COLUMN

2023.09.27

ESGスコアとは?選ばれる企業になるためのESG基本理解

ESG、SDGsという言葉を聞かない日がないくらい経営において重要なキーワードとなりました。SDGsの浸透に対し、日々の経営者との対話からもESGの理解・浸透はまだ薄いのではないかと思っております。このコラムでは選ばれる企業に向けてESGの基本を理解をしていきましょう。

ESG情報開示までの4STEPとESGスコアとは

ESGの情報開示に関する必要性が高まる中、ESGに関する指標とはどういうものかを理解をしていくことが必要です。

ESG評価とESG投資、そしてESG情報開示の4TSTEPについて

(クリックで拡大) 図3

参照:財務省 ESG投資について

ESG評価・スコアを理解するにあたり、ESG投資について確認をしていきます。ESG投資とは「財務的な要素に加えて、非財務的な要素であるESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮する投資のこと」です。従来の投資評価としてあった「財務」の視点だけではなく、「E(環境)」「S(社会)」「G(カバナンス」を企業評価に役立てる手法です。その所以は気候変動に対する金融市場へのリスクの高まりより、全世界的に環境に対する考慮をすることや、社会的責任の欠如が企業経営にリスクを及ぼす事例や社会的責任を果たす企業活動が好影響を及ぼすことから、企業が社会的に責任を果たすことがリスク、収益機会の観点からも重要であるとされています。また、ガバナンスにおいてもガバナンスの欠如に伴う投資損失が昨今、発生していることが背景にある。投資家、ステークホルダーにとって企業を評価する上で「E・S・G」の位置づけが高まっています。三菱総合研究所の調査によるとESG投資市場は2021年末時点で9,281億円まで拡大しています。2015年末時点の市場が662億円であったため、急速な拡大をしていることが読み取れます。
よって、企業価値向上に向けて財務の視点だけではなく「E・S・G」に対する取り組みとその開示の重要度が高くなってきています。その評価をESG評価(ESGスコア)と呼ばれています。ESGスコアは投資家が企業価値を把握するために用いられています。
企業はステークホルダーに対し、ESG情報開示をすることで企業価値を高めることが企業成長に繋げていくことが必要です。ESG情報開示に向けた簡単なステップを把握し、具体的なESGスコアについて理解をしていくことが必要です。

ESG情報開示に向けた4STEP
ESG情報開示の全体像を把握した上で、ESGスコアを把握することで「戦略的なESG活動」としていきましょう。
日本取引所グループ(東京証券取引所)が発行している「ESG情報開示実践ハンドブック」では下記4STEPで開示に向けた進め方を推奨しています。
各STEPの詳細については割愛しますが、ポイントはSTEP2「企業戦略とESG課題の関係」です。ESGスコアの開示にあたりどのような指標が良いかを検討する際に「一般的な情報開示ではなく、自社の戦略に基づき選定をしていく」ことが重要です。多くの企業はこのSTEP2のプロセスを飛ばし、ESG情報開示自体が目的化しているケースがあります。
「自社の戦略、またパーパス(社会的な自社の存在価値)」を定義し、実現に向けて開示すべき指標を選定しましょう。

「ESG情報開示の4STEP」日本取引所グループ(東京証券取引所)ハンドブックより引用
❶STEP1:ESG課題とESG投資(ESG課題とESG投資を理解する)
❷STEP2:企業の戦略とESG課題の関係
❸STEP3:監督と執行
❹STEP4:情報開示とエンゲージメント

STEP3にある、ESGの指標と目標値を設定するにおいてどのようなを設定するべきかついて
一般的な評価指標の理解に向けて解説していきます。

参照:財務省 ESG投資について

環境に関する評価とは

気候変動影響による世界経済へのリスク顕在化が関心の高まりに。

環境に関する評価指標とは

"環境に対する指標との多くが環境負荷軽減につながる活動内容です。主な項目として下記があります。

❶温室効果ガス排出量
❷エネルギー使用量
❸水使用量
❹環境リスクに対する管理体制
❺気候リスク軽減に対する投資

企業活動において重要となるエネルギーの使用量を可視化し、公開していくことになります。また、環境負荷軽減に繋がるための投資であったり、管理体制という点が含まれます。進めていくにあたり重要となる点は指標に対する自社の現状の把握です。「エコアクション21」の認証を取られている企業であれば認証のための項目に含まれるものが多いため可視化出来ています。そうでなくても企業活動上で使用しているエネルギーは算出が可能です。まずは、自社がどのようなエネルギーを使用し、エネルギーごとの温室効果ガス(CO2)の排出量を算出をしていきましょう。環境省から算定に関する方法やエネルギーごとの排出係数が開示されています。環境負荷に対する意識は高まっており、日本の15歳から69歳の消費者のうち68%が高い意識を持っています。一番意識の高い世代は10代であり、学校教育やYouTubeなどからの情報発信が活発化していることも背景にあります。これから社会に出てくる世代は価値観が変容しており、「環境に対する意識が高く、就職や消費などの意思決定」が変化していると捉えることが必要です。

続いて、どのような評価指標を選定するかについて事例をもとに解説します。
ポイントは4STEPのSTEP2にある自社の戦略とマテリアリティの特定において自社の事業において社会的に果たすべき使命とは何かを検討する必要があります。
ある化粧品・トイレタリーメーカーは自社の事業モデルから指標を下記に選定しています。

❶水の資料量の削減:化粧品は製造工程において大量の水を使用するため ❷原料となるパーム油の適正な調達:調達に対するトレーサビリティや原産国であるボルネオのパームヤシの保全活動 ❸廃棄物のリサイクル率:生産工程で発生する廃棄種別で一番多い「廃油」のリサイクル率

自社のビジネスモデルから指標を選定することが何よりも重要です。

出所:環境省

社会に関する評価指標とは

高まる企業の社会責任とその指標とは

社会課題に対する取組みは企業にとって重要な評価基準となっています。

企業にとって社会とは切っても切れない重要な関係性にあります。特に社会責任を果たそうとしない利己的な企業はその企業の価値を下げることに繋がります。社会に関する指標として下記が当たります。

❶男女の報酬差や従業員割合
❷人材流入・流出状況
❸従業員の安全性
❹労働安全衛生に関する方針・取組
❺人権に対するポリシー

男女共同参画局によると2021年男女の賃金格差は男性を100としたとき女性は75.2の賃金水準となっています。OECDの平均格差は88.4であり国際的にみても高いです。日本においては賃金格差が毎年拡大基調にあります。
社会に関する指標は自社だけではなくサプライチェーンの中で取り組む必要があります。ファッション業界は途上国に生産拠点が多いです。その途上国では児童労働がおこなわれており、その製品を仕入れた場合も企業価値を下げることに繋がります。サプライチェーン全体で現状を把握することが必要です。そのため、仕入・調達に関する指針を設ける企業も増加してきております。
自社だけではなく、サプライチェーン全体で社会に対する責任を見つめ直し、サプライチェーン全体でパートナーシップで取り組むことが必要です。

出所:内閣府 男女共同参画局

ガバナンスに関する評価指標とは

ガバナンスが企業価値の維持にとって重要な位置づけになっている。

ガバナンスを推進する機関と具体的な取り組みを対外的な発の必要性の高まり

"最後に「ガバナンス」に関する指標です。ガバナンスについてまず理解頂きたいことはガバナンスに対する目的の理解です。従来のガバナンスと現在のあるべきガバナンスを3つのポイントを説明します。

【目的】
<従来>ガバナンスは企業の不祥事の帽子や経営者による過度なリスクテイク防止等を目的とした経営の意思決定の合成性の確保
<現在>中長期的な企業価値向上を主眼に置いた経営の意思決定の合理性の確保
従来は「守り」であり、現在は「攻め」が目的であるということです。

【意思決定プロセス】
<従来>透明・公正な意思決定
<現在>透明・公正かつ迅速・果断な意思決定
透明・公正であることはもちろんですが、それに加えてスピード感のある決断が求められています。

【説明責任】
<従来>株主への説明責任(開示)
<現在>株主への説明責任(開示・対話)
開示することだけが目的ではなく、それによる対話(コミュニケーション)が求められます。
企業価値を高めることを主眼に置くことで、開示するだけではなく「企業価値をより高めるために」という視点で株主とのコミュニケーションをしていくことが必要です。企業価値向上を目指す戦略広報の位置づけで捉えることが望ましいです。
上記内容を踏まえ、ガバナンスにおいて評価指標として代表的な内容は下記でございます。

❶取締役会のダイバーシティと独立性
❷報酬とサステナビリティの紐づけ
❸サプライヤー行動規範の有無
❹倫理と腐敗防止に関する方針
❺ データプライバシーに関する方針
❻サステナビリティ報告、サステナビリティ関連開示

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

上原 伸也

アパレル製造小売業で販売・店舗マネジメント、大手旅行情報サービス業で営業・マーケティング業務に従事後、当社へ入社。「地域企業を元気にし、地域経済を活性化させる」を信念に、事業戦略構築、新規事業開発、SDGs経営統合を得意分野とし活躍中。顧客の改善活動をワガゴトとして取り組む真摯な姿勢でのコンサルティング展開で、クライアントから高い信頼を得ている。

上原 伸也

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