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本コラムでは、企業が持続可能な発展をしていくために必要な経営資源の一つである「人」に焦点を当て、「従業員にとっての幸福な職場環境」と「サステナブルな職場環境」の重要性を解説します。2030年SDGsの国際的な目標の達成に向け、益々、社会からの評価や高い関心が寄せられ、積極的に取組む企業には優秀な人材を惹きつける力があります。上述した2つの「職場環境」の条件を解説するだけでなく、メリット、構築するための具体的な手法についてもご紹介します。
従業員の「幸福な職場環境」と生産性
「幸福な職場環境」とは
「幸福な職場環境」基本原則と生産性への効果
まず、経営者が理解しておくべき「幸福な職場環境」の基本原則とし5つを解説した後に、生産性への効果についても解説します。
「幸福な職場環境」の基本原則
1.信頼と尊重、オープンコミュニケーションの文化の確立
従業員が自由に意見を述べ、相互に尊重し合える環境が重要です。オープンなコミュニケーションは、信頼とチームワークを促進します。
2.ワークライフバランスのサポート
フレキシブルな勤務時間、リモートワークの選択肢、休暇制度などを通じて、従業員が仕事と私生活のバランスを保てるよう支援することが重要です。
3.キャリア開発と自己成長の機会
従業員が自己成長とキャリア発展のための機会を提供することは、長期的なエンゲージメントと満足感につながります。
4.安全で健康的な職場環境
身体的、精神的健康を守るための安全な職場環境を提供することが必要です。ストレスマネジメントのプログラムや会社側からの率先した健康的な職場環境づくりが重要です。
5.公正な報酬と評価システム
従業員の労働に対して公正かつ適切な報酬を提供し、成果に基づいた評価を行うことで、モチベーションとロイヤルティを高めることができます。
上述した「幸福な職場環境」は従業員の生産性を高め、結果として企業、組織全体の成果にも良い影響を与えます。次に、「幸福な職場環境」がもたらす生産性への効果について5つ解説します。
1.従業員のエンゲージメントの向上
幸福な職場環境は従業員のエンゲージメントを高めます。エンゲージメントが高い従業員は、より積極的に仕事に取り組み、創造的なアイデアを提供しやすくなります。
2.ストレスとバーンアウトの減少
仕事へのストレスが少ない環境は、バーンアウトのリスクが減少し、従業員はより集中して仕事に取り組むことができます。これにより、作業効率と品質が向上につながります。
3.欠勤率の低下
心理的に安心・安全と感じる職場は従業員の健康を促進し、心身の不調による欠勤を減らします。これにより、生産性が維持され、新規採用などの人事コストの削減にもつながります。
4.チームワークと協力の促進
快適な職場環境はチーム内のコミュニケーションを改善し、協力的な作業を促すため、チーム全体の生産性が向上します。
5.人材の定着と離職率の減少
従業員が職場に満足している心理状態は、会社への忠誠心が高まり、離職率が低下します。これにより、人材の維持と知識の蓄積が保たれ、継続的な生産性の向上が期待することができます。
職場環境のサステナビリティ
サステナブルな職場環境とは
サステナブルな職場環境と取組むメリット
サステナブルな職場環境とは、持続可能性の原則に基づいて設計された職場のことを指し、「環境」「社会」「経済」の3つの要素が組み合わさります。具体的には、以下のように定義することができると考えます。
1.環境への配慮
エネルギー効率の高いビルディングデザイン、再生可能エネルギーの使用、リサイクルと廃棄物削減、出張費削減の取り組みなど、環境に負荷をかけない運営を目指します。
2.社会的責任
従業員の健康と幸福を重視し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進します。また、地域社会との関係を重視し、地域貢献活動にも力を入れます。
3.経済的持続可能性
長期的な視点を持ち、経済的に効率的で持続可能なビジネスモデルを採用します。これには、コスト削減だけではなく、従業員個人の成長と企業の長期的な成長を支える投資も含みます。
上記3点挙げたように、単に「環境に優しいオフィス」という意味だけではなく、従業員、コミュニティ、そして地球に対して良い影響を与える組織の運営方法を指します。
サステナブルな職場環境を持つ企業は、他社や社会からの評価においてメリットは多く、特に人手不足が社会問題となっている日本企業にとって重要な戦略の一つと考えます。ここでは、考えられるメリット5つについて解説します。
1.ブランドイメージの向上
環境や社会への責任を重視する企業は、消費者やビジネスパートナーから高い評価を受ける傾向にあり、企業のブランドイメージを向上させ、信頼と尊敬を得ることができます。それは、付加価値を付けた固有の企業ブランディング確立に作用します。
2.優秀な人材の獲得と保持
学生時代からサステナビリティについて学んできた若い世代にとって、日本企業の経営者の平均年齢60.4歳(2022年帝国データバンク調査)の世代よりサステナビリティに対する意識は高く、就職先を選ぶ時にも重要な要因になります。環境や社会に配慮する企業は、優秀な人材を引き付け、長期間にわたり、彼らを保持することにもつながります。
3.投資家からの関心の高まり
環境と社会的責任を考慮した投資が増える中、サステナブルな職場環境を持つ企業は投資家からの関心を引くことができます。これは企業にとって、資金調達や株価にも良い影響を与える可能性があると考えられます。
4.規制への対応力
環境や社会に関する規制が厳しくなる中、サステナブルな職場環境を持つ企業は規制に対応しやすく、自社ではコントロール不能な外部環境要因のリスクを軽減できます。
5.社会的認識と貢献
地域社会や業界に対する積極的な貢献を通じて、企業は社会的な認識を高めることができ、企業の存在価値や働く従業員のエンゲージメント向上など、社会にも自社にとっても、ポジティブな影響を与えることができます。
サステナブルな職場環境を構築するための具体的手法
企業が従業員に対し、取り組むべき具体的手法
前項では、サステナブルな職場環境について解説しました。
本項では、企業がサステナブルな職場環境を構築するために、従業員に対し、取り組むべき手法を6つ解説します。
1.環境意識の高いオフィスデザイン
エネルギー効率の良い照明、天然素材の使用、屋内植物の導入など、環境に配慮したオフィスデザインを採用します。
2.リサイクルと廃棄物削減のイニシアチブ
リサイクルの導入、ペーパーレスの推進、廃棄物削減に関する教育と意識向上のためのプロモーションを実施します。
3.持続可能な通勤オプション、柔軟な働き方
自転車通勤の支援、公共交通機関の利用奨励、カーシェアリングやリモートワークの選択肢を提供します。
4.健康とウェルネスプログラム
スポーツジムの利用補助、健康的な食事オプション(社員食堂のメニュー変更やテレワーク時の食事デリバリー補助)、メンタルヘルス支援プログラムなど、従業員の身体的、精神的健康をサポートします。
5.社員教育とエンゲージメント
サステナビリティに関する研修やワークショップを実施し、従業員の環境意識を高め、サステナブルなビジネスプラクティスへの参加を促します。
6.社内コミュニティとボランティア活動
社内のサステナビリティ委員会の設立、地域社会へのボランティア活動の機会提供など、社内外でのコミュニティビルディングを促進します。
上記の取組みでは、従業員がサステナブルな職場環境づくりの一部となり、積極的に参加することの意識づけ、動機付けとなり、企業全体の持続可能性の目標達成に寄与することにもつながります。
まとめ
本コラムを通じて解説した「幸福な職場環境」と「サステナブルな職場環境」は単なる理想ではなく、企業がこれからのビジネス環境で発展し続けるための不可欠な要素と考えます。「サステナブルな職場環境」は、従業員の幸福感を高め、生産性を向上させるだけでなく、社会的評価を高め、優秀な人材を惹きつける力があります。
これらの要素を戦略的に取り入れ、人材を最大限に活用することが、組織・企業の持続可能な成長に繋がっていくと考えます。このコラムが、貴社の職場環境を見直すきっかけの一助となれば幸いです。
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