COLUMN

2023.07.26

新規事業のアイデア出し7つの着眼点とアイデアの評価方法

新規事業を検討するなら知っておきたい事業アイデア出し7つの着眼とアイデア検証10の項目

-67.9%- タナベコンサルティングが昨年末に実施した企業アンケートにて重点テーマとして「収益改善・新商品/新規事業開発」を挙げた回答率です。アフターコロナでの企業の成長戦略は新規事業にあるといっても過言ではありません。実際、新規事業開発を担当する筆者の下には日々新規事業に関するご相談が寄せられています。特に今、多くいただくご相談内容はアイデアを客観的に評価・検証する「フィジビリティスタディ(事業性評価)」です。本コラムでは新規事業にまつわる①アイデア出しと②アイデアの評価検証(フィジビリティスタディ)の2点に絞って、実例を交えて紹介していきます。

中期経営計画策定の参考事例を紹介

新規事業の成功確率を高める7つの着眼

筆者は、新規事業アイデア創出の際、押さえるべき7つの着眼があると提唱しています。これはコンサルティング実務でも使っているものです。参考までにご確認ください。

新規事業の成功確率を高める7つの着眼

図1:タナベコンサルティング作成

①事業ロットの着眼
事業ロットとは文字通り、新規事業の事業規模を指しています。別の言い方をいえば、3年後に10億円、5年後に30億円、、、といった事業拡大のイメージを持つことが重要ということです。例えば、コンビニ大手チェーンでは「ドミナント戦略」として1店舗ずつのオープンでなく、仕込期間を経て10店舗、大規模になると数十店舗といったスケールで新規出店してきました。新規事業ではまずどのくらいのスケールを目指すのか、そしてそのスケールに対して足し算的視点でなく掛け算的成長が見込めるかどうかが重要ということになります。

②安定ベースの着眼
売切り商品型、サービス型、サブスクリプションモデル...様々な「儲け方」がありますが、いかに顧客とのタッチポイントを増やせるかが事業アイデアの要となります。「最強のビジネスモデル」として名高いサブスクリプションモデルですが、単純にサブスクにしても儲からないモデルもあります。例えば、某国で映画見放題パスを事業展開した企業がコスト倒れで失敗に終わっています。どうやって「安定化」を図るかを事業アイデア段階でデザインすることが重要です。

③脱労働集約の着眼
採用難の時代にいかに仕組みそのもので儲けるか?にこだわるという点です。例えば不動産業A社は賃貸用自社物件に食堂を設置し、入居者であればわずかなコストで定食が食べられるサービスを展開しました。その後、同サービスそのものを基本スペックインした賃貸物件が好評となり、営業職が不足していても引き合いで安定業績を創ることに成功しました。今の時代だからこそ人に依存しない仕組みそのものを作れるかがポイントです。

④社会意義の着眼
ESG・SDGsに代表される通り、現在は経済的価値以上に重要視されるのが社会意義です。新規事業においても同様で、いかに儲けるかというよりもいかに社会課題貢献に資するかの議論のほうが重要視されます。現在、支援中のメーカーB社は新規事業開発に際して、高齢者雇用拡大と脱炭素の2大重点キーワードを前提とした展開をされていらっしゃいます。トレードオンなビジネスモデルがもはや必須の環境にあることを認識すべきです。

⑤脱自前主義の着眼
2022年日本におけるM&A件数が過去最多となっています。
※下記URL参照
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67281820S3A100C2TB0000/
この事実から読み取れるのは「自前主義の限界」です。M&Aは「連携」の1つの手段にすぎませんが、オープンイノベーションやアライアンスといったキーワードは上場企業のIR資料では多くうたわれています。資本提携・技術提携・人的交流などアライアンスの強弱はありますが、新規事業においてはアライアンスを前提に進めるケースが一般的となっています。

⑥LTV最大化の着眼
Life Time Value(顧客生涯価値)を最大限高める原則として、事業の入口・出口を強化することが挙げられます。
例えば、クラブツーリズムではアクティブシニアをメインターゲット・旅行体験をメイン商材としながらも、出口としての介護事業、入口としてのカフェ×ジム業態展開などで囲い込みを行っています。LTV最大化をより広義で説明するならば「ゆりかごから墓場まで」の視点ということです。既存事業の入口・出口強化で新規事業展開も前提として考えることが望ましいと言えます。
※クラブツーリズム https://www.club-t.com/

⑦成長市場の着眼
新規事業として絶対的に押さえたいのが、参入しようとする市場が高い成長性を有すかどうかです。Nikkei×astamuseが「136の有望成長領域」として今後成長が見込まれる業界・分野をまとめたレポートを出されています。アイデア出しの参考にしてみてください。
https://nvs.nikkei.co.jp/Nikkei-astamuse-report/

成功確率を高める事業アイデアスクリーニング10の項目

1000に3つ。新規事業アイデアが事業化し、安定収益を維持する可能性としてよく使われる言葉です。この確率を高めるために筆者が提唱しているのが10項目によるアイデアスクリーニング(フィジビリティスタディ=事業性評価)です。
図2のように外部環境5項目・内部環境5項目で事業アイデアを客観的に評価検証します。

新規事業の成功確率を高める7つの着眼

図2:タナベコンサルティング作成

外部環境では、シェア×グロースにこだわる

筆者が行うコンサルティング実務では外部環境5項目のうち、市場規模・市場成長性に特にこだわって評価・検証します。
先述の「①事業ロットの着眼」を踏まえて考えると、例えば事業ロット10億円、マーケットでの一定の認知(=クープマン市場存在シェア6.8%より下位の5%と仮定)とすれば必要市場規模は200億円以上なければなりません。検証の結果、市場規模が100億円であれば、当初想定した事業ロットもしくはマーケットシェアが獲得できる可能性は低くなってしまいます。また、グロースという視点では市場成長性を10年先の将来市場規模シミュレーションを実施し、新規事業が安定的に成長するかどうかの判断をすることが理想です。

内部環境では、収益性×投資回収にこだわる

内部環境5項目では特に収益性・投資回収の2つにこだわって評価・検証します。収益性では、先述の市場規模・市場成長性シミュレーションで試算した数値と新規事業の単月/単年販売計画をベースに将来予測収益シミュレーションを実施します。一つの大きな指標として営業利益率10%が挙げられます。業種業態によりますが、営業利益10%を獲得するために商品サービスへの投資が必要か、もしくはそれを展開する社内資源への投資が必要かなど将来シミュレーションを実施するからこそ見えてくる追加検討要素が出てきます。次に投資回収です。理想の投資回収年数を設定し、投資費用と収益シミュレーションで何年で回収できるのかを試算します。こちらも業種業態によりますが、大きな指標として弊社で提唱しているのは5年回収モデルです。

内部環境では、収益性×投資回収にこだわる

10の項目で事業アイデアをスコアリングする

外部・内部それぞれの項目に対して、情報を収集し、評価を行いますが、重要なのは評価基準・評価点・ウェイトの3つをどう設定するかです。

評価基準:各項目に対して、どのような基準を満たしたら良しとするか定性・定量的指標
評価点:各項目を何段階で評価するのか。基本は1~5の5段階評価
ウェイト:各評価項目に対して配分する重み。会社の考え方によって重みを項目ごとに変える。

例えば、図3は筆者ご支援先での事業性評価アウトプットの一部ですが、同事業は100点満点中60点と事業化推奨ボーダーを超えていたため、現在新規事業立ち上げに向け動いています。

新規事業の成功確率を高める7つの着眼

図3:事業性評価 総合得点イメージ:タナベコンサルティング作成

アイデアの良し悪し<アイデアの実現性

先述の通り、新規事業は1000に3つの世界です。アイデアがいくら良く、高収益だとしても実現・維持できなければ意味がありません。スモールスタートでもアイデアの実現性にこだわり、小さい成功体験を積み上げ事業を育てていくという視点も重要ではないでしょうか。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー

本間 貴大

不動産コンサルティング会社にて営業兼コンサルタントとして一線で活躍。 約1000社の小売・サービス・流通業へ不動産活用・コスト削減を提案。 当社へ入社後は、営業戦略・事業戦略に関するコンサルティングに従事。 マーケティング・新規事業開発を得意とし、事業性評価・ビジネスデューデリジェンスなどのプロジェクトも手掛ける。

本間 貴大

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

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