COLUMN

2026.05.27

役員持株会のメリット・デメリットとは?
仕組み・評価方法・税務法務の落とし穴まで徹底解説

  • ホールディング経営

役員持株会のメリット・デメリットとは?仕組み・評価方法・税務法務の落とし穴まで徹底解説

目次

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企業の経営者にとって、自社株式の管理方法は事業承継や資本戦略において極めて重要な課題です。特に上場企業や中堅企業では、役員持株会制度を活用して、株式の集約や経営基盤の安定化を図るケースが増えています。本コラムでは、持株会制度の仕組みから、税務および法務上の留意点、そして実践的な活用方法までを、経営者の視点で解説します。

持株会の基礎知識

持株会とは何か

持株会とは、持株制度に基づいて複数の者が共同で自社株式を取得し保有する組織です。個人で株式を保有するのではなく、組合員が出資金を出し合い、組織として一括して購入することで、事務処理の簡素化と株式管理の透明性を実現します。
持株会には主に4つの種類があります。
・従業員持株会は従業員が対象
・拡大従業員持株会は従業員と特定の関係者が対象
・役員持株会は役員(子会社役員を含む)が対象
・取引先持株会は取引先企業が対象

役員持株会と従業員持株会の違いは次のとおりです。
これら2つは運営目的と法的性質が大きく異なります。従業員持株会は福利厚生の側面を持ち、会社から奨励金を支給することが認められています。従業員の経済的負担を軽減し、株式への投資参加を促進することを狙いとしています。一方、役員持株会は福利厚生という概念を持たず、奨励金などの金銭的支援は認められていません。

その目的は異なります。
・役員として一定の自社株を保有することで経営者意識を高めることが目的
・インサイダー取引対策として、個人ではなく持株会を通じて株式を保有することが目的

さらに重要な点として、役員持株会は従業員持株会とは別の独立組織として設立し、運営される必要があります。これは税務上および法務上の区分を明確にし、奨励金支給の適否判定を正確にするためです。

役員持株会の活用:資本戦略での位置づけ

事業承継における役割

役員持株会は事業承継戦略の重要な道具となります。主なメリットは次のとおりです。

第一に後継者への安定的な株式集約です。

後継者がすべての株式を個人で保有する場合、相続税負担が過大になる可能性があります。役員持株会を活用することで、株式をいったん組織に集約し、段階的に後継者へ移行させることができます。

第二に創業者の相続対策です。

創業者が保有する株式の一部を事前に役員持株会に移行させることで、相続時の株式分散を防ぎ、相続税評価額の圧縮を図ることが可能です。

第三に株式評価の最適化です。

役員持株会内での評価方法を適切に設定することで、税務上有利な価格形成が実現します。

第四に経営基盤の安定化です。

役員が自己資金で株式を購入することで、経営陣のコミットメント強化が図られ、短期的な株価変動に左右されない経営の実現につながり、長期的な経営戦略の推進が可能になります。

第五に株式の集約と分散の調整です。

複数の役員が個人で株式を保有する場合、議決権の分散が経営判断の迅速性を損なう可能性があります。
役員持株会を通じた集約化により、経営判断の一元化、重要な経営判断時の投票行動の統一、後発的な株式売却による経営権喪失リスクの低減が期待できます。

デメリットは次のとおりです。

第一に株式の流動性の制約です。

非上場企業の場合、個人では売却先を見つけることが困難であり、役員持株会を通じることで、さらに売却が制限されるケースが大半です。その結果、急な資金化ニーズに対応できない可能性があり、経営危機時の現金化が困難になります。さらに、後継者への引継ぎまで株式が固定されやすくなります。

第二に税務リスクです。

役員持株会の設計に不備があると、次のような税務リスクが生じます。
まず、評価方法の問題です。複数の持株会が同時に存在する場合、評価方法が異なると取引価格を統一できなくなり、これは税務調査の対象となりやすい領域です。
次に、過度な割引の否認です。評価上の割引が市場価格と大きく乖離していると、税務当局から否認される可能性があります。さらに、相続評価の問題です。相続時に役員持株会内の株式がどのように評価されるか、事前の明確化が必須です。

第三にガバナンスリスクです。

役員持株会の運営には透明性が必須です。
不適切に運営されると、経営陣による株式の私物化とみなされるおそれがあります。また、少数役員への利益供与と判断されるおそれがあります。上場企業の場合、コーポレートガバナンスコード上の課題となる可能性があります。

設計における留意点

役員持株会を適切に運営するためには、以下のポイントを押さえてルールを設計する必要があります。

(1)参加者選定の基準

役員持株会への参加資格を明確に定義することが重要です。
・取締役のみか、執行役員も含めるか
・子会社の役員を含めるか
・顧問など非常勤役員は対象外とするか
これは持株会の規約(持株会規約)に明記する必要があります。参加者の範囲が曖昧だと、後の税務トラブルや運営上の混乱を招くおそれがあります。

(2)出資比率と拠出方法

各役員の拠出額をどのように決定するかは、以下の観点から慎重に検討すべきです。
・役位や給与水準に連動させるのか
・全員同額とするのか
・自由な選択制とするのか
非上場企業では、経営陣の合意に基づき柔軟に設定できますが、上場企業ではより厳格な基準が求められます。

(3)買い戻し条項と譲渡制限

役員持株会内での株式売買ルールを事前に設定することが重要です。
買い戻し条項は、役員が退職する場合、持株会がその株式を買い戻すメカニズムを設ける必要があります。買い戻し価格は事前に定めるのか、時価で評価するのかで税務上の効果が異なります。
譲渡制限は、役員持株会内の株式を会社外へ売却することを禁止すべきか、制限すべきかを決定します。

(4)期間設定とロックアップ

役員持株会の運営期間をどの程度の期間に設定するかは戦略的判断です。
・事業承継が完了するまでの期間:通常10年から20年。
・代表者の定年までの期間
・無期限での運営
ロックアップ期間(売却禁止期間)を設けることで、経営陣のコミットメントを強化できます。

(5)評価方法の明確化

最も重要な設計ポイントは、役員持株会内での株式評価方法です。
評価基準の選択肢は次のとおりです。
・時価(市場価格):上場企業の場合に適用します。
・原則的評価方式(類似業種比準価額と純資産価額法の併用)
・配当還元方式(配当金に着目した評価)
・複合評価法:複数の方法を組み合わせる場合に用います。
異なる持株会が異なる評価方法を採用すると、税務上の問題が生じるため、事前に統一した方法を採用することが必須です。

(6)ガバナンス体制の整備

持株会の透明性と適法性を確保するためには次のとおりの整備が必要です。

①組織体制

・代表理事(理事長)の選定
・監査や監督機能の配置
・会議運営ルールの策定

②書類管理

・持株会規約の整備
・組合員台帳の作成と更新
・総会議事録の保管
・株式出入簿の管理

③信託スキームの活用

持株会代表理事が株式を信託管理することで、以下が可能になります。
・株主名簿管理の簡素化
・投票権の一元管理
・配当受取の集約化
ただし、信託契約の内容を明確にしておくことが重要です。

役員持株会の戦略的意義

役員持株会は、経営者にとって経営支配権の維持と事業承継の実現を両立させるための有効な手段です。特に次のような場合に有効です。

(1)事業承継を想定している創業者・経営者に該当する場合
(2)相続税負担を軽減したい経営陣に該当する場合
(3)複数の役員が存在し、経営権の安定化が必要な企業に該当する場合
(4)株式の分散を防ぎ、経営判断の迅速性を確保したい企業に該当する場合

成功のカギは、税務および法務の専門家と十分に相談したうえで、企業の経営方針に合致する慎重な設計にあります。また、導入後も、毎年の評価見直しと運営体制の透明性の確保により、継続的に適切に機能させることが重要です。

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