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2026.07.30

【2026年】注目したい戦略トレンドとは

複数の課題に並行して手を打てる企業が、次の成長機会をつかむ局面に入っていると言えます。

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【2026年】注目したい戦略トレンドとは

2026年に企業が見ておきたい戦略トレンド

2026年の経営環境をひと言で表すとしたら、「変化が速い」という表現だけでは足りません。変化の幅も大きく、しかも同時多発的に起きていることが、現在の経営環境の難しさを物語っています。AI、地政学リスク、環境対応、人材不足、デジタル化。どれか一つに真摯に向き合えば済む問題ではなく、複数の課題に並行して手を打てる企業が、次の成長機会をつかむ局面に入っていると言えます。

(1)生成AIの「実証」から「本格実装・価値創造」フェーズへの移行

2024年以降、多くの企業が生成AIを議事録作成や文章要約、お問合せ対応などで試してきました。2026年は、その段階を一歩越えて、AIを業務や事業の中にどう組み込むかが問われる年だと言えます。
先進企業では、すでにAIは単なる効率化ツールではありません。たとえばドイツの自動車メーカーは、工場計画にデジタルツインを本格活用し、仮想空間上で設備配置や生産動線を検証しています。報道によれば、こうした取り組みによって工場計画コストの削減や、検証期間の大幅短縮を見込んでいます。つまりAIやシミュレーション技術は、現場の一部作業を楽にする道具ではなく、意思決定のスピードと精度そのものを変える基盤になり始めているのです。
消費財の分野でも同様です。ユニリーバはAIを活用して、店頭の売場状況の把握、販促の優先順位付け、商品開発、工場の予知保全までをつなげています。ブラジルでは数千人規模のマーチャンダイザーがAIの示す優先アクションをもとに店舗対応を行い、中国の工場ではOEE向上やバッチ時間短縮、廃棄削減といった成果も出ています。こうした事例を見ると、2026年の論点は「AIを導入するかどうか」ではなく、AIを使ってどの業務を、どれだけ速く、どこまで成果に結びつけるかに移ったと言えるでしょう。

(2)地政学リスクの常態化とサプライチェーンの再構築

もう一つ見逃せないテーマが、地政学リスクの常態化です。米中諸国間の対立、各国の産業政策、物流の分断、資源価格の変動など、企業経営に影響する外部要因は増える一方です。これまでのように「最も安く、最も効率よく調達する」だけでは、サプライチェーンは維持できなくなりました。
象徴的なのが半導体です。TSMCの熊本工場は、日本の自動車・産業機器・電子機器向けの半導体供給網を強化する取り組みとして注目されています。政府支援に加え、ソニーやデンソーも関与し、日本国内の材料・装置・製造基盤との結びつきを強める動きが進んでいます。これは単なる工場誘致の話ではなく、経済安全保障と供給網レジリエンスを経営戦略に組み込む流れの一例です。
今後は、調達先の分散、重要部材の国内回帰、同盟国との連携強化などを通じて、「止まらない事業」をどう設計するかが重要になります。調達部門だけの課題としてではなく、経営課題として扱っていく必要があります。

(3)GX(グリーントランスフォーメーション)の収益化

環境対応も、もはや「やらされ仕事」ではありません。むしろ、GXを収益機会に変えられるかどうかで、企業の成長余地は大きく変わります。
代表例として挙げられる事例が、デンマークのØrstedです。同社はかつて化石燃料依存の事業構造を持っていましたが、再生可能エネルギー、とりわけ洋上風力へ大胆に軸足を移し、ビジネスモデル自体を大きく転換しました。環境対応を"守り"ではなく成長戦略としての"攻め"と位置付けたことで、世界有数の再エネ企業へと変貌しています。
また、Schneider Electricはサステナビリティを経営戦略の中心に据え、自社の環境目標だけでなく、顧客企業が同社のソリューションを使うことでどれだけCO2を削減・回避できたかまでを価値として示しています。つまりGXとは、自社の排出量を減らす話にとどまらず、顧客の経営課題を解く商品・サービスに昇華できるかが勝負であると考えられます。

企業が直面している現在の課題

企業が直面している現在の課題

(1)深刻化する労働力不足と「人的資本経営」の真価

少子高齢化の進行により、人手不足は一部業界だけの問題ではなくなりつつあります。採用強化だけで必要人員を確保するのが難しい以上、今後は「人数を増やす」発想よりも、今いる人数でどう成果を最大化するかに視点を移す必要があります。
その意味で重要になるのが、人的資本経営です。ただし、制度を整えるだけでは不十分です。多様な働き方を認めること、現場が安心して意見を言えること、ベテランの暗黙知を形式知化すること、管理職が仕事の任せ方を変えること。こうした地道な組織運営の質の変革が問われます。
AIやデジタル活用が進むほど、人に求められる役割も変わります。定型業務を抱え込むのではなく、判断、調整、提案、顧客との関係構築など、人にしか出せない価値へシフトしていけるかが重要となります。

(2)「2025年の崖」を超えた先のシステム負債(デジタル負債)

経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」が話題になって以降、多くの企業がクラウド移行やSaaS導入を進めてきました。ただ、現場を見ていると、必ずしも経営の意思決定が速くなったとは言い切れません。部門ごとにツールが増え、データが分散し、結果としてExcelで数字を寄せ集める作業が残っている会社は少なくありません。
これは典型的な"デジタル負債"です。システムがあるのに情報がつながらず、変化に機敏に対応できない。こうなると、IT投資が成長投資ではなく維持費になってしまいます。
今必要なことは、システムの数を増やすことではなく、データが自然につながり、現場と経営が同じ数字を見られる状態をつくり、判断を迅速に共有することです。

(3)高度化するサイバーセキュリティ(セキュリティ軸でのサプライチェーン)

セキュリティも、IT部門だけのテーマではなくなりました。クラウド、モバイル、外部委託、サプライヤー連携が当たり前になった現在では、「社内は安全、外部は危険」という考え方は通用しません。
Microsoftはこの前提のもと、ゼロトラストの考え方を長年かけて実装してきました。MFAやパスキーによる認証強化、端末の健全性確認、条件付きアクセス、最小権限の徹底などを進め、「まず信頼する」のではなく「毎回検証する」設計へ移行しています。これは大企業だけの話ではなく、中堅・中小企業でも参考になる考え方です。特に最近は、直接狙われる先が大企業よりも、取引先経由で侵入されるケースが増えています。自社を守ることが、取引先から信頼される条件になりつつあります。
セキュリティインシデントは、一企業のシステム停止にとどまらず、サプライチェーン全体に甚大な損害と信用の失墜をもたらす経営リスクそのものです。常に脅威が存在することを前提とした「ゼロトラストアーキテクチャ」の導入など、全社レベルでのサイバーレジリエンスの強化が急務となっています。

持続的成長に向けて、企業は何から着手すべきか

持続的成長に向けて、企業は何から着手すべきか

外部環境の激変と深刻な内部課題を乗り越え、持続的な成長モデルを実現するためには、局所的な対症療法ではなく、全社的な視点での戦略アクションが必要です。ここでは、組織変革とデジタル技術を両輪で回すための3つのステップを提示します。

(1)ステップ1:業務改革(BPR)と「アンラーニング」による土台構築

DXがうまくいかない企業に共通するのは、「いまの仕事のやり方」を前提にツールを当てはめようとすることです。しかし、非効率な業務をそのままデジタル化しても、非効率な状態から少し速くなるに過ぎません。最初にやるべきは、業務の棚卸しとBPRです。
不要な承認、重複入力、属人的な判断、紙やメールを前提にした運用、こうしたものを一度ゼロベースで見直す必要があります。
その際に重要なことが、過去の成功体験を手放す「アンラーニング」です。「うちは昔からこのやり方だから」と言い始めると、変革は止まります。制度やシステムより先に、経営層と管理職の意識転換が必要です。

(2)ステップ2:コンポーザブルなシステム基盤の構築とAIの統合

次に必要なのは、変化に強いシステム基盤です。すべてを一つの巨大システムで抱え込むのではなく、必要な機能を柔軟に組み合わせられる構成にしておくことが重要です。
ここで参考になるのが、UPSの配送最適化システム「ORION」です。UPSは日々の配送データや集荷時間、過去実績をもとに配送ルートを最適化し、走行距離や燃料消費を削減してきました。報告では、1ルートあたりの走行距離削減に加え、年間で大きなコスト削減効果を見込んでいます。重要なのは、単にアルゴリズムが優れていたことではありません。現場運用に根づかせるまでやり切ったことです。AIや分析基盤は、導入しただけでは成果になりません。現場の行動が変わって初めて数字になります。

また、顧客接点でもAIの組み込みは進んでいます。Amazonの「Rufus」は、商品検索や比較、再注文、価格通知などを会話型で支援し、購買行動をより自然に後押ししています。こうした流れはBtoCだけでなく、BtoB営業やお問合せ対応でも広がるでしょう。今後は、AIを社内効率化だけに使うのではなく、売上に近いフロント領域まで広げられるかが差別化ポイントになります。

(3)ステップ3:データ・ドリブンによる「リアルタイム・スピード経営」の体現

最終的に企業が目指すべきなのは、「数字が見える会社」ではなく、数字を見てすぐ動ける会社です。売上や利益の着地を翌月中旬になって把握するようでは、変化の激しい市場では遅すぎます。
理想は、経営トップ、部門責任者、現場リーダーが、それぞれ必要なKPIをリアルタイムに確認できる状態です。異常値が出ればすぐ気づき、必要ならAIで原因仮説や将来予測を補いながら、すぐに手を打てること。重要なのは、ダッシュボードをつくること自体ではなく、見えた数字に対して素早く意思決定し、現場が即応できる運営体制を持つことです。

2026年以降の競争優位性は、壮大な戦略資料では決まりません。変化を早く察知し、その打ち手が現場を回り、数字に表れるまでの実行サイクルをいかに高速化できるかで決まります。
いま経営に求められているのは、将来像を語ること以上に、正確な"いまの変化"を把握し、最初の一歩を具体的に決めることと言えます。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

藤巻 桂太

大手ハウスメーカーと建築資材メーカーにて営業を経験後、当社へ入社。誠実・真摯であることをコンサルティング信条とし、中長期ビジョン構築支援コンサルティングをはじめ、営業会議の推進・技術伝承の実行推進支援など、幅広いコンサルティングに携わる。また、建築業界の経験を活かし、住まいと暮らし・ライフスタイルの優良企業のビジネスモデルに精通している。

藤巻 桂太

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