COLUMN

2023.11.29

組織改革成功の鍵とは?
-成功事例から見る組織改革のポイント-

組織改革とは

組織改革の定義と目的

組織改革とは、企業が永続的な成長を目指すために、組織の風土や体制を抜本的に変革し、事業戦略を推進し、企業生産性を高める組織に進化することであると定義します。 "組織は戦略に従う"(米国の経営学者、アルフレッド・D・チャンドラー)という言葉の通り、事業戦略を推進するためには、戦略に従う強い組織を構築し、進化していかなければなりません。そうした組織を構築するため、人事制度の改善や業務改善、人材の教育を行っていくことは組織改革のうちの1つの手段と言えます。

企業が組織改革を行う目的としては、長期ビジョン・中期経営の実現、収益構造改革、働き方改革の推進、業務の効率化、従業員の生産性やエンゲージメントを高めるためと様々な目的があげられます。新たな競合他社の登場や市場の変化、テクノロジーの進化、顧客のニーズの変化等々目まぐるしく、激しく変化する環境の中で永続的に成長するためには、長期の企業のあるべき姿を描き、実現するための戦略を策定し、それに合わせた組織を構築することが求められます。

組織変革のポイント

組織変革を実現する際、重要となるポイントは下記3点です。

①長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定
②組織変革を実行する社員によるリーダーシップの発揮
③企業のあるべき姿(MVV)の浸透による従業員の全員参加

貴社の状況にもよりますが、上記のポイントを考慮に入れながら、組織改革を進めることが成功への道となります。

①長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定

何よりも重要なことが長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定であり、将来の目標・方向性を決めているかにあります。 短期視点での課題解決だけではなく、目指す会社の姿に向けて組織改革を行っていきます。 昨今の働き方改革をはじめ、2030年問題、2040年問題に対して会社全体がどのように社会貢献価値を維持・向上させ、発展していくかの指針があって初めて組織改革を実行する"基準"となります。

改めて、"組織は戦略に従う"ため、企業のあるべき姿、それを実現するための戦略がない事には、どのように組織を改革していくべきかというところに進めることはできません。
また、組織改革は組織全体で行わなければ意味のあるものにならないため、組織の方向性を決めるためのビジョンは必須となります。

②組織変革を実行する社員によるリーダーシップの発揮

組織改革における鍵として、リーダーシップの発揮は不可欠です。リーダーシップは組織の方向性を示し、変革をリードする力として機能します。リーダーが改革に対するコミットメントを示すことで、従業員は変革への信頼を持ち、協力的な姿勢を示す傾向が高まります。これまで変化することなく存在してきた、組織の形・在り方にメスを入れ、従業員へ改革の必要を訴え、納得させるリーダーの存在が徐々に企業を変革へと進ませます。そのため、組織改革を成功させるためには、強力なリーダーシップが欠かせないのです。

③企業のあるべき姿(MVV)の浸透による従業員の全員参加

組織改革を行う際には、企業全体として変わる必要があるということであるため、全社的な納得感のもと協力し合える体制を整えることが必要となります。組織改革を行うにあたり、トップや経営陣、管理職、現場とそれぞれの立場で組織に対する考え方は異なるため、一部の意見だけで見切り発車とならないよう、広く意見を吸い上げることが重要となります。また、MVVの浸透に取り組むことで、組織としての一体感の醸成につながります。

成功事例から見る組織変革

デルタインターナショナル

一つ目の事例は、1992年設立の商社である、デルタインターナショナルです。同社は、製菓メーカーにナッツなどの商品を納入するBtoBビジネスからスタートし、2000年には自社ブランドのくだもの屋さんシリーズを小売店に卸すようになりました。また、2016年にはロカボナッツシリーズの「1週間分のロカボナッツ」が大ヒットしたことや、コロナ禍による健康志向やダイエットブームに乗り、消費者の支持を受けて右肩上がりで急成長しています。

しかし、とにかく業績を伸ばすために走り続けたため、営業職が多数を占めるという組織体制、業務管理システムもバラバラで非効率といったような形で、より組織として動ける体制への改革が必要となっていました。

そこで、まず第一の改革として「業務の新しい仕組みづくり」として、社員が働きやすい環境づくりと管理部門の業務改革、基幹システムの入れ替えを行いました。

続いて、第2の改革としては「各部門を牽引するミドルリーダーのマネジメント強化」に取り組みました。それまでの同社は創業メンバーの強力なリーダーシップや独自のアイデアに社員が追随する形で業績を伸ばしてきていました。しかし、組織改革の中で部長クラスの人材を外部のマネージャー育成プログラムにより、マネジメントを基礎から学びなおし、「個人視点からチーム視点への移行」を行いました。

そして、第3の改革としてこれまでの改革の中心にいたリーダー人材を中心として「人事改革」へと踏み切りました。
この第3の改革により、評価制度を改革し、部門ごとのKPIも定めることで社員共通のゴールを共有し、一体感を持って目標にむけた取り組める体制となりました。また、第3の改革はこれまで曖昧であった目標や企業として目指すべきことを明確にするため、MVVの制定を行いました。各部門からMVV制定プロジェクトに参加したい社員を募り、チームを結成し、全社員が参加するワークショップを開催し、それぞれの価値観を言葉として抜き出し、プロジェクトメンバーで文章にまとめあげました。また、MVVを制定して満足する企業が多い中、同社では毎年ワークショップを開催し、MVVの浸透を行っています。MVV制定の効果として、MVV制定によって自社の目指す方向が明確になったことで、活発な意見交換が増え、主体的な社員が増加しており、さらに、MVVに共感し、就職を希望する若い求職者が増加するなど、採用ブランディングとしても高い効果を発揮しています。

マネーフォワード

続いての事例は、マネーフォワードです。同社は法人や個人、金融機関が抱くさまざまなお金の課題を解決するサービスを提供し、2012年の創業から10年間で1900名にまで増やしてきた成長企業です。組織の急拡大に合わせて日々新しいメンバーをグループに迎えている同社が会社全体で呼吸を合わせて、組織の一体感を保つため、どのような組織改革を行っているのか、というところを見ていきます。

一人一人の心を繋いでいるのは、2016年に策定したMVVC(Mission,Vision,Values,Culture)です。
創業3年の節目を前に従業員数が100名に迫ろうとしていたころ、全社員に「行動指針」を配布し、浸透を図ろうとしていました。その際に、その「行動指針」は創業初期に必要であったもので、現時点の組織にはフィットしていないとMVVCの明文化の必要性に気づいた社員を中心としてMVVC策定プロジェクトが実行に移されました。
MVVC策定プロジェクトを通じて一人一人の内面にある価値観を引き出して、「共通言語」をつくり上げていくことは困難な作業となりましたが、経営陣へのインタビューや一人一人が熱を持って語る瞬間を捉えて、全社員が納得のいくものを作り上げました。MVVC策定後は全社浸透活動として、経営陣がMVVCに対する自分なりの解釈を語り合うセッションや、カルチャー体現者を表彰する制度、オフィス環境などで日常的にMVVCに触れられる仕組みを構築しました。

また、オフライン活動に多くを支えられていたカルチャー浸透が上手く行き始めていた矢先、コロナウイルスによる外出自粛となり、カルチャー浸透が薄れてしまうという危機感から組織体制を見直しが提案されました。そして、「カルチャーこそがマネーフォワードの競争優位性である」という信念を持ち、従業員数が増加してもカルチャーを希薄化させない、社員の働きがいを促進し、自立駆動できる組織をつくることを目的として、人事部が「People Forward本部」へとアップデートされました。

そのように、MVVCを策定・浸透し、組織体制を変革することでカルチャーという競争優位性を守ることで、組織が大きくなっても社員の主体性やエンゲージメントを高めておられます。

まとめ

今回、2社の組織改革の事例をご紹介させていただきましたが、両社ともにあるべき姿を描き、素晴らしいリーダーシップを発揮する社員を中心として、全社へ浸透し、全社員が参加することで、組織改革が成功へと導かれていたかと思います。

ぜひ、組織改革をお考えの際には、

①長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定
②組織変革を実行する社員によるリーダーシップの発揮
③企業のあるべき姿(MVV)の浸透による従業員の全員参加

のポイント3つを考慮して、推進いただければ幸いです。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
コンサルタント

植杉 友哉

成長戦略をベースとした中長期ビジョン策定と実行支援、各企業の実情を踏まえたオリジナルの人事制度構築支援、ひとづくりを戦略的・計画的・体系的な視点から支援する社内教育制度構築など多くのコンサルティングに参画している。顧客と誠実に向き合い、寄り添うコンサルティングの実践を信条としている。

植杉 友哉

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