COLUMN

2024.02.02

物流クライシスの原因と解決策事例をご紹介

物流クライシスの原因と解決策事例をご紹介

近年、ECサイト利用などによる荷物取扱量の急増もあり物流ニーズは日々高まっています。
一方、10年ほど前から顕在化していた「物流クライシス」と呼ばれる現象が、特に2024年に深刻度が増してくると言われています。
物流業界にとって大きな転換期となることは間違いありませんが、物流業界に限らず、あらゆる産業に共通した問題であり、多くの人々が影響を受けることになる問題でもあります。

物流クライシスとは

物流クライシスとは、荷物取扱量の急増に対して物流のキャパシティーが追い付かなくなり、これまでと同じサービスの維持が困難になるという問題をさします。
すでに荷物量は限界に近づきつつありますが、2024年にはさらなるトラックドライバー不足が進み、完全に処理能力の限界を超え、大きな問題になると予測されています。
物流クライシスの影響は物流業界だけでなく、荷主の売上減少や産業競争力の低下、利便性の低下など、日本全体のビジネスやサービスにさまざまな影響を及ぼすのです。

物流クライシスとは

物流クライシスの原因と課題

物流クライシスの原因となる物流業界が直面する問題は、長年にわたって蓄積されてきたものであり、その原因は多岐にわたります。
代表的なものとして下記の6点があげられます。

(1)トラックドライバーの高齢化・人手不足
少子高齢化問題や団塊世代の一斉退職、低賃金、長時間労働の問題などから、ドライバーの負担が増え、ドライバーの人手不足が深刻化しています。
また、現在働いているドライバーの高齢化が進んでおり、今後その傾向はさらに強くなっていくと予想されます。

(2)2024年問題
働き方改革関連法により、2024年4月1日より、自動車運転業務を対象とした時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されます。これにより発生する問題を「2024年問題」といいます。
時間外労働の上限規制が設けられることにより、ただでさえ不足しているドライバーの労働時間が削減されて取り扱える荷物量が減ります。労働時間が減少するドライバーも、収入減少にともない離職者が増える可能性も指摘されており、慢性的なドライバー不足は一層深刻になっていきます。

(3)ECショッピングの普及、荷物取扱量増加 EC市場が急激に拡大していることにより、配送を集約できない小口配送を中心とした配送量が増加し、運送業者の負荷が増大しており対応ができなくなる状況が近づいています。

(4)再配達の増加による負担増
ネットショッピングの増加に比例して、再配達の荷物も増加しています。この再配達が、物流業者やドライバーの大きな負担になっています。

(5)利益率低下
ECショップでは「送料無料」のサービスが当たりまえになってきており、その分荷主から配送業者への運送費値下げ要請が行われている場合も多くあります。それにより、配送量が増加しても配送業者の利益率は低下しています。また24年問題により、さらなる人件費増加に伴うコスト増加により利益率低下も予想されます。

(6)バックオフィスの人手不足
荷物取扱量が増えることにより、ドライバーの業務だけでなく、事務業務量も増加します。物流業界では、ドライバーだけでなくバックオフィスの人手不足も問題になっています。

物流クライシスの原因と課題

物流クライシスへの解決策

目の前に迫った「物流クライシス」を解決するためには「物流効率化」「物流最適化」を推進することが急務です。

実際に物流業界は、配送センターでドライバーに無駄な待機時間が発生したり、トラック積載率が40%程度であったり、業界として非効率的な部分が多くあります。
また中小配送業者では未だにファックスを使用するなど、アナログで属人化している業務も多く、それらの解決も物流クライシスの解決に必要なのです。
このように物流業界には様々な課題があり、DX・データ活用やAIといったテクノロジーの導入や、最適化のための物流戦略によってこれらの課題解決が期待されています。
労働時間の短縮による、人手不足、コスト増加に対応していくためには、この点を考えなければなりません。
物流の効率化・最適化の具体策としては下記があげられます。

①複数の物流会社が連携して、同じトラックで荷物を運ぶ共同配送
②配達先から帰る際にも荷物を積み込む「帰り荷」の増加
③ドライバーの荷待ちや、積み下ろしに掛かる荷役作業の時間の短縮
④車両見直し・モーダルシフト(鉄道・船舶輸送)への取り組み
⑤ラストワンマイル配送の効率化としてのドローン配送
⑥物流倉庫の自動化
⑦各種データの可視化
⑧配送ルート・物流拠点の最適化
⑨人員配置・動態管理の最適化

物流クライシスへの解決策

物流クライシスを乗り切るために

物流クライシスを乗り切るには、先述した通りDXを含めた物流戦略が鍵を握ります。
貨物や倉庫・車両の空き情報などの可視化、複数の物流企業間での共有ネットワーク構築など荷主と運送会社の情報共有を深めて、効率化を図り、ドライバーの負担を減らすことが求められます。
また、IoTやAI技術の活用、RPAの導入による業務の自動化、リアルタイムでの情報の可視化、配送・保管・管理の作業標準化を行い効率化と生産性の向上を図っていく必要があります。
そのためにも「物流効率化」「物流最適化」のための全社横断的な物流戦略策定及び、見直しを行い、物流クライシスへの対策を実行していきましょう。

物流クライシスを乗り切るために

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
コンサルタント

荒井 拓弥

ファッション商社にて販売、店舗マネジメント、出店、海外駐在、人事業務を経験後、ファブレスメーカーにて生産管理、バックオフィス管理、EC運営に従事。当社に入社後は、顧客に寄り添い現場から課題解決を導くことをモットーにしながら、BtoCビジネス分野を中心に、新規事業開発・戦略構築テーマで活躍中。

荒井 拓弥

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