COLUMN

2023.03.14

製造フォーラム
DX・SDGs・M&Aが製造業の未来を変える
~DX編~

本コラムはタナベコンサルティングのTCG REVIEWにて掲載している記事を転載したものです。

米国やEUと比べて営業利益率が低く、国際競争力に乏しい日本の製造業。持続的成長のためには、「本業で稼ぐ力」を高める必要があります。そのような中、タナベコンサルティングは2023年1月27日、「製造フォーラム」を開催。特別ゲスト2名による、環境に適応し、常に変化し続けるための取り組みと、タナベコンサルティングのコンサルタント3名による講演をリアルタイムで配信しました。
※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

"人"が主役のValue Innovation Factory
-DX技術を「触媒」に現場の「閃き」を新価値へ繋げる-

ヤマハ発動機は、二輪車の開発を起点とするパワートレイン技術、走行・航走を支える車体・艇体技術、電子制御技術、生産技術の4つをコア・テクノロジーとし、20カ国37の拠点を持っています。

同社は、海外調達部品の増加や、部品製造難易度の高度化(大型・薄肉化、高機能化など)、正社員比率の低下を背景に、従来の現場暗黙知に頼った管理手法を脱却し、現場主体のデータドリブン型管理への変革を「理論値生産活動」というプロセスを通じて進めてきました。実現手段として、①廉価・汎用・教育をコンセプトにDX技術を内製・手の内化、②現場人財のDX教育、この2つを行っています。

①廉価・汎用・教育をコンセプトにDX技術を内製・手の内化
高い目標、目指す姿を明確に描き、現実とのギャップを課題と定義、その解消に向けて次の3つステップを進めています。

1.目指すゴールと現実とのギャップ課題の明確化
2.現場の立場でテーマ設定と解決策を考える
3.パッケージソリューションの内製開発力の強化

現場のひらめきを定量化、検証する時、DX技術を手の内化することでその検証サイクルを短くすることができます。成果として、(1)現場の効果実感、(2)維持管理工数の低減、などにつながっています。

同社は、DX技術と現場力による価値創造で生み出した"余力"を自己成長につなげる"人"が主役の工場を、「Value Innovation Factory」(VIF)と定義しました。VIFでは、良品条件をリアルタイムに見える化することで品質確保に対する初動を促す「イーグルアイ活動」など、現場"発"の活動が生まれています。イーグルアイ活動では、半年間で内部欠陥不良率が10分の1になり、在庫数減少や設備の操業時間短縮にもつながっています。

出所:茨木氏講演資料

出所:茨木氏講演資料

②現場人財のDX教育
現場経験を糧にデータから因果仮説を立てて検証できる人財を目指して、社内留学制度を発足。「一般座学講習会」「『実践展開スキル』取得のためのインターンシップ」を提供しています。成果として、これまでエンジンの組み立てしか行っていなかった社員が、3DCADとシミュレーション技術を勉強し、理論的かつ実践的な加工パスデータを作成するなどの成果も生まれています。

製造業の現場は、「未覚醒人財」の宝庫です。デジタル手法は「未覚醒人財を覚醒させる"触媒"」であり、現場経験とデータからひらめく仮説をデータを基に検証することで、現場マネジメントは飛躍的に改善します。

著者

ヤマハ発動機株式会社
生産技術本部 設備技術部 部長

茨木 康充 氏

1999年ヤマハ発動機入社。製造技術、海外生産企画、MBA留学を経て2007年よりインド現地法人にて事業企画に従事。2013年日本帰任後、生産課長、SCM管理グループリーダーを経て2018年に製造DXに着手。2019年より製造DXにおける戦略立案、技術開発、現場実装を進めている。

茨木 康充 氏

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