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営業成果が個人の力量に左右されやすい時代は、すでに終わりつつあります。市場環境の変化、顧客ニーズの多様化、競争の激化が進むなかで、再現性のある営業活動を実現するには「営業戦略」を明確に設計することが欠かせません。その際に有効なのが、思考を整理し、打ち手の精度を高める営業戦略フレームワークです。今回は営業戦略フレームワークの重要性、営業戦略と営業戦術の違い、営業戦略立案のステップ、そして実務で役立つ代表的なフレームワークの使い方を整理します。

営業戦略のフレームワークの重要性
営業現場では、「とにかく訪問件数を増やす」「提案回数を増やす」といった量的な活動が重視されがちです。しかし、こうした施策は戦略が不明確なままでは、単なる場当たり的な努力に終わる可能性があります。営業戦略フレームワークの意義は、限られた経営資源をどの市場に、どの顧客に、どの価値提案で投下すべきかを構造的に見極められる点にあります。
たとえば、自社が属する業界の収益構造や競争圧力を把握せずに営業施策を打っても、価格競争に巻き込まれたり、差別化できない提案に終始したりするおそれがあります。そこで有効なのが、競争要因を分析するフレームワークです。フレームワークを用いることで、属人的な勘や経験だけに頼らず、体系的に営業戦略を組み立てることが可能となり、ターゲット選定、提案設計、商談優先順位、チャネル戦略など複数の要素が絡み合うため、論点を整理する枠組みの存在が成果につながります。



営業戦略に役立つフレームワーク
営業戦略を構築する際は、個別施策から発想するのではなく、SWOT分析、STP分析、4Pの順に用いて、戦略を段階的に整理していくことが重要です。
この流れで進めることで、自社の現状把握から、狙う市場の設定、さらに具体的な打ち手の設計までを、一貫性を持って整理できます。
まず行うのがSWOT分析です。
SWOT分析とは、自社の強み・弱みと、外部環境における機会・脅威を整理する手法であり、Strength、Weakness、Opportunity、Threatの頭文字を取って名付けられています。SWOT分析を行うことで、現状を客観的に把握でき、課題発見や改善の方向性、優先順位を明確にする効果が見込めます。
SWOT分析では、自社の内部環境と外部環境を切り分けて整理します。内部環境では、営業活動や提供価値の源泉となる強みと、成果をつくるための制約となる弱みを明らかにします。外部環境では、市場や顧客の変化の中にある機会と、競争や環境変化による脅威を把握します。ここでは、自社がどのような条件・環境下で戦っているのかを構造的に整理します。
次に用いるのがSTP分析です。
STP分析とは、SWOT分析で整理した自社の現状と市場環境を踏まえ、狙いを決めた市場に対するニーズの種類(値段・立地・サービス等)を明らかにし、当社としてどのニーズにこたえていくのかを検討するフレームワークです。STP分析の名称の由来はSegmentation、Targeting、Positioningの頭文字を取って名付けられています。
それではS→T→Pの順にポイントを整理します。
まず"S"Segmentationでは、市場をいくつかの切り口で分類します。分類の観点としては、たとえば業種や企業規模といった属性的な観点、地域や商圏といった地理的な観点、企業の成長段階や組織体制といった経営状態の観点などが挙げられます。市場全体を一括りに見るのではなく、どのような違いで市場を分けて捉えるべきかを整理します。
次に"T"Targetingでは、セグメンテーションによって分類した市場の中から、自社が優先的に狙うべき市場や顧客層を選定します。セグメンテーションで分けた市場の中から、自社が注力すべき相手を具体的に絞り込んでいきます。
さらに"P"Positioningでは、ターゲットとして選定した相手に対して、自社をどのような存在として認識してもらうのかを明確にします。
ここで重要なのは、ポジショニングはターゲティングと切り離して考えるものではなく、選んだターゲットにとって価値のある違いを定めることだという点です。ターゲットが変われば、重視する価値や比較対象となる競合も変わるため、選んだターゲットに対して、自社がどのような価値を持ち、競合とどう違うのかを明確にすることです。
このようにSTP分析で行うのは、市場全体を相手にするのではなく、市場を分類し、その中から狙う相手を選び、その相手にとって意味のある違いを定めることです。
最後に、定めた方向性を実行内容へ落とし込むのが4Pです。
4Pとは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の頭文字を取って名付けられており、SWOT分析で整理した現状認識と、STP分析で定めた市場のニーズに対する会社のサービスを、マーケティングの観点で具体的な打ち手を検討するための手法です。STP分析で「誰に、どのような価値を提供するか」を定めたうえで、4Pではその価値を実際にどのように届けるかを設計します。
Productでは、物やサービスを何にするのかを整理します。
Priceでは、その価値をどのような価格体系で提示するのかを定めます。
Placeでは、どの販売経路や接点を通じて届けるのかを設計します。
Promotionでは、どのような訴求内容や伝達方法で顧客に伝えるのかを整理します。
つまり4Pで行うのは、定めたターゲットと立ち位置を、実際の営業活動に落とし込むことです。なお、差別化を図るうえでは、4Pのすべてを変える必要はなく、Product・Price・Place・Promotionのうち、どの要素で差別化を図るのかを決めることが重要です。場合によっては、一つの要素に絞って差別化することも有効です。例えば消費者がよく利用するコンビニエンスストアは4Pの中でもPlaceで差別化を図っています。立地の優位性を生かしてどこにでもある、困ったらすぐ手に入るといった近場で便利な状況を作ることで勝ち筋を見出しています。
このように、SWOTで自社現状と市場環境を整理し、STPで狙う市場・顧客と自社の立ち位置を定め、4Pで差別化の具体策に落とし込むという流れで進めることで、営業戦略を一貫性のある形で設計できます。

営業戦略立案の実例
ここからはある企業の営業戦略の実例について紹介いたします。地方の中小企業の食品機械製造メーカーでは営業戦略においてSWOT分析、STP分析、4Pの視点で営業戦略を立案しています。
この企業は、顧客ごとの要望に応じて製品を柔軟に設計できる一方、営業活動は紹介や既存取引に依存しやすく、新規開拓の型が十分に整っていないという課題を抱えていました。まずSWOT分析で整理すると、強みは、長年の実績に裏付けられた対応力、個別要望への柔軟性、導入前後を通じて伴走できる支援体制です。弱みは、案件ごとの工数負担が大きいこと、提案内容が属人的になりやすいこと、対外的な認知が限定的であることです。一方、外部環境には、顧客側で効率化や安定運用への関心が高まっているという機会がありますが、比較検討の長期化や価格競争の強まり、既存取引先が固定化されやすいという脅威もあります。
この整理を踏まえてSTP分析を行うと、注目すべきなのは業界ではなく、顧客が抱える課題の性質です。市場を「標準化された提案を求める層」「個別最適を重視する層」「導入後の安心感を重視する層」などに分けると、この企業が狙うべきは、単純な価格比較ではなく、自社の運用実態に合った提案や継続支援を求める顧客層だと分かります。そのうえでのポジショニングは、「単に商品やサービスを提供する会社」ではなく、「現場に合わせて最適化し、導入後まで支えるパートナー」という風に整理しました。
最後に4Pへ落とし込むと、Productでは提供物そのものだけでなく、提案力、調整力、導入後フォローまで含めて価値として設計。Priceでは手戻り防止や運用負荷の低減を含めた総合的な価値で示し、Placeでは既存紹介に頼るだけでなく、Webや事例発信を通じて検討初期から接点を持てるようにしました。Promotionでは、「個別事情に応じて最適化できること」と「導入後も安心して任せられること」を、一貫したメッセージとして伝えることにした結果、より自社の狙うべき顧客・訴求したいポイント・サービスの特徴を整理した営業戦略を立案しました。



まとめ
営業戦略で成果を上げる企業は、単に営業活動量が多いのではなく、「どこで勝つか」「誰に売るか」「何を価値として届けるか」を明確にしています。その判断を支えるのが営業戦略フレームワークです。SWOT分析で自社と市場の状況を整理し、STP分析で狙う顧客を定め、4Pで差別化を図る。こうした枠組みを使うことで、営業戦略は属人的な経験則から、再現性ある経営判断へと進化します。
重要なのは、フレームワークを使うこと自体ではなく、それを通じて自社に合った勝ち筋を見つけ、営業戦術へ落とし込むことです。成功する営業戦略とは、理論と現場実行がつながったときに初めて機能します。
ぜひ今回紹介したフレームワークを自社ならではの営業戦略の立案に活用してください。
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