COLUMN

2022.08.31

パーパス(MVV)体系をアップデートすることで
長期ビジョンを構築する

4つのフェーズで自社のミッション・ビジョン・バリューを再整理

phase1 ミッション―グループ全体ミッション

ミッションとは、企業・組織が未来に発揮したい存在価値や果たすべき社会的貢献価値を示すものです。自社がよりどころとする会社の事業目的であり、社員がミッションを理解すれば、自分が行っている仕事に意味と価値を感じて自律的に働くようにしていくべきしょう。
単一事業を展開している企業の場合は「貢献価値のワンフレーズ=ミッション」と定義してもよいが、複数事業を展開、またはグループ経営を行っている持ち株会社(ホールディングス)の場合は、貢献価値を踏まえた上で「企業グループ全体」のミッションとして整理する必要があります。

phase2 ビジョン―長期ビジョンコンセプトの仮説

ビジョンとは、企業・組織としての「あるべき姿」を示します。すなわち、自社が実現したい未来像といえるでしょう。ミッションを実現するために、中期的(三~五年)に自社はどのような姿であるべきか。計画数値や組織図、事業規模など近い将来のイメージを全社員と共有し、その達成を目指す。ミッションが遠い未来の理想的なゴールであるのに対し、ビジョンはそこへ近づくための現実的・暫定的なゴールと考えてください。
ここ(フェーズ2)では、長期ビジョンのコンセプトの仮説と一致することになります。細かな数値目標を設定する必要はなく、グループ全体で今後どのような企業を目指していくのかを整理し、進むべき道(=方向性)が明らかになれば求心力が強くなります。なお中期ビジョンの策定においては、あまりに数値目標の達成を前面に押し出してしまうと、グループ会社の求心力が逆に弱まる懸念がある。ビジョンは〝ノルマ〟ではなく、会社が向かうべきベクトルを合わせることが重要なファクターです。

phase3 バリュー ―組織における共通の価値観

バリューとは、経営理念の体現やミッション・ビジョンを実現するため、組織や社員が取るべき最も重要な行動指針や守るべき共通の価値観を指します。社員がビジョンの達成に向けて実践するうえでの基本方針となります。
ここでは、ミッションを守りながらビジョンを達成するための、組織共通の「行動指針」を整理する。目指す目的地(ミッション)と到達したい目標(ビジョン)が同じであっても、どのように達成するかの価値観(バリュー)がバラバラでは、組織の足並みがそろわずなかなか前へ進めない。日常活動の価値観を合わせていくためにも、組織における共通の価値観を明確にする必要があります。
この価値判断基準の体系から、自社の魅力と進むべき方向性、大切にしたい価値観を明確化し、社員と共有する必要がある。自社が何を軸にしてビジネスを行っているのか、大切にしている価値観を社員は理解することができ、結果、社員のエンゲージメント(帰属意識)も高くなるのです。

phase4 パーパスをアップデート

再定義した貢献価値に基づいて価値判断基準を整理した後、ミッションの実現に向けた自社の中長期的な行動指針である「パーパスステートメント」に反映させ、アップデートしていく。具体的には、ブランディング政策や経営システム、人材育成、ガバナンスなど6点について、何をアップデートすべきかを検討・整理する必要があります。

①インナーブランディング(ビジョンブック、ブランドブック、行動指針)
➁アウターブランディング(IR/PR、デジタルマーケティング、ブランディング投資)
③経営システム(デジタルシステム、コミュニケーションシステム、業績マネジメント)
④人材育成(企業内大学の設立、ナレッジマネジメント、強化すべき人的資源要素)
⑤SDGs(社会貢献事業、ダイバーシティー&インクルージョン、健康経営)
⑥ガバナンス(リーダーシップ、報酬体系、コンプライアンス)

特に、組織にそれらを浸透させる手法である「インナーブランディング」(社内向けのブランディング活動)は重要です。立派なミッションやビジョン、バリューを持っていても、経営者の頭のなかや胸の内に秘められたままでは誰にも分かりません。「社員は以心伝心で分かり合えるはずだ」と信じる経営者は思いのほか多いのですが、文字や文章として書き出さない限りは徹底しないと考えるべきでしょう。例えば、ビジョンブック(経営理念、自社のあるべき姿、行動指針などを記載した社員向け小冊子)やブランドブック(ブランドの方向性や世界観の浸透を目的とした小冊子)、コーポレート動画、ブランディング、コーポレートサイトでの発信、社内報、周年記念日や社内研修会でのトップメッセージ発信などを通じ、経営者自らが理想や意思を明文化する「宣言マネジメント」「有言実行の経営」が必要です。トップが発信する価値判断基準を目指して同志が集まり、共感が重なり、貢献価値の展開力を高めていくことになります。

著者

タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部長

高島 健二

成長戦略におけるビジネスモデルの再構築、事業戦略・経営戦略まで幅広い知見を有する、ゼネラルマネージャー。 戦略ドメイン&ファンクションの専門性を融合した課題解決を支援し、企業変革のプロフェッショナルとして高い評価を得ている。 マーケティングDX・SDGs・新規事業開発の領域など、多岐にわたるクライアントのプロジェクトを手掛ける。

高島 健二

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業66
200業種
17,000社以上
   長期ビジョン・中期経営計画に関する無料相談会開催中!