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2025.12.25

バリューチェーン分析を戦略に活かす方法

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バリューチェーン分析を戦略に活かす方法

自社が持つ経営資源とケイパビリティを整理することで、自社独自の強みと弱みを分析することができます。バリューチェーン分析やVRIO分析を用いて自社のビジネスプロセスにおいて具体的にどの部分に強みと弱みがあるのか分析・評価しながら戦略を立て競合他社と差別化していくことが有効です。

自社の強みを分析する

(1)企業における強みと弱み

企業における強みと弱みは、経営資源とその経営資源を活用する能力(ケイパビリティ)によって決まります。ジェイ・B・バーニーは著書『企業戦略論―戦略経営と競争優位―』(ダイヤモンド社)で、経営資源とケイパビリティは財務的資源、物的資源、人的資源、組織的資源の4つのカテゴリーに分類できるとしています。同業界・同業種の企業の場合でもこれらの経営資源とケイパビリティは異なるため、自社の競争優位性(企業の強みや弱み)の源泉である経営資源とケイパビリティの整理を行うことで、自社独自の強みや弱みを分析します。

(2)自社の付加価値の分布を確認する

社内会議などで「自社の競争力が低い」「他社よりコストが高い」といった議論をする際、バリューチェーンのフレームワークを用いると、競争優位性に劣る部分はビジネスプロセスの中で具体的にどの部分なのかがわかります(原材料の調達、生産工程、物流、販売、アフターサービス、複数要因によるものか)。
特定のプロセスが非効率であったとき、その部分を社内でいかに効率化するのか、もしくは外部委託をして効率化を図るのか、という議論に発展する場合があります。しかし、その判断をくだす際は、本当にそのプロセスがコアコンピタンス(企業活動の中核となる強み)であるかどうかも検討しなくてはなりません。
また、バリューチェーンを構成する主活動は、業種・業界・企業によっても異なります。バリューチェーン検討の際には、自社が取り扱う事業でのモデル企業のバリューチェーンを参考にすることが有効です。自社と同業種あるいは取引業界の上場企業の公表資料(アニュアルレポート、統合報告書、決算説明会資料、コーポレートサイトなど)を調査し検討することが有効です。

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バリューチェーンのフレームワーク

(3)経営資源の選択と集中により戦略を強化する

自社の経営資源を整理した後、それらを評価するフレームとして、VRIO分析があります。VRIOとは、Value(経済的な価値)、Rareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の頭文字を連ねた言葉で、バーニーが考案したフレームワークです。

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VRIO評価軸

整理した強みの源泉に対し、経営資源の選択と集中による効率改善や人材育成、組織基盤の強化、仕組み化などを行い、さらに強化していくことが競争戦略において重要となります。また、経営資源やケイパビリティが弱く競争優位性が低い場合には、内部における開発や、M&A・アライアンスなどの外部連携も、視野に入れての戦略が必要です。

自社と他社を比較し競争優位性を評価する

(1)競争優位性の評価

経営資源・ケイパビリティの整理と評価をバリューチェーン軸に沿って行うことで、バリューチェーンにおける各機能での競争優位性(強み・弱み)を評価します。これにより、バリューチェーン再構築のポイントを明確にして収益モデルを改革します。例えば、横軸に自社のバリューチェーン、縦軸にVRIO の評価軸を設定します。自社のバリューチェーンの中で強みとなっているポイントを整理し、強みを生み出している経営資源とケイパビリティをVRIO で評価します。4段階で点数化することによって、バリューチェーンで強みを構築している経営資源とケイパビリティの重点強化項目が明確になり、戦略の優先度がつけやすくなります。

自社と他社を比較し競争優位性を評価する

差別化ポイントを強調する

(1)強みを決めて、磨き上げる

これまで、自社の強みと弱みは何か、バリューチェーン分析やVRIO分析における評価について述べてきましたが、その際、特に優位性のある強み(ナンバーワンの強み)、独自性のある強み(オンリーワンの強み)を見出すことがポイントとなります。その強みを明確に定め、マーケットに適応させるために磨き上げ続けることが重要です。
自社のコアバリューを異なる複数の顧客層に展開する企業も存在します。某化粧品A社は、商品開発から販売までのバリューチェーンを、顧客セグメント(=市場)×ブランドセグメント×製品セグメント×販売チャネルの4つの軸で分けています。コンセプト、価格、販売チャネルが異なるブランドポートフォリオを展開し、かつそれぞれのブランドの独立性も担保して展開することによって、顧客の価値観やライフスタイルの多様化に対応し、ブランドコンセプトやブランドイメージを明確に分けています。

(2)強みは顧客に伝わって初めて差別化される

強みも顧客に伝わらなければ意味がありません。伝わって初めて、顧客の価値観が変わり、差別化につながります。自社のサービスで全ての顧客を満足させることはできません。自社のサービスの「強み」に合わせて、ターゲットとなる顧客を絞り込むことが重要です。強みとはサービスの差別化ポイントであり、それは会社の資産で支えられています。競合他社と比べ「どう違いをつくるか」をよく検討しなければなりません。
最終的には「顧客の求めている価値に対して、自社の強みが適合しているかどうか」が、自社が選ばれる理由となります。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
コンサルタント

水戸部 咲

広告・メディア業界にて営業、広告企画運用、経理財務に従事したのち、多角的な視点でクライアントの課題を捉え、事業を前進させる支援をしたいと考え当社へ入社。「提言に留まらず、自走できるまで伴走する」をモットーに、クライアントの視点に立ったコンサルティングを提供している。

水戸部 咲

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