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ビジョンドリブンとは、企業のビジョンを最優先にして意思決定を行う概念です。
変化が早く将来予測が難しい現代は、市場ニーズが追いにくくなっています。企業の安定的な成長のためには、ビジョンを起点とした行動指針を立てることが重要です。
この記事では、ビジョンドリブンに基づく組織活性化のポイントについて、事例を交えて解説します。
ビジョンドリブンとはビジョンを最優先する方針
ビジョンドリブンとは、企業のビジョンを最優先にして経営方針や従業員の行動指針を定めて意思決定を行う概念です。
変化が早く将来予測が難しい市場にあって、ニーズを追うのではなく、ビジョンに基づいて市場をリードする考え方であるといえるでしょう。
経営理念を落とし込んだMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)にしたがって行動すると、外部環境に左右されにくい事業運営が可能です。
ビジョンドリブンが注目される背景
ビジョンドリブンが注目される背景には、市場や社会情勢の変化に加え、「将来の予測が難しい」という不確実性があります。
市場ニーズを追う戦略では計画の変更が生じたり、無駄になったりする可能性が高いといえます。
不確実なトレンドを追うよりも自社のビジョンや価値を軸とした戦略を立てる方が、企業は安定して発展するでしょう。最近は、人材が流動的かつリモートワークによって求心力が下がる傾向もあり、ビジョンや理念の下に組織の結束力を高めたいという経営者の狙いもあります。
ビジョンドリブンが組織にもたらすメリット
ビジョンドリブンを活用すれば、社内にビジョンが浸透します。その結果、従業員の行動につながるでしょう。
また、ビジョンドリブンにはインナーブランディングの考え方が必要です。組織にもたらすメリットは、インナーブランディングの成果だと考えてよいでしょう。
メリット①従業員の自主性・主体性が高まる
ビジョンが浸透すると、従業員が個々の業務においてビジョンに照らし合わせて判断できるようになります。
個人的な判断基準で行動した場合、組織の方向性にそぐわない状況になるかもしれません。しかし、ビジョンに則れば組織にとって有意義な行動となります。
行動指針が明確であり、従業員がビジョンを自分ごとにすると、自主的な行動が可能となり主体性が高まるでしょう。
メリット②意思決定が迅速化する
従業員の主体性が高まると、上司や経営層、あるいは他部門に都度、判断・照会をすることなく業務が遂行できます。これによって迅速な意思決定が可能になります。
上からの指示で行動していると、従業員自らが意思決定を行う機会がありません。自主的な行動が許されれば、自身で責任を持って課題に臨め、アイデアやモチベーションを周囲に与えられるでしょう。ボトムアップの気風が生まれると、経営者にとっても気づきのある経営が行えます。
メリット③従業員エンゲージメントが向上する
企業の存在意義や事業の目的を従業員が正しく理解すると、社内における自身の役割・ビジョンを明確にできます。
企業のビジョンをもとに自身が掲げたビジョンに向かって進めば、「企業の発展に貢献できている」という確証が得られるでしょう。意義のある働き方は働きがいにつながり、企業への帰属意識が高まります。
ビジョンを組織に浸透させる手段
ビジョンドリブンはビジョンを組織に浸透させると成果が得られます。具体的にビジョンを組織に浸透させる手段としてどのようなものがあるでしょうか。ここからは代表的な手段を紹介します。
①社内報や社内SNSを活用する
社内報には全社的に参照されるフォーマルな情報が掲載されています。社内報で経営層の意向をメッセージとして発信する方法は、ビジョンドリブンの浸透に有効です。そのほか、社内向けサイトや社内SNS上での動画メッセージ配信も効果的です。
社内SNSは、従業員が誰でも参加でき、従業員同士で情報交換ができる状態が望ましいでしょう。お互いに啓発・指摘し合って業務を遂行すると、上下関係だけでなく横のつながりも活性化します。
ビジョンが浸透するためにも、さまざまな方向のコミュニケーションを促しましょう。
②1on1ミーティングを実施する
1on1ミーティングは上司と部下の1対1の個人面談です。
個々の従業員に対して直接、理念・行動指針・価値観の共有を行い、従業員のモチベーションを確認する場として、1on1ミーティングが必要です。
部下は個人のビジョンの相談相手として上司を利用して、正確なビジョンの確立を目指します。
③表彰制度を設ける
従業員のモチベーションアップのために、定期的なイベントも効果的です。
表彰制度を設けビジョンに沿った手本となる活動を表彰すれば、ロールモデルを社内に示せます。具体例があると参考にしやすく、ビジョンを体感的に理解できるでしょう。
また従業員自身、表彰されるとより一層業務に励むようになります。向上心のある他の従業員にとっても、表彰が一つの目標になるでしょう。
④研修を実施する
新入社員は既存の企業文化に染まっておらず、ビジョンを素直に受け止められる柔軟性を持ちます。早い段階から自主的・主体的な行動をすると、成功体験を得て自信にもつながるでしょう。
新入社員への研修でビジョンの浸透を図ることは、企業の将来にとって有意義です。中堅社員や管理者に対する研修も行い、企業全体にビジョンを浸透させましょう。
組織を活性化させるポイント
ビジョンドリブンによって組織を内面から活性化できますが、ビジョンがあるだけでは成果が期待できません。ビジョンの策定と組織への浸透の双方に注力し、長期にわたって取り組む必要があります。ポイントを押さえて組織の活性化に取り組みましょう。
ポイント①実現性のあるビジョンを掲げる
ビジョン策定にあたっては、従業員が行動の主体となることを主眼に置きましょう。株主や取引先、顧客などすべてのステークホルダーが目にする点にも考慮してください。
難しい言葉は使わず、簡潔な表現で印象づける必要があります。
・誰もがイメージできて分かりやすい
・単なる夢ではなく実現性・具体性がある
・普遍的で自分ごとにしやすい
上記のようなビジョンの策定が重要です。場合によっては売上高や利益額など、数値目標を掲げてもよいでしょう。
ポイント②ビジョンの意義を浸透させる
ビジョンを浸透させる手段を使って、ビジョンの意義や目的を社内に浸透させ、従業員に正しく理解してもらうことが必要です。従業員がビジョンを自分ごととして捉え、企業と従業員が目標を共有すると、会社全体の成長につながります。
ビジョンは簡潔なフレーズであるため、個々の従業員によって受け止め方やイメージが異なる可能性があります。十分な対話とすり合わせを行い、正確なビジョンの浸透がポイントです。
ポイント③長期的に取り組む
「ビジョンに向かうためにどうするべきか」「従業員としてどうあるべきか」を行動指針として定めましょう。
ただし、全員が企業が定めた行動指針のとおりに行動できるとは限りません。従業員は、日常の業務のなかでビジョンや行動指針をもとに何らかの行動をして初めて実感を持ちます。
個々の体験とビジョンが強く結びつくには一定の期間が必要です。目に見える効果が得られるまで、数年以上の長期にわたって取り組みましょう。
ビジョンドリブンの成功事例|日本航空(JAL)
ビジョンドリブンの成功例として、日本航空の事例を紹介します。
同社は経営再建にあたってトップに招へいした稲盛和夫氏の指導のもと、氏が提唱している「フィロソフィー」をベースに従業員の手で「JALフィロソフィー」を作成しました。
企業が一体となるため、毎日の朝礼・終礼でJALフィロソフィーの読み合わせを実施しました。フィロソフィーと個々の従業員の体験とを日々照らし合わせて、理念や行動指針の浸透を図っています。
まとめ
市場や社会情勢の変化が激しく突発的なアクシデントが生じやすい現代は、企業の外部や市場に確かな方向性を見出しにくい状況です。そのような時代背景から、企業は自社の普遍的な存在意義・方向性を明確にし、ビジョンをもとに全社一丸となる必要に迫られています。
個々の従業員が、ビジョンをもとに自主的に判断して行動できればモチベーションやエンゲージメントの向上につながります。ひいては企業の持続的な成長に貢献できるでしょう。
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