COLUMN

2026.08.06

製造業の営業戦略を強化する手法と成功事例

既存顧客への依存や価格競争の激化、人手不足の常態化により、
製造業の営業は従来のやり方だけでは成果を出しにくくなっています。

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既存顧客への依存や価格競争の激化、人手不足の常態化により、製造業の営業は従来のやり方だけでは成果を出しにくくなっています。本コラムでは、製造業における営業戦略の重要性を整理した上で、新規開拓の具体手法、DX・AIを活用した営業変革、成功事例を紹介します。

製造業の営業戦略を強化する手法と成功事例

製造業における営業戦略の重要性

既存顧客依存の限界

製造業では、長年の取引関係を基盤に事業を成長させてきた企業が少なくありません。しかし、今は既存顧客との取引だけで安定成長を続けることが難しい時代です。原材料費や物流費、人件費の上昇が進む一方で、価格転嫁が十分に進まないケースも多く、利益率が圧迫されやすくなっています。さらに、取引先の再編や担当者交代、調達方針の見直しなどにより、何もしなくても既存顧客が徐々に減っていく可能性があります。こうした環境下で重要なのは、営業を「受注活動」として捉えるのではなく、「顧客を創造する活動」として再設計することです。自社の強みを必要としてくれる新たな市場や顧客層を見つけ、価値を伝え、選ばれる状態をつくることが、これからの製造業には欠かせません。

価格競争から価値提案型へ

営業戦略を強化するうえで、もう一つ重要なのが「何を基準に選ばれるのか」を見直すことです。製造業の営業は、品質・納期・価格を中心に語られがちですが、それだけでは差別化が難しくなっています。だからこそ、自社の技術、対応力、提案力、アフターサポート、開発段階からの伴走力などを含めた総合的な価値を明確にする必要があります。特に、顧客が求めているのは製品そのものだけではなく、「歩留まり改善」「調達リスク低減」「開発期間短縮」「省人化」などの経営課題の解決です。営業戦略とは、単に売り込む方法を決めることではありません。自社がどの顧客に、どの価値を、どのようなストーリーで届けるのかを明確にすることです。この視点がある企業ほど、価格勝負に巻き込まれにくく、利益を確保しながら成長できます。

製造業における新規開拓手法

製造業における新規開拓手法

顧客創造の視点でターゲットを再定義する

新規開拓というと、営業担当者が新しい企業にアプローチする活動をイメージしがちです。しかし、成果が出る企業は、営業個人の頑張りだけに依存していません。まず経営側が、自社の強みが最も生きるターゲットを再定義しています。たとえば、「部品を売る会社」ではなく「設計段階から品質安定に貢献できる会社」と捉え直せば、営業先も購買部門だけでなく設計部門や開発部門へ広がります。ある製造業A社では、既存顧客の受注理由を分析した結果、価格ではなく「試作対応の速さ」と「技術者同席の提案」が評価されていることが分かりました。そこで、同じ課題を持つ業界へ営業対象を絞り込み、提案内容を標準化したことで、新規商談の質が向上しました。新規開拓の第一歩は、件数を増やすことではなく、勝てる市場を見極めることです。

営業プロセスの標準化と接点設計を行う

新規開拓を継続的な成果につなげるには、顧客接点を設計し、営業プロセスを標準化することが重要です。製造業では、展示会、紹介、既存顧客からの横展開に加え、Webサイト、技術資料、事例集、ウェビナー、メール配信など、複数の接点を組み合わせることが有効です。特に、今すぐ発注しない見込み客に対しても、継続的に有益な情報を届ける仕組みを持つことで、将来の案件化につながります。製造業B社では、営業担当者が個別に管理していた名刺情報や商談履歴を一元化し、資料ダウンロードや問い合わせ履歴と連動させました。その結果、確度の高い見込み客を見極めやすくなり、訪問の優先順位付けが可能になりました。営業生産性を上げる企業は、営業活動を属人化させず、「誰が担当しても一定の成果を出せる仕組み」をつくっています。

DX・AIがもたらす営業の変革

DX・AIがもたらす営業の変革

データ活用で営業生産性を高める

DXの本質は、単なる業務のデジタル化ではなく、ビジネスモデルや営業の在り方を変えることにあります。製造業の営業でも、見積作成の効率化や情報共有の迅速化だけで終わらせるのではなく、データを使って受注確率を高める仕組みへ進化させることが重要です。たとえば、顧客ごとの引き合い履歴、失注理由、案件化までの期間、製品別の利益率、問い合わせ経路などを一元管理できれば、どの市場に営業資源を重点配分すべきかが見えてきます。さらに、営業・マーケティング・製造・開発の情報が分断されたままでは、顧客理解は深まりません。部門横断でデータを共有し、全体最適で意思決定する体制を整えることで、営業は経験と勘だけに頼らない再現性の高い活動へ変わっていきます。

AIと人の協働で提案力を高める

AI活用も、製造業営業の変革を後押しします。ただし、AIは営業担当者の代替ではなく、提案力を高めるための支援役として活用すべきです。たとえば、AIにより顧客データの分析、提案書のたたき台作成、過去事例の検索、商談メモの要約、問い合わせ傾向の分析を行えば、営業担当者は顧客との対話や課題整理により多くの時間を使えます。重要なのは、人とAIの役割分担を明確にすることです。AIが得意なのは大量データの整理や仮説出しであり、顧客の本音を引き出し、現場の違和感を捉え、信頼関係を築くのは人の役割です。実際、営業成果を上げている企業ほど、AIを使って定型業務を減らし、人は高付加価値の提案活動に集中しています。製造業におけるAI活用の目的は、省力化だけではありません。顧客理解を深め、提案の質を高めることにあります。

まとめ

まとめ

製造業の営業戦略を強化するためには、既存顧客依存から脱却し、自社の強みが生きる市場を見極め、価値提案型の営業へ転換することが必要です。そのうえで、見込み客を育成する仕組み、営業プロセスの標準化、部門横断のデータ活用、AIとの協働を進めることで、営業生産性と提案力を同時に高められます。これからの製造業に求められるのは、営業を個人技にしないことです。経営戦略と連動した営業戦略を描き、顧客創造を仕組みとして実装できる企業こそが、変化の大きい市場環境でも選ばれ続けるでしょう。

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著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフコンサルタント

中澤 拓己

電機メーカーにて研究開発、その後、人材業界にて営業、マーケティング、人事など幅広い職種を経験し、当社へ入社。人事部長として年間1,000名規模を採用した経験を活かし、ビジョンや経営戦略と連動した組織開発、採用戦略、人材育成、定着支援に携わる。 クライアントサクセスを実現する本質的なコンサルティングを信条としている。

中澤 拓己

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