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新規事業開発の必要性を感じている企業が多い中、実際は「推進の段階までいけずに終わってしまう」「市場に投下したものの失敗に終わる」という企業が多いのも事実です。それらの要因の一つとして正しい事業計画を組めていないことが挙げられます。
本コラムでは新規事業開発における事業計画の重要性とポイントについて解説します。
事業計画スケジュールの重要性
(1)VUCA時代、高まる新規事業の必要性
現代は、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の頭文字を取った「VUCA時代」と呼ばれ、企業は迅速な対応が求められています。このような環境下で、新規事業の必要性がますます高まっています。実際、タナベコンサルティングが実施する2024年10月の「長期ビジョン・中期経営計画の関するアンケート」によれば、67.6%の企業が次期の長期ビジョンや中期経営計画の重点テーマとして「収益改善、新商品・新規事業開発」を挙げています。しかし、新規事業部門を設けたものの、進め方が分からないという声も少なくありません。本コラムでは、新規事業開発の計画について詳しく解説します。
タナベコンサルティング作成
(2)新規事業発案から推進までのスケジュール
新規事業開発はやみくもに行っても成功する確率は限りなく低く、企業の財務状況を悪化させるだけの結果となってしまいます。正しい段階を踏み、適切なスケジュールで進める必要があります。以下のスケジュールのように新規事業開発は発案・計画・推進の3つのフェーズに分けられ、新規事業案を絞り込み、戦術まで計画策定をする必要があります。次章では、それぞれの段階について、詳しく見ていくことにしましょう。
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新規事業開発のスケジュール
(1)フェーズ1:分析・新規事業オプション策定
新規事業計画において最初に始める作業は自社の外部環境、および内部環境の分析です。外部環境分析では、成長している市場や、その市場における脅威・ライバルなどを調査します。具体的に行うこととしては成長ドメイン調査、技術調査、顧客ニーズ、企業事例調査などがあります。外部環境分析は新規事業開発において、必ず実施しないといけない作業ではありますが、成長市場かつ、顧客のニーズも高く、競合もまだ少ないような優良市場を見つけたとしても、それだけですぐに進出して良いわけではありません。内部環境を通じて、自社の存在意義や強みを理解したうえで、新規事業に投資できるだけの企業体力があるのかを確認する必要があります。
まずは、創業の原点から自社を振り返り、会社が大切にしてきた思いや、社会にどのように貢献しようとしてきたのかを深く理解します。どんなに素晴らしい事業の構想を練ることができたとしても、その企業の理念や存在価値に沿った事業でなければ、うまくいくことはないでしょう。そして、自社のことを深く知っていく段階で、同時に自社の強みや固有の技術も把握します。
このように定性的に自社を分析したうえで、定量的にも自社を見る必要もあります。安定性・収益性・成長性・生産性の視点から、自社の財務状態を診断し、新規事業を始められる投資余力はあるのか、そしてどれだけあるのかについて理解しておく必要があります。以上のような外部環境分析と内部環境分析の結果を掛け合わせ、新規事業案を創出します。そして、浮かび上がった新規事業案をそれぞれ市場性・優位性・収益性・実現可能性の観点から数案に絞り込みます。そして、絞り込んだ案をさらにスクリーニングし、社内検討会を開いて、どのような方向性で新規事業を進めるかを決定させます。
(2)フェーズ2:新規事業計画策定
フェーズ1で絞り込んだ新規事業案について、フェーズ2ではどのように推進してくかについて計画を立てる段階になります。各案について、実際の顧客のニーズを確かめたり、先行者事例の調査を行う「フィジビリティスタディ」とその事業について、さらに詳しい調査・分析を行い、戦略を策定する「新規事業計画」を同時に走らせます。フィジビリティスタディでは、実際に顧客にヒアリング・アンケートを実施することで、近視眼的なアイデアになっていないか、そして顧客が本当に求めている製品・サービスなのかということを確認することができます。
同時に、他社の事例も調査しながらこの作業を進める必要があります。その結果をリアルタイムに反映しながら、事業戦略をたて、収益モデルを考える必要があります。戦略が決定した案に関しては「戦術」を考える段階に入り、どのようにマーケティングしていくのか4P(製品・チャネル・価格・プロモーション)の目線から考え、自社のリソースで推進が困難な案に関してはアライアンス先を検討します。また、戦う場と方法が決まった案に関しては、顧客の想起集合にはいれるようにブランディング策を考える必要があります。そこまで決まった案に関しては、最後の検討会を実施し、次の推進の段階に向けて方向性を決定させます。
(3)フェーズ3:新規事業推進
フェーズ2にて検討を重ね、決定した案に関して、フェーズ3では実際に市場にローンチさせ、売り出していきます。とはいえ、検討を重ねた案だからといって、突然世に出すのではなく、事前にテストマーケティングを行います。
まず、新規事業案が技術的・組織的に困難な場合は、フェーズ2で検討したアライアンス候補先に提案をします。そして、新規事業のプロトタイプを作成し、技術的な問題はないか、仕様は適切か、思い描いていた製品を政策できているかなどをチェックします。そのうえで、実際に顧客に使用してもらうことや、テストマーケティングを実施することで、さらなる改善点を探ります。プロトタイプの作成、テストマーケティングにて浮かび上がった課題を改善する作業を何度も繰り返し、出来上がった製品を商品をついに市場にローンチします。
ここからの「戦闘」の段階は、フェーズ2までに策定した「戦略」と「戦術」に従って行い、経営陣は正しく実行できるようマネジメントしていく必要があります。そして、実際に市場に投入した後、浮かび上がった課題を解決しながら、成長軌道に乗るよう導いていきます。
詳細はこちら:
新規事業開発コンサルティング
ケーススタディ
(1)A社の事業計画事例
実際に事業計画を立てたうえで、新規事業開発を行った事例を紹介します。A社は大阪に本社を置く、インテリア・雑貨メーカーです。新規事業開発を行うにあたって、自社の強みと外部環境分析を掛け合わせていくつかの事業案を創出しました。それらの事業案を、市場性・優位性・収益性・実現可能性の面からスクリーニングした結果、家電市場のあるドメインをターゲットにすることになりました。
その過程の一つとして、顧客が抱える課題を列挙し、その課題を自社の持つ技術で解決できるかという視点で市場の絞り込みを行いました。選ばれた市場は成長市場にもかかわらず、数社の寡占状態でしたが、当時はデザイン性の乏しい製品ばかりでした。デザイン性に強みのあるA社にとっては、「成長市場×自社の固有の技術」の事業であったといえます。戦略を策定したうえで、収益シミュレーションを行い、マーケティングやブランディングを細かく検討したうえで、市場に投入しました。A社はデザイン性を武器にその家電市場を含め、現在も成長し続けています。
(2)まとめ
A社の事例におけるポイントは次の3点です。
1点目は外部環境を通じた成長市場の絞り込み、2点目は内部環境分析を通じた自社の固有の技術(強み)の明確化、3点目は「成長市場×自社の固有の技術」で狙うべき市場を絞り込んだことです。これらのポイントは、A社が事前に正しい事業計画を立てたことによって実現されました。
新規事業開発を行う際には、具体的な時期などを含めた事前計画が非常に重要です。計画をしっかりと立てることで、成長市場を的確に見極め、自社の強みを最大限に活かすことが可能になります。新規事業開発を検討している方は、ぜひ本コラムで紹介した方法を参考に、効果的な事業計画を立ててみてください。
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