COLUMN

2024.02.02

物流業の2024年問題とは?|課題から解決策まで解説

物流業の2024年問題とは?|課題から解決策まで解説

このままでは物が運べなくなる 物流機能は荷主によって重要な経営アジェンダ

物流の2024年問題とは、全日本トラック協会によると2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されており、このことを「物流の2024年問題」と言われています。国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、2024年問題に対して何も対策を行わなかった場合には、営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%さらに2030年には34.1%不足する可能性があると試算しています。
多くの物流会社の経営者からは、今までの長時間労働が継続困難になる中、トラックドライバーの現行給与を保持するのが難しいという声が上がっております。今後はメーカーや商社などの取引先と物流会社とのコミュニケーションがより一層重要になると想定されます。1件の運賃の再評価や業務内容の抜本的見直しを通じて、両者が生産性を高める取り組みが不可欠です。

このままでは物が運べなくなる 物流機能は荷主によって重要な経営アジェンダ

物流業が抱える課題

トラックの配送効率(実働率×実車率×積載率)をどう改善していくか?

2024年問題に対応してくためにはトラックの生産性指標である配送効率向上に目を向けることが必要になります。トラック1台1台の配送効率を見える化して、改善箇所を可視化し、打ち手を検討することが求められます。

配送効率は実働率、実車率そして積載率を乗算した総合指標です。1つ目の実働率は「トラックの1日の実働時間の割合指標」であり、ドラックの稼働時間を指します。2つ目の実車率は「トラックが走行した距離(実車キロ)のうち、実際に貨物を積載して走行した距離(走行キロ)の割合指標」であり、走行距離合計に対してどれだけ荷物を積んで走行したかを指します。最後に積載率では「トラックの最大積載重量に対して、実際に積載した貨物の重量の割合指標」であり、荷量の効率性を示します。

物流業が抱える課題

各3指標が低下する主な要因として下記が挙げられます。
自社だけでなく、発荷主・着荷主の経営都合も相まって指標低下を生じさせております。

1.実働率の低下要因
(1)配車パーソンが育っておらず、場当たり的な配車となっている
→ 改善の方向性:戦略的配車計画を推進・配車システムの導入・刷新・配車パーソンの育成
(2)トラックとドライバーが固定的に紐づいており、案件に応じた柔軟な配車をする事ができない
→ 改善の方向性:ドライバーの車種の多能工化・トラックとドライバーの紐づきを削減

2.実車率の低下要因
(1)帰り荷が空でトラック稼働している
→ 改善の方向性:帰り荷の確保(荷主・物流会社との水力・水平での連携などによる荷物の確保)
(2)倉庫の附帯作業に時間がかかっている
(3)荷待ち時間の長期化が進んでいる
→ 改善の方向性:荷主との取引条件の見直し

3.積載率の低下要因
(1)荷主の生産タイミングに合わせてJust In Timeで輸送している事による弊害
(2)積載率を高める視点での運送条件が整備されていない
→ 改善の方向性荷主との取引条件の見直し
※物流視点でなく、サプライチェーン単位での改善が必要

タナベコンサルティング作成

タナベコンサルティング作成

物流業の2024年問題へ向けた解決

物流ではなくサプライチェーンという概念での視座へ高めたうえで積極的対話をする

解決策を探るうえで先に述べた配送効率を高めるために、物流ではなくサプライチェーンという概念での視座へ高めたうえで積極的な対話をすることが必要になります。従来であれば、2024年問題に危機感を持っているものの「まだ先のことだろう...」と問題を先伸ばしにしていた企業様も多かったのではないでしょうか?

ですが、2024年4月の到来が近づくにつれてメディアも含め「物が運べなくなる問題」に対する危機意識が高まっているタイミングのように筆者は感じております。今のタイミングをもって荷主・物流会社双方が対話を行い"物流視点"だけでなく"サプライチェーン視点"から解決策を模索していくことが必要です。製造業様であれば、調達、生産管理などと連携して物流の見直しを図る事が必要です。
配送効率低下の要因は「モグラたたき式の場当たり的な解決策」では根本的に解決できない内容が多いです。物流の問題を構造的に見ていくためにもサプライチェーン視点からの改善策検討をすることが必要です。

物流業の2024年問題へ向けた解決

著者

タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

土井 大輔

大手システム機器商社を経て当社に入社。2016年より“物流が世の中を支えている”と物流経営研究会を立ち上げ、物流業のサステナブルモデルを開発。”荷主側“の経営課題を把握した上で物流会社の事業戦略構築を得意とする。また、製造・卸売・小売・サービス・建設業の経営支援も数多く手掛け、熱意あふれるクライアントファーストの姿勢でのコンサルティング展開で多くのファンを持つ。

土井 大輔

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