外食産業・食品製造の利益改善|食の現場で見えていない損失はどこにあるのか

コラム 2026.06.02

原価・フードロス・店舗動線・アルバイト教育負荷の盲点

マネジメントDX 生産性向上
外食産業・食品製造の利益改善|食の現場で見えていない損失はどこにあるのか
目次

前回は、値上げだけでは利益が十分に残らない背景に、現場に埋もれた改善余地があることを整理しました。
今回はその続きとして、では、その改善余地はどこにあるのかを一段と具体的に見ていきます。

食の現場で利益を削っているのは、原材料費や人件費といった大きな要因だけではありません。帳票や会議で明確に問題化されていないものの、現場の中で少しずつ利益を削っている損失があります。
本稿では、それを"見えていない損失"として捉え、構造化して整理します。

1. "見えていない損失"が、利益を静かに削っている

見えていない損失とは、数字や感覚のレベルではうすうす認識されていても、改善対象として整理されていない損失のことです。厄介なのは、一つひとつは小さく見えても、複数が重なることで収益に大きく影響する点です。
たとえば、

  • ・原価のズレ
  • ・ロスの見落とし
  • ・動線や工程のムダ
  • ・教育負荷
  • ・属人化

こうした要素が重なると、現場は「なんとなく忙しい」「利益が出にくい」「改善しているのに手応えが薄い」という状態に陥ります。だからこそ、分析や原価管理をするときも、単一テーマではなく構造で見る必要があります。

2. まず押さえたい、見えていない損失の4分類

食の現場で見落とされやすい損失は、主に次の4つに分けて考えると整理しやすくなります。

① 原価の損失

  • ・予定原価が見えていない
  • ・実績原価との差異が不明
  • ・歩留まりや使用量の実態が未反映
  • ・メニュー別採算が見えない

② ロスの損失

  • ・賞味期限切れ
  • ・キャンセルロス
  • ・ポーションミス
  • ・過剰調理
  • ・作り直し
  • ・仕込み過多

③ 動線と工程の損失

  • ・探す
  • ・取りに行く
  • ・待つ
  • ・戻る
  • ・段取り替え
  • ・二重作業

④ 教育負荷と属人化の損失

  • ・教え方のばらつき
  • ・ベテラン依存
  • ・判断集中
  • ・引き継ぎの曖昧さ
  • ・ミス再発
  • ・立ち上がり遅延

この4つは別々に起きているのではなく、重なり合いながら利益を圧迫しています。

3. 原価の損失|数字はあるのに、実態が見えていない

最初に見たいのは原価です。ただし、ここで言う原価は、仕入単価の上昇だけではありません。
問題になりやすいのは、

  • ・予定原価がない
  • ・実績との差異が見えない
  • ・歩留まりの影響が反映されていない
  • ・採算が商品別・メニュー別に見えていない

といった状態です。
数字として原価率を追っていても、「どこで、何が、どれだけ利益を削っているのか」が見えていなければ、改善は進みません。これは外食でも食品製造でも同じです。見えていない原価は、そのまま見えていない損失になります。

4. ロスの損失|"ロスはない"と思っていると、見落とす

次に大きいのがロスです。現場では、「ロスはあまりない」と言われることがあります。ただ、よく聞いてみると、そのときイメージされているロスは、賞味期限切れや廃棄だけだった、というケースが少なくありません。
実際には、ロスにはもっと多くの種類があります。

  • ・キャンセルで無駄になったもの
  • ・注文数以上に作ってしまった過剰調理
  • ・ポーションコントロールミス
  • ・仕込み過多
  • ・作り直し
  • ・機会損失

つまり、本当に怖いのはロスがあること以上に、ロスの定義が狭すぎて全体像が見えていないことです。この視点がないと、コスト削減も、原価改善も、表面的なものになりやすくなります。

5. 動線と工程の損失|"細かいムダ"が現場を疲弊させる

食の現場では、動線や工程の損失も見逃せません。これは特に、業務効率化やオペレーション改善を考えるうえで重要な論点です。
たとえば、

  • ・取りに行く回数が多い
  • ・探す時間が発生している
  • ・配置が悪く、移動が多い
  • ・工程が複雑で、段取り替えが多い
  • ・情報共有のタイミングが遅い

こうした損失は、現場では"細かいこと"として扱われがちですが、積み重なると人時生産性に直結します。特に人手不足の環境では、このムダが慢性的な忙しさを生み、教育や改善の時間まで奪っていきます。

6. 教育負荷と属人化の損失|見えにくいが、確実に利益に影響する

最後に触れておきたいのが、教育負荷と属人化です。これは第2回の主役ではありませんが、他の損失を固定化しやすい論点として見逃せません。

  • ・教える内容が人によって違う
  • ・ベテランしか教えられない
  • ・引き継ぎが感覚的
  • ・一部の人しか判断できない
  • ・データはあるが現場で使われていない

こうした状態では、改善活動は個人依存になりやすくなります。結果として、新人の立ち上がりが遅れ、ミスが再発し、現場が安定しません。人手不足の対策を考えるときも、採用だけではなく、こうした教育負荷や属人化の整理が欠かせません。

7. 事例|宴席や会食・仕出しを行うサービス企業の厨房で見えてきた"想定外のロス"

以前、年商30億円規模の宴席や会食・仕出しを行うサービス企業の厨房原価管理体制の改善に関わったことがあります。この現場でも、最初は「原価管理を強化したい」というテーマで話が始まりました。
実際に見ていくと、確かに原価の可視化は必要でした。ただ、問題は単に原価率が高いことだけではありませんでした。
まず、そもそもの予定原価が見えていない状態がありました。実績原価を見ても、それが適正なのか、どこにズレがあるのかを判断しにくい状態です。これでは、改善の出発点がつくれません。
さらに、当初は「ロスはあまりない」という認識もありました。ただ、そのとき現場がイメージしていたロスは、主に賞味期限切れの廃棄でした。ところが、実際に調査していくと、ロスはそれだけではありませんでした。

  • ・注文が入っていたがキャンセルになったもの
  • ・ポーションコントロールミスで注文数より多く調理していたもの
  • ・想定より多く仕込んでしまったもの
  • ・ロスとして認識されていなかったもの

こうしたロスを一つひとつ見ていくと、思っていた以上の金額ロスが発生していたのです。
ここで重要だったのは、「ロスがあるらしい」という感覚論で終わらせなかったことです。予定原価を見えるようにし、実績とのズレを整理し、ロスの定義を広げ、実態を可視化していく。そうすることで初めて、「どこに利益の改善余地があるのか」が現場と共有できるようになりました。
結果として、この支援では、料理原価率を37%から35%未満へ、ドリンク原価率を30%超から平均25%へ改善していきました。本質は、数字が改善したことそのものではなく、見えていない損失を見えるようにしたことで、改善の打ち手が具体化したことにあります。

8. 損失は単独ではなく、重なっている

ここで大事なのは、損失は単独で存在することが少ないという点です。原価が見えていない会社では、たいていロスも埋もれています。工程が複雑な現場では、教育負荷も高くなりやすい。属人化が強い組織では、数字が改善に使われにくい。
つまり、利益を削っているのは、一つの大きな問題ではなく、複数の小さな損失の重なりであることが多いのです。だからこそ必要なのは、「どの損失があるか」だけではなく、「どの損失が、どの損失とつながっているか」まで見にいくことです。

9. 次回は、収益改善が進む現場の条件を考える

見えていない損失を見つけられたとしても、改善が進む会社と進まない会社があります。その差はどこにあるのでしょうか。
次回は、ウェビナーにもつながるテーマとして、収益改善が進む現場に共通する条件を整理していきます。標準化、見える化、巻き込み。改善が一過性で終わらず、現場に定着していく会社に共通するポイントを考えます。

関連資料
相談会
AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
チーフコンサルタント
松永 大樹

給食業界でプレイングマネジャーとして病院厨房の管理から大規模国際スポーツイベントの運営管理担当と多岐にわたるフードサービスを経験し、当社に入社。「現場・現実・現品」の三現主義を軸に、5Sによる業務改善、デジタルを活用した業務効率化やIT化構想支援を行う。顧客とのコミュニケーションを大切にする伴走型コンサルティングスタイルを信条とする。

松永 大樹
データ利活用ナレッジ

関連記事

ABOUT
TANABE CONSULTING

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、69年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
18,900社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 69
  • 200 業種
  • 18,900 社以上