・定性)
研究開発、製造品質、規制対応、希少原料のサプライなどを主要リスクとして特定し、重要度を評価。
ステップ3:対応設計(予防・低減・カバー)
グローバル品質管理、リスクベース監査、サプライヤー管理、CAPA(是正・予防活動)を運用。重要原料やコンポーネントに対し、在庫や代替ソース、契約上のリスク分担・保険によるカバーを組み合わせる。
ステップ4:事業継続とレジリエンス運用(BCP)
重要製品の供給継続計画、査察対応手順、代替製造や在庫方針を整備。
ステップ5:モニタリングと継続的改善
監査・査察の結果に基づく改善、逸脱、苦情の解析と再発防止を継続的に運用。
事例③ ソニーグループ株式会社(エレクトロニクス・エンターテインメント・他)
ステップ1:ガバナンスと方針の確立
多様な事業ポートフォリオを前提に、リスクマネジメントの方針と監督体制を開示。グローバル・ガバナンスや情報セキュリティの責任体制を明確化。
ステップ2:リスクの特定と評価(定量・定性)
為替・金利などの市場リスク、情報セキュリティ、品質、規制の主要リスクを体系化。市場リスクについては管理方針や定量評価の枠組みを資料で開示。
ステップ3:対応設計(予防・低減・カバー)
情報セキュリティ基準の適用、品質保証プロセス整備、事業・供給の分散、デリバティブなどでの価格・為替変動のカバー方針を開示。
ステップ4:事業継続とレジリエンス運用(BCP)
重要拠点・重要システムの継続性確保を目的に、計画や訓練の運用方針を公表。
ステップ5:モニタリングと継続的改善
重要リスクの定期見直し、内部監査との連携、改善の継続をディスクロージャーで開示。
まとめ
ステップ1のポイント:ガバナンスと方針の明確化。取締役会・委員会の監督、リスクアペタイト、役割分担を文書化し、経営戦略と連動させることです。
ステップ2のポイント:リスクの特定と評価(定量・定性)。主要リスクを体系化し、影響度×発生可能性で優先度を付け、シナリオ・ストレステストで財務・サービス影響を可視化します。
ステップ3のポイント:対応の組み合わせ設計。予防・低減・カバー(保険やヘッジ、契約による分担)を費用対効果で最適化し、KPI/KRIで運用します。
ステップ4のポイント:実効性のあるBCP運用。重要業務の特定、RTO/RPO設定、代替手順・代替資源の整備と訓練で、復旧時間短縮と損失最小化を図っていきます。
ステップ5のポイント:モニタリングと継続的改善。KRI、内部監査・外部評価に基づく改善サイクルを制度化し、レジリエンスを高め続けるように浸透させます。
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