COLUMN

2024.02.02

中小企業における成長戦略の立て方|役立つフレームワークも紹介

中小企業における成長戦略の立て方|役立つフレームワークも紹介

昨今の経営環境について

新型コロナウイルスの感染拡大、脱炭素、SDGs、円安、原材料費高騰、人材不足等、「経営環境が大きく変わった」と感じる経営者も多いのではないでしょうか。今後も継続的な成長を続けるには、どの様な成長戦略を取るべきかを検討される機会も増えたことと思います。様々な情報が散乱する中で、まずは頭の中を整理する、論理的に考える事が大切ですが、その様なときに役立つのが、フレームワークになります。

昨今の経営環境について

「アンゾフの成長マトリックス」と「スマイルカーブ」

経営環境が大きく変わる中で、今後も持続的な成長を続けるために、どの様な成長戦略をとるべきかを考えるフレームワークの一つが「アンゾフの成長マトリックス」になります。
「アンゾフの成長マトリックス」は、成長戦略を「製品(自社が提供する製品・サービス)」と「市場(対象となる個人・組織」に分け、さらにそれを「既存」と「新規」に分けています。
多角化戦略=新規製品×新規市場
新製品開発戦略=新規製品×既存市場
新市場開拓戦略=既存製品×新規市場
市場浸透戦略=既存製品×既存市場

引用元:経済産業省中小企業庁 ミラサポplus 中小企業向け補助金・総合支援サイト

引用元:経済産業省中小企業庁
ミラサポplus 中小企業向け補助金・総合支援サイト

また、「スマイルカーブ」は、製造業のバリューチェーンの付加価値を表しています。川上(企画開発、調達・購買)と 川下(販売・マーケティング、アフターサービス)で得られる付加価値(利益)が高く、川中(製造、出荷・物流)では付加価値が下がっていく傾向があります。
これを曲線に表すと笑顔に似ていることからスマイルカーブと呼ばれています。
日本の製造業の多くは、高度経済成長期までスマイルカーブとは逆の「アングリーカーブ(川中の付加価値が最も高く、その曲線が人の怒った口の形に見える)」を描いていましたが、バブル崩壊後は人件費が低い新興国に生産拠点の移転が進み、製造プロセスの付加価値が相対的に低下した歴史があります。

引用元:株式会社タナベコンサルティング 2024年度経営戦略セミナー資料より引用

引用元:株式会社タナベコンサルティング
2024年度経営戦略セミナー資料より引用

中小製造業の付加価値について

経営環境の変化として、新型コロナウイルスの感染拡大、脱炭素、SDGs、円安、原材料費高騰、人材不足等を挙げましたが、とりわけ「新型コロナウイルスの感染拡大」、「脱炭素」では、自社の市場が消失してしまう可能性に直面している企業も多数存在します。脱炭素に関して言えば、カーボンニュートラルを推進していくことが必要となり、自社の商品・技術が過去のものとなり、2030年、2040年、2050年の将来を想像してみた時に、市場(売上)が消失してしまう可能性が高く、危機感を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
大手企業の動向を見ていると、矢継ぎ早に多角化戦略に打って出ている企業も多く見られますが、中小企業においては、資金力や技術力、人材不足等の観点からも、新たな戦略を打ち出す事が難しい場合がほとんどではないでしょうか。
そのような状況下においても、現在の経営環境における成長戦略を検討していかなければならず、そのためには自社の付加価値(技術・サービスの強み)を把握しておく必要があります。

前述のとおり、「企業環境が大きく変わった」と感じられている経営者の方々の中には、「アンゾフの成長マトリックス」を用いて自社の成長戦略を描いている場合もあると思います。
成長戦略を検討するときに、「自社のコア技術は何か?」をしっかり定義できているか、再度確認していただきたいと思います。突出したコア技術を保有されている企業であれば、誰でもすぐに回答できると思いますが、そうでない企業が多数存在するのも確かです。特に中小のサプライヤー企業においては、他社と差別化されたコア技術を持ち合わせていることが少ないのではないでしょうか。

これまでは、企画・開発・調達・製造・物流・販売・アフターサービスというバリューチェンを構成する機能のうち、どれをどこまで効率化・合理化できるかが重視されてきました。これからは、「価格が安い」から「質が高い」へマインドチェンジすることが大切です。

先ほどの「スマイルカーブ」では、企画・設計、アフターサービスが重要という訳ではなく、どこに注力するかを決める事が大切です。
中小のサプライヤー企業においても、部品を供給するだけでなく、サービス価値の創出(モノ+コトの提供)も平行して検討していくことも大切ではないでしょうか。
例えば、自社の強みを「加工精度」と考えていたとします。精度の高い加工のサービスと言い換えれば、モノ+コトの提供となりますが、強みとなりうるコト(サービス)はそれだけでしょうか。取引先から見ると異なる場合もあります。
自社の強みの把握が難しい場合、あるいは、そうでない場合においても、取引先に自社の強みをヒアリングしてみる事をお勧めします。自身が考えていた内容と違った回答が返ってくるかもしれません。

例えば、次に示すような内容です。
①適当な図面でも対応してくれる
➁改善活動を提案してくれる(コストダウン検討)
③品質向上の改善策を提案してくれる(図面上での指示)
➃若手に指導をしてくれる(加工機の特性が分からない)
➄小ロットでも対応してくれる、即納対応してくれる
⑥他取引で得た経験値を展開してくれる

大手企業でも、新人・若手の教育が十分でなく、実務を通してスキルアップを図っていく事も多くありますし、日常業務の忙しさからコストダウンの検討が十分でない場合もあります。
加工した部品の供給だけでなく、その過程においてサービス価値を創出していくにより、取引先からの信頼を得る事ができ、部品の供給にとどまる事のない価値の提供を継続していくことが、LTV(リピート率)の向上につながることもあるのではないでしょうか。

LTV(リピート率)とは:
収益の源泉となる売上=顧客数×単価×LTV(リピート率)
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、顧客が一生涯において自社にもたらす利益のことを指します。従来、マーケティング分野では優良な新規顧客をどれだけ獲得できるかが重要視されてきましたが、現在は獲得した顧客がどれくらいの頻度で自社商品を買ってくれるか、自社のサービスをどれくらいの時間利用してもらえるかといったLTVの観点が重要となります。内需縮小が明確である国内において売上を上げていくことは非常にハードルが高く、LTV(リピート率)の向上が重要となります。

中小企業のサービス価値向上策について、ご紹介させて頂きました。
今後の成長戦略の検討に向けて少しでもお役立ちできれば幸いです。

中小製造業の付加価値について

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
コンサルタント

榊原 孝司

榊原 孝司

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