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中期経営計画でスローガンを掲げる企業が増えています。
スローガン(slogan)とは「標語」や「合言葉」のことで、企業や団体などの組織が自らの主張や活動の目的を短いフレーズに込めたものです。
この記事では、中期経営計画におけるスローガンを作るポイントや事例を紹介します。
企業スローガンとは
企業におけるスローガンとは、自社の事業活動の目的や方向性を、社内外に広く認識してもらうための標語といえるでしょう。
企業理念や経営理念は、企業の考え方や存在意義を示す概念のため、言葉がダイレクトに伝わりにくいという側面があります。しかし、スローガンは、難しい理念を端的に表現したもののため、初めて聞く人にも分かりやすいことが特徴です。
また、理念とは違い、都度発表するもののため、時代に即したものを作成できます。
中期経営計画とスローガンの関係
中期経営計画を策定する目的は、社内外に経営の方向性を示して理解を得ることや、従業員のモチベーション向上、銀行・自治体等からの信頼感を高めることなどが挙げられます。
そのためには、方向性を言語化・数値化するとともに、ステークホルダーに前向きな印象を持ってもらうことが重要です。
スローガンは印象に残りやすいフレーズのため、意図が端的に伝わりやすく、経営計画を強く印象付けるために効果的です。
スローガンを掲げることの重要性
中期経営計画でスローガンを掲げることは、以下の4つの点において重要です。
●経営戦略を分かりやすくできる
●自社の理念を浸透させられる
●ターゲットを意識できる
●ベネフィットや将来像を感じられる
論理立てた詳しい説明は、納得を得るために必要なものだという反面、内容が込み入ったものになる程、理解も難しくなるでしょう。
スローガンは、これらの内容を端的に説明でき、またステークホルダーに強く印象付けるという効果を持ちます。
スローガンを作るときのコツとは
スローガンを作るにはMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への理解が必要です。
コツをつかめば、求められる条件を備えたよいスローガンを作成できるでしょう。
ここでは、スローガンを作るときのコツについて紹介します。
自社のメッセージやイメージを簡単に伝わる一言で表す
スローガンは、従業員のモチベーションを向上させたり、判断に迷ったときの指針になったりするという効果があります。そのため、相手に訴えかけるメッセージ性が重要です。
また、簡潔で印象に残りやすい言葉を用いていれば、スローガンの意図を簡単に理解でき、業務内でもすぐに思い出せるでしょう。
スローガンは、分かりやすく、印象に残りやすいということを意識して作りましょう。
経営計画で立てた目標に沿って明確に表す
経営計画で使用するスローガンは、目標に沿っていることが望ましいでしょう。
経営計画は、社内外に対して、自社が何を目標にして行動するかということを表明するためのものです。そのため、達成したい目標について明確に表していると、社内のモチベーションが上がりやすい傾向にあります。
スローガンが明確化されているほど、中期の目標への理解度も高まります。
ターゲットを明確にする
中期経営計画は、その特性上、特定の立場の人物ではなく社内外の全てに発信する情報です。一方で、スローガンはターゲットを絞ったほうがメッセージが伝わりやすいといえます。
従業員向けなのか取引先向けなのか、あるいは顧客向けなのか投資家向けなのか、というターゲットのイメージが必要です。
ただし、誰を対象にするかに関わらず、目標の明確化と、分かりやすい言葉で表すことは忘れないようにしましょう。
現場の声を意識する
急激な売上アップや無茶な事業拡大を目標とするようなスローガンは、従業員から反発や疑問が湧き上がることも考えられます。
経営側が強制するような表現は、無理を強いているように受け止められ、逆効果になるでしょう。
現場において、具体的にはどのような施策を行えば目標が達成できるのか、認識を従業員と共有することが望ましいといえます。
そのためには、役員だけでスローガンを決めるのではなく、現場の声を反映させる姿勢が重要です。
キーワード選びには慎重になる
スローガンのキーワード選びには慎重になり、効果的な言葉を使用するように検討を重ねましょう。
スローガンは短いフレーズのため、含まれている全てのキーワードに注目が集まります。
例えば、前向きでポジティブな言葉は将来をイメージさせるため、スローガンに適しているといえます。誰もが納得し希望が持てるキーワードと、心地よい言い回しがあれば、目覚ましい効果が期待できます。
経営計画におけるスローガンの各社事例
経営計画におけるスローガンの役割や、作成のポイントについて解説してきました。
ここでは、具体的に企業でどのようなスローガンが掲げられているか、事例を紹介します。
実際に自社で掲げるスローガンのヒントを、これらの事例から学びましょう。
NO MUSIC, NO LIFE.|タワーレコード株式会社
タワーレコード株式会社のスローガン「NO MUSIC, NO LIFE.」は、音楽好きの間では非常に有名な言葉で、スローガンを越えて格言のような捉え方もされています。
これは「音楽なしには生きられない」「音楽のない人生はあり得ない」というような意味のスローガンです。タワーレコードが音楽そのものを応援することを自社の役割とし、企業理念としていることを、印象的なフレーズで表したものだといえるでしょう。
>参考:タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」
あったらいいなをかたちにする|小林製薬株式会社
小林製薬株式会社は「ブランドスローガン」として「あったらいいなをかたちにする」を掲げ、さらに「コーポレートブランド憲章」のなかでスローガンの意味を解説しています。
顧客も気づいていないものを見つけだしてお届けするという意味のスローガンで、顧客の立場に深く寄り添った企業姿勢を表します。
顧客を中心としたステークホルダーに、企業の存在価値を親しみを持って感じてもらうための、工夫がなされたスローガンといえるでしょう。
まだ、ここにない、出会い。|株式会社リクルート
株式会社リクルートは、出会いの機会を創出する意気込みを、このスローガンに込めています。
スローガンの原点は、創業当時の大学生の就職状況が背景にあります。
大学や教授を通して就職先を見つけるしかなかった時代に、新卒採用の広告を集めた情報誌を創刊し、大学生に自分の意思で就職先を見つける機会を提供したことに由来するものです。
原点を忘れず、一貫したモチベーションを維持するために掲げられたスローガンです。
Value from Innovation|富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、創立80周年を機にコーポレートスローガン「Value from Innovation」を掲げ、ブランドステートメントに具体的なメッセージを記しています。
革新的な技術・製品・サービスを生み出すことが自社の価値であり、顧客のビジネスや生活の可能性を広げるものであると定義したものです。
積極的にイノベーションを起こす決意をスローガンに込めています。
Make the Sustainable Growth|東京急行電鉄株式会社
東京急行電鉄株式会社は、2020年度までの3年間の中期経営計画において、スローガン「Make the Sustainable Growth」(直訳:持続的な成長を実現する)を掲げています。
街づくり・企業づくり・人づくり の3つのサスティナブルを基本方針として、鉄道事業の安全・安心・快適の追求と渋谷の再開発事業の推進、沿線の価値と生活水準の向上を目指すものです。
自社の社会的意義を明確にし、未来を創造する意思を込めたスローガンです。
まとめ
中期経営計画で掲げるスローガンについて、企業の事例を交えて紹介しました。
スローガンは経営理念のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に、プラスαとして掲げられる位置付けのものです。
MVVのポイントを押さえたうえで中期的なミッションを表現するフレーズだと考えるとよいでしょう。
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