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製造業が抱える人材課題
製造業が直面する現実
製造業における人材育成は、他業種と比べて構造的な難しさを抱えています。
経済産業省・厚生労働省・文部科学省が共同で発行する「2024年版ものづくり白書」によれば、製造業の就業者数は2002年の約1,202万人から2022年には約1,044万人へと減少し、特に34歳以下の若年就業者は同期間に約125万人減少しています。一方で65歳以上の高齢就業者は増加傾向にあり、現場の担い手の世代交代が急務となっています。
また仕事への価値観変容や転職市場の活性化に伴い、若手人材の定着率も喫緊課題として追い打ちをかけています。
製造業における人材育成の課題
こうした状況の中で、人材育成の現場にも深刻な問題が生じています。同白書では、製造業の事業所の6割以上が「指導する人材が不足している」と回答しており、技能継承を担う指導者自体が不足しているという構造的な課題が浮き彫りになっています。
また、厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」によれば、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は全体で約8割に上ります。製造業では「指導する人材の不足」に加え、「育成に充てる時間の確保」「育成しても早期に離職してしまう」といった課題が重なり合っており、育成の仕組みそのものを見直す必要性が高まっています。
総じて、「人材不足、技能伝承遅れ、教育体系がない」など人材の育成や活躍を促進するための仕組みのアップデートが求められると言えます。

製造業における人材育成の重要性
人材育成が製造業の競争力を左右する理由
製造業における人材育成が重要視される背景には、技能の特性があります。製造現場で求められる技能の多くは、マニュアルだけでは伝えきれない「暗黙知(経験や勘に基づく知識)」を含んでいます。こうした知識は、熟練者が現場で長年かけて習得したものであり、人から人へと計画的に受け渡す仕組みがなければ、退職とともに失われてしまいます。
「2024年版ものづくり白書」では、計画的なOJT(On the Job Training:職場内での実務を通じた教育訓練)やOFF-JT(Off the Job Training:職場外での研修・教育)を実施している事業所の割合が、コロナ禍以前の水準に戻っていないことも指摘されています。育成の機会が失われた期間が長引くほど、技能の断絶リスクは高まります。
さらに、同白書では、デジタル技術を活用している中小企業は、活用していない企業と比べて営業利益が増加している割合が高く、賃上げ実施率も高い傾向が示されています。デジタル化への対応力を持つ人材を育成できるかどうかが、企業の収益力にも直結する時代になっています。人材育成は、コストではなく経営投資として位置づけることが求められています。
人材活躍を促進するためのプラットフォーム整備
人材育成の観点ではOJTやOff-JTのみならず、人材活躍を促進するための仕組み整備が重要です。その一旦を担っているのが人事制度と言えるでしょう。
製造業の場合は入社してから管理職へと成長していくという単線型でのキャリアパスが一般的です。組織運営上、管理職は必要ですが、ポストに限りがあるため、全ての社員が目指す姿としては限界があります。
職人にいたっては固有技術を持っているにも関わらず、技術力・専門力で自らのキャリアパスが描けないケースも散見されます。人材育成においては教育・研修という点に加えて、上記のようなキャリアパスをいかに示していくかが社員の活躍や定着に寄与する大きな要因です。

製造業の人材育成を機能させるためのポイント
製造業における人材育成の実践アプローチ
製造業の人材育成を機能させるためには、以下の三つの視点から体系的に取り組むことが有効です。
① 技能の「見える化」と計画的OJTの設計
暗黙知を形式知(言語化・手順化された知識)に変換し、誰もが参照できる状態にすることが技能継承の第一歩です。スキルマップや育成ロードマップを整備し、誰が・何を・いつまでに習得すべきかを明確にすることで、OJTを属人的な「見て覚える」から計画的な育成へと転換できます。
OJTとOFF-JTの組み合わせによる育成設計
OJTだけでは体系的な知識の習得に限界があります。外部研修や社内勉強会などのOFF-JTと組み合わせることで、理論と実践の両面から人材を育てることができます。厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」では、計画的なOJTを実施した事業所は正社員に対して61.1%に上る一方、OFF-JTとの組み合わせを意識した設計が今後の課題として挙げられています。
③ デジタル人材育成とリスキリングの推進
製造現場のDXが進む中、既存社員がデジタルスキルを習得する「リスキリング(新たな職務に必要なスキルを学び直すこと)」の機会を設けることが重要です。AIやIoTを活用した生産管理・品質管理の知識を段階的に習得できるプログラムを整備することで、現場の生産性向上と人材定着の両立が期待できます。
人材育成を機能させる組織づくりのポイント
人材育成の取り組みが成果につながるかどうかは、育成の「仕組み」だけでなく、それを支える組織の環境整備にかかっています。
能力開発の効果を経営面・人事面の両方で実感している企業は、評価制度の導入や、習得したスキルを実務で発揮するための人事上の措置(配置転換・昇給への反映など)に取り組んでいる割合が高いです。育成した人材が、その能力を発揮できる場と処遇を得られる環境を整えることが、育成効果を高める上で不可欠です。
また、育成担当者(OJTトレーナー)自身のスキルアップも見落とされがちな課題です。指導する側が「何を・どう教えるか」を理解していなければ、育成の質は安定しません。トレーナー向けの研修や評価制度を整備し、育成を組織全体の文化として根付かせることが、持続的な人材育成の基盤となります。

まとめ:製造業の人材育成投資を推奨
記述した通り、製造業はそれぞれにおいて唯一無二の技術力を持ち、それが企業の強みとしてこれまでの成長に寄与してきました。一方で傾向としては設備投資が優先され、育成などの人的投資は後回しになってきた現実があります。
タナベコンサルティングは今の時代における製造業だからこそ人的投資を推進すべきと提唱しています。
具体的な解決策として人事制度再構築や企業内アカデミー(=自社内で技術力等を学ぶ体系的育成システム)の構築が検討されます。これらは人材の育成・活躍を促進するプラットフォームであり、いずれの企業においても導入やアップデートを検討する余地があります。
日本の主力産業である製造業で働く全ての人がいきいきと働ける職場を目指し、今だからこそ人材育成に対する投資を推奨します。
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