COLUMN

2024.10.30

経営戦略の基本と取り入れるべき3つの重要視点

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経営戦略の基本と取り入れるべき3つの重要視点

「経営戦略」・「事業戦略」など皆さんが一度は聞いたことがあり、口にしたこともある言葉かと思いますが、間違った認識で各戦略を捉えているケースも多々見られます。今回は"経営戦略"に焦点をあてて、経営戦略構築のポイントについて説明をしていきます。

経営戦略とは何か

(1)各種戦略の体系的理解

まず初めに、経営戦略・事業戦略について体系的に説明をしていきます。
タナベコンサルティングでは基本的な考え方として「1T4M」という考え方があります。自社の「T(テクノロジー)=固有技術・ノウハウ・強み」を「M (マーケット)市場・顧客・業界」にぶつけていくこと・サービス提供をしていくことを「事業」と定義しています。
経営とは3Mであり、事業を強く推進していくための「マネー(投資計画)・マン(人材育成・人事制度・組織戦略)・マネジメント(経営システム)」を指しています。
戦略とは「資源の再配分」であり、重点となり得る事業や経営の3Mに対する選択と集中を指している言葉です。
事業と経営、それぞれの考え方を理解したうえで、今回は経営戦略について話を進めていきます。

企業経営のフレームワーク「1T4M」

(2)経営戦略を構築する上で重要な3つの視点~組織戦略・人事/人材戦略~

まず初めに経営戦略を推進する上での1つ目の重要ポイントとして「組織戦略・人事/人材戦略」が挙げられます。 事業戦略を構築した際に事業推進に必要な組織の形について議論する必要があります。ここでは組織の形を変えることを「組織デザイン」と呼ぶことにします。組織デザインを行う際は5つの原則・5つの戦略的着眼が必要となります。それぞれは以下の通りです。

組織基本の5原則
①分業化・専門化の原則・・・分業することによって仕事を単純化し、同時に専門性を深めていく組織構造を取ること

②統制範囲の原則・・・1人の管理職が管理できる人数(スパンオブコントロール)を意識すること

③責任・権限の一致の原則・・・職務を遂行する際、権限に見合う責任を明確にし、一致させること

④命令統一性の原則・・・指揮命令系統が統一すること

⑤階層短縮化の原則・・・組織階層が重なると情報伝達が不確実になるため、可能な限り階層を少なく設計すること

戦略推進を進めていく上での5つの着眼
①経営企画機能の強化・・・事業ブランディング・M&Aなどの戦略的企画機能を強化する

②DXの戦略的活用・・・従来の基幹系システムの管理業務だけではなく、情報系システムを活用した戦略的機能を発揮する

③事業開発専門部署の設置・・・新たなサービス・事業の種を企画し、育て上げ、新たな事業部門として独立させる役割を担う

④人事専門部門の設置・・・総務部や管理部部門との兼務ではなく専任部隊として、事業戦略推進に必要な専門人材の採用と育成機能として価値発揮する

⑤マーケティング機能の独立・・・営業部とは独立した機能として情報収集・市場分析・マーケティング戦略を立案する機能を発揮する

また筆者は「組織のレベルと事業のレベルは比例する」と考えており、組織力の強化、すなわち人材レベルの底上げが必要と理解しています。策定した事業戦略に対して必要な人材を「人材ポートフォリオ」で整理をし、未来に対する人材・スキル不足を明確にすることが重要です。人材ポートフォリオを描けてこそ、初めて要員計画・採用戦略・教育計画を構築することができます。
まずは以下カテゴリーごとに現在の人材のカテゴリー別の人員数と未来に向けたカテゴリー別人員数を整理することをお勧めします。

人材ポートフォリオ
①オペレーション人材・・・日々の定型・非定型業務を現場社員と共に協力し、成果を生み出すことができる人材

②現業におけるスペシャリスト人材・・・業界・ソリューションにおける専門的な知見を有する人材

③本社機能におけるスペシャリスト人材・・・M&AやDX・人事や財務等の今後の経営戦略において重要な役割、またはスキルを保有する人材

④マネジメント人材・・・管理職として、資源や資産を活用して部門経営の最大化を図ることができる人材

⑤事業企画・開発系人材・・・新たなサービス・事業を開発することができる、または意欲的に挑戦できる人材

⑥次世代幹部人材・・・経営を推進するにあたり、経営者をサポートし、経営ミッションをクリアすることができる人材

(3)経営戦略を構築する上で重要な3つの視点~経営システム編~

次に2つ目の重要ポイントとして「経営システム」の再構築です。
経営システムとは事業戦略の推進を加速するため、また持続的成長に向けて戦略を実行徹底するための仕組みを指す言葉です。経営システムに関しても大きく5つのポイントがあります。

意思決定システム
経営上のあらゆる意思決定・情報を共有するコミュニケーションパイプ(会議体)のあり方を再設計する。

①情報の流れは垂直方向、水平方向の両面を備えているか
②情報のパイプに詰まりはないか
③会議のスピードとタイミングは適切か
④会議の運営ルールは型決めされているか
などの視点でコミュニケーションパイプの見直しを図ることが重要です。

権限移譲システム
企業規模の拡大に伴い、組織における分業化・専門化が進むなかで、業務遂行上の必要な権限が部門に適切に委譲されているか否かを再設計する。

①業務分掌:各部門の業務内容・範囲を規定する
②職務分掌:職位別に「業務内容」「権限」「責任」の範囲を規定する
③権限規定:職務における決裁権限のルール・流れと内容を規定をする

内部統制システム
法令や社会的なルールを遵守することを目的としたコンプライアンスや会計や組織上のルールが正しく運用されているかを監査する監査けん制システム、年度方針や部門方針を計画通りに遂行・管理をしていくための計画統制システムの設計が必要です。

人事システム
戦略が理念に従い、組織が戦略に従うのと同様に、あるべき人材像も理念やビジョンと直結したものを明文化する必要があります。また、あるべき人材像から現状の保有能力を減じたモノが教育テーマとなります。評価・賃金・教育制度をリンクさせるためにも、「今後どんな人材が必要なのか」をしっかりと計画することが重要です。

管理システム
ダイバーシティ&インクルージョンを軸とした労働環境の整備や安定業績を実現するための先行業績管理システム、守りのデジタルだけではなく、攻めのデジタルにも展開する情報管理システムを設計することが重要です。

上記5つの視点は持続可能な成長に寄与する経営システムになるため、中期経営計画の見直しに合わせて再設計することをおすすめします。

(4)経営戦略を構築する上で重要な3つの視点~成長投資編~

事業推進において欠かせない考え方として"グロースインベストメント"=成長投資があります。
人的資本経営にも事業価値を最大化するためのM&A戦略にも、攻めと守りの両輪で取り組むDX戦略にも全て"投資"が関わってきます。上記をコストではなく"成長投資"と捉えて中長期戦略を描くことが何よりも重要です。デフレ経済からインフレ経済に転換が行われつつある今、戦略的に投資を行っていくこともぜひ経営戦略の一つとして捉え直すことをおすすめします。

最後に

今回は事業戦略・経営戦略を体系的に説明をさせていただき、経営戦略で取り入れるべき3つの視点である「組織戦略・人事/人材戦略」・「経営システムの見直し」・「成長投資(グロースインベストメント)」について紹介をさせていただきました。長期ビジョンの構築や中期経営計画策定を控えている企業に関しては、一度経営戦略の視点も検討いただき、参考にしていただけると嬉しいです。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

中野 翔太

SDGs を軸とした戦略構築から実装のための教育を得意とする。「ステークホルダーがワクワクしない SDGs は展開しない」を信条に、企業価値向上に数多く貢献している。また、建設業・製造業を中心とした人材育成体系の構築や人事制度アドバイザリーなどHR分野のコンサルティングにも定評があり、幅広く活躍している。

中野 翔太

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