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組織の基本デザインとその特徴
3つの基本デザイン
組織デザインは大きく3つのデザインに大別されます。
1つ目は【機能別組織】です。
機能別組織とは人事部・営業部・経理部など各経営機能によって構成される集権管理型の組織です。企業が機能別組織を選択するメリットは大きく2点あります。
1点目は専門性の確立による規模の経済の発揮です。専門化の原則に則り、各経営機能のプロフェッショナル人財を育成することで、業務集中による規模の経済が発揮されます。
2点目は経営トップによる抜本的な改革が行いやすいことです。トップに権限が集中する組織形態であるため、経営トップは幅広く各部門の情報を集めた上で、大局的な意思決定を行うことが可能です。
2つ目は【事業別組織】です。
事業別組織とは地域・顧客・サービス内容・製品別で各事業部を組成し、それぞれに利益責任を持たせる分権管理型の組織体制です。企業が事業部制組織を選択するメリットは大きく2点あります。
1点目は次期マネジメント人材の育成が可能であることです。各事業部のトップに権限を移譲することで、次期マネジメント人材を育成するとともに下位管理者のモチベーションを上げることが可能です。
2点目は現場の状況に応じた迅速な意思決定が行われる点です。権限を移譲しているため、現場を知る事業部トップが迅速な経営判断を行い、様々な状況に対応することが可能です。
3つ目は【マトリックス組織】です。
マトリックス組織とは横断型組織・格子型組織とも呼ばれ、機能別組織と事業部制組織両方の利点を狙った組織形態です。企業がマトリックス組織を選択するメリットは情報・人的資源の共有による範囲の経済の発揮です。機能×事業の2次元的な組織統合を図るため、少ない人的資源で効率よく成果を上げることが可能です。
物流上場企業における組織デザインの現状と考察
事業別組織から事業別×機能別×未来創造組織への転換
現在(2023年8月)物流上場企業(陸上輸送・水運)は89社あり、その中で組織図を公開している企業は43社あります。
これらの企業の売上高規模は38億円~2兆6000億、従業員数(グループ企業も含む)は95人~7万3400人であり、様々な規模の企業が組織図を公開しています。これら43社の組織図を分析すると、以下の内容が判明しました。
①営業機能を持つ企業は43社中32社であること
②社長直下部署を設置している企業は43社中19社であること
③企画部を設置している企業は43中23社であること
④組織形態は、機能別組織は17社・事業別組織は5社・マトリックス組織は0社・機能別×事業別組織は21社であること
物流企業の組織形態の特徴の一つとして、エリア・サービスを軸とした事業別組織になりやすいことが挙げられます。
これはサービスを全国・世界各地で拠点展開することが必須となる業界であるからです。そのため、営業部やCRM等の各経営機能の強化が遅れる傾向にあります。しかし、物流上場企業においてはエリア・サービスを軸とした事業別組織を維持しながら、各経営機能を横軸で展開する事業別×機能別組織が43中21社存在します。また、拠点横断型経営機能である企画部を設置している企業が23社、社長直下部署の設置を行っている企業が19社あります。企画部については特に経営企画部等の未来創造機能を持つ部署を設置することが重要です。
このように、事業別組織と機能別組織の強みを掛け合わせ互いの弱みを補完し、未来を創造する事業別×機能別×未来創造組織をデザインしていきましょう。
H社からみる組織デザインのポイント
事業別×機能別×未来創造組織の実践
物流上場企業の中で機能別×事業別×未来創造組織を展開している企業の適例としてH社が挙げられます。
H社は物流事業を主体に物流事業から派生したPCのカスタマイズ・産業廃棄物収集・大型ビル館内のデリバリー事業等を展開する東証スタンダード上場企業です。売上高は約340億円・従業員数1,394人(2023年3月期)となっています。
組織図を分析すると、東京ロジネット事業部・京滋多久ロジネット事業部・名古屋ロジネット事業部・茨城ロジネット事業部などエリア軸で展開された事業部の下に、経理部・人事部・総務部・営業総務部など各事業部を支える経営機能が横軸で展開されています。また、営業企画開発部、事業開発部、IT企画開発部などの企画部や未来創造室などの中長期的な未来創造機能、コンプライアンス・リスク管理委員会、サステナビリティ推進委員会などの社長直下部署も設置されており全社的な組織活性化が推進されています。
本コラムでは物流上場企業を例に組織デザインのポイントを解説しましたが、事業別×機能別×未来創造組織はどの業界の組織デザインにおいても効果を発揮します。皆様が組織デザインを検討する際の一助となれば幸いです。
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