COLUMN

2023.07.11

中期経営計画の意義とは|数値設計のポイントや注意点を解説

中期経営計画作成の意義

中期ビジョン(10年先の目指すべき姿)を明確化した上で次に考えなければいけないことは、中期ビジョン達成に向けバックキャスティングの考え方で、中期経営計画(戦略そして数値目標への落とし込み)を策定することが求められます。
タナベコンサルティングが2022年10月に実施した長期ビジョン・中期経営計画に関するアンケート結果では、長期ビジョンを構築している企業は約3割に留まるものの、7割以上の企業が中期経営計画は策定しています。しかし重要なのは、長期ビジョン→中期経営計画の流れです。長期ビジョンの構築後に、ロードマップに準拠した中期経営計画を策定します。タナベコンサルティングでは、長期ビジョンは10年以上先の未来を指します。思い描いた未来を長期ビジョンとして構築・明文化し、3年の中期経営計画であれば3回転で、5年の中期経営計画であれば2回転で、そのビジョンのロードマップに準拠した計画を策定します。そうすることで、場当たり的な計画から脱却し、柔軟性をもった戦略の実行が可能となるのです。また、次世代経営メンバーを参画させる長期ビジョン・中期経営計画は、策定すること自体がゴールではなく、推進することが何よりも重要となります。だからこそ、これからの未来を担うメンバーに長期ビジョン・中期経営計画の策定へ参画してもらい、意志のこもった計画を作ることが一つの鍵となります。さらに、次世代メンバーの経営思考の醸成など、人づくりの観点においてもしっかりと向き合うことが大切です。

中期経営計画作成の意義

中期経営計画策定の流れ

中期経営計画策定にあたりまず現計画の総括を実施しましょう。目標達成度だけではなく、何が要因でそのような結果(良い・悪い)になったのかを分析することこそ、次の計画実現のヒントに繋がります。未達の反省はするものの、その要因までしっかり分析していない企業が多く、そのような企業はまた新たに計画を作ったとしても絵にかいた餅になるケースが多いです。その上で、事業戦略・収益構造・組織マネジメントの3つの視点で現状分析という次のステップに入っていきます。

事業戦略における現状分析の着眼は、業界・顧客・自社・ビジネスモデルの4つ。業界、顧客分析においては現在の動向、トレンドはもとより、将来の展望まで考えることが必要となります。自社分析は、複数事業を展開されているケースがあることより事業ポートフォリオの視点で戦略分析を実施します。さらにビジネスモデル分析で重要となるのが、異業種の成功しているビジネスモデルを分析することです。昨今GAFAの様にDXを活用して業界を越えて参入成功を果たしている事例が多くみられます。また、異業種のビジネスモデルや商品・サービスを分析すると、「今までの当たり前」が当たり前ではなくなり、新しい視点や気づきを得ることができます。
収益構造・財務構造分析における着眼は、拠点・事業というプロフィット部門別に分析することが重要となります。どの事業が稼ぎ頭となっているのか、どの事業の収益性がアップトレンド、ダウントレンドとなっているのかです。これは事業ポートフォリオに結び付きます。
また、ROA・ROE・ROICなどの指標比較も必要です。
組織・マネジメント分析における着眼は、戦略を推進する上での組織体制、つまり必要となる機能は強化されているのか、その中でも特に企画・人材・システム・ガバナンス等が重要となります。さらに人材に関しては採用・育成システム、エンゲージメント等の分析は深堀します。

戦略キャンプにて中期経営計画の基調とイノベーションテーマの検討

各事業部のプロジェクトで分析した結果を持ち寄り、戦略キャンプを実施します。戦略キャンプとは、各事業部のこれからの未来を担うメンバーが一堂に会し、現状分析の結果から中期経営計画のコンセプトそして、成長のためのイノベーションテーマを検討・決定する場と考えてください。タナベコンサルティングではクライアントと1泊2日膝をつき合わせ徹底的に議論するケースが多いです。戦略キャンプで決まった内容に基づき、分科会を立ち上げ中期経営計画の詳細設計へと入っていきます。

中期経営計画策定の流れ

数値設計のポイント

中期経営計画策定において当然PL・BS・CFを設計することは重要ですが、ビジネスの継続的な成長を実現するためには、適切な「KGI」「KPI」の設定を欠かすことはできません。KGIからKPIを逆算して正しく運用することで、施策の効率的な立案や優先度設定、効果測定ができるようになり、PDCAサイクルが回っていくからです。
KGIの代表的なものとして「売上高」「利益」「受注高」などが挙げられます。しかし、KGIばかりをマネジメントしていても、KGIを達成するためのプロセスをマネジメントしなければ目標は達成できません。そのプロセスとなる「企画提案件数」「成約率」「購入単価」などのKPIへの落とし込みが重要となります。下記の事例を参考にされてください。(図表1)

数値設計のポイント

出所:タナベコンサルティングにて作成

(1)企業価値向上に向けたKPIまとめ
企業価値の向上は、一夜にして実現し得ません。そのプロセスにおける新たなKPIを設定することが重要となります。財務的なKPI・マーケティング的なKPI、組織・人材におけるKPIを下記に記載します。(図表2)

数値設計のポイント

出所:タナベコンサルティングにて作成

(2)良いKPIのポイント
KPIは経営管理指標となるため、現場の管理指標と連動・一致することが求められます。そのためシンプルかつ重点を絞った指標とします。誰が見ても分かり判定しやすいものでなければなりません。ポイントを下記に示します。(図表3)

数値設計のポイント

出所:タナベコンサルティングにて作成

また中期経営計画策定する上で「収益モデル」を再設計しなければなりません。具体的には、下記に述べる10個の項目について検討しましょう。

(1)売上高は"顧客利益と顧客創造の最大化"
(2)粗利益は"ブランドロイヤルティー"
(3)人件費は"未来投資"
(4)労働分配率は"非凡化比率"
(5)営業利益は"事業構造の設計図"
(6)当期純利益は"会社存続のコスト"
(7)損益分岐点操業度とは"不況抵抗力"
(8)自己資本は"会社寿命"
(9)借入金比率は"生命依存率"
(10)総資産経常利益率(ROA:Return On Asset)は"会社の運用利回り"

著者

タナベコンサルティング
エグゼクティブパートナー
中部本部 副本部長

種戸 則文

建設業界で営業開発(既存深耕、新規開発)を経て、当社へ入社。事業戦略・マーケティング戦略構築を得意とし、ビジョン構築からマネジメントシステムづくりまで、幅広い分野でのコンサルティングを展開。現場第一主義での真摯かつ泥臭いコンサルティングで、数多くのクライアントから高い信頼を得ている。

種戸 則文

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タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
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コンサルティング実績

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