新規事業を成功に導くためのマーケティング戦略|成長を加速する5つの打ち手と"やってはいけないこと"

コラム 2026.02.10
マーケティングDX 戦略・計画策定 企業成長
新規事業を成功に導くためのマーケティング戦略|成長を加速する5つの打ち手と
目次

1. なぜ今、新規事業の拡大が必要か--背景とこの記事でわかること

現代のビジネス環境において、既存の事業だけでは成長に限界が見え始めています。企業が持続的に社会の要請に応え、競争優位を維持するためには、新規事業の立ち上げとその拡大が欠かせません。その一方、「新たな柱」に育て上げるまでの道のりは決して平坦ではなく、スピーディかつ着実に成長を加速させるには、いくつもの落とし穴を避ける必要があります。経営層や現場、部門をまたいだ連携など、多面的な視点から、「何をすれば事業の成長が加速するのか」「どのような失敗パターンに陥りやすいのか」を丁寧にひもといていきます。

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新規事業開発における成功率
新規事業開発における成功率
※出所:タナベコンサルティング作成

2. VUCA時代に通用する新規事業拡大の考え方

まず押さえておきたいのは、私たちを取り巻く市場が「VUCA」と呼ばれる、不確実かつ複雑な環境にあるという事実です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が同時多発する現状で、過去の経験則や勝ちパターンが必ずしも通用しなくなっています。
こうした時代には、正解を追い求めるよりも、仮説を立てて実行し、都度検証しながら小さな成功や失敗を蓄積していく姿勢が不可欠となります。環境変化への柔軟な対応力が組織に根付かなければ、どんなに有望な事業アイデアも机上の空論に終わってしまうのです。

3. 新規事業の成長を加速する5つの打ち手(MVV・人材育成・対話体制・KPI・アライアンス)

(1)MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の明確化と現場への浸透

新規事業が成長過程で失速しやすい最大の原因は、「なぜこの事業をやるのか」が現場レベルで腹落ちしていないことです。経営陣がビジョンやミッションを打ち出しても、それが現場の日々の意思決定や行動規範とリンクしていなければ、事業の推進力は半減します。真に成長を加速させるためには、単なるスローガンとしてMVVを掲示するのではなく、現場に向けて具体的な言葉に落とし込んだり、日々の会話や朝礼の中で繰り返したりして、社員一人ひとりの「自分ごと化」を図ることが重要です。この浸透の有無が、将来的な壁に直面した際の現場の"粘り強さ"や連携力として表れます。

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ビジョン・方針策定のプロセス
ビジョン・方針策定のプロセス
※出所:タナベコンサルティング作成

(2)組織・人材育成への投資とOJTの仕組み化

新規事業の現場では、特に初期メンバーの力量やモチベーションが事業の命運を大きく左右します。ところが、新しいビジネスモデルや業界特有の知識が必要とされる場面では、既存社員の経験だけでは対応しきれないことも多々あります。ここで大切なのは、OJT(On-the-Job Training)を仕組みとして設計し、ベテランと若手が常に知見を共有し合える状態を作ることです。例えば、プロジェクトごとに進捗レビューを義務化し、必ず新人や異動者にも発言の機会を持たせます。こうした積み重ねが、組織内の「暗黙知」を可視化し、個々人のスキルやナレッジの底上げにつながります。また、評価制度にもOJT活動を組み込むことで、育成行動が形骸化することを防げます。

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新規事業開発に伴う人材育成上のポイント(一部抜粋)
新規事業開発に伴う人材育成上のポイント(一部抜粋)
※出所:タナベコンサルティング作成

(3)経営層と現場のギャップを埋める「双方向の対話体制」

新規事業において最も危険なのは、経営層からのトップダウンの指示が現場に伝わらず、現場の疑問や課題が吸い上げられないという「意思疎通の断絶」です。それを避けるためには、現場から上層への提案や"気づき"を積極的に汲み取る仕組みを設けることが不可欠です。定例のフィードバック会、現場の声を吸い上げるアンケート、現場出身者を経営会議に参加させるといった工夫によって、経営の目線と現場のリアリティを常にすり合わせていくのです。こうした仕組みを通じて方針転換の柔軟性が担保され、"走りながら作る"進化型の事業開発が実現します。

(4)KPIの徹底運用と仮説検証サイクルの高速化

新規事業の成長加速には「手触り感のあるKPI(重要業績評価指標)」の設計と運用が必須です。予算管理や売上だけをKPIに据えてしまうと、達成困難な数値目標に現場が疲弊しがちです。そこで、営業件数や顧客接点数、パイロットプロジェクトの成功例や検証数など、現場で"コントロール可能"な行動系KPIを設定し、日々の進捗を追いかけることが大切です。そして、KPIの達成状況を基に、「どの仮説が的中し、どこが外れているのか」を小刻みに検証し、必要に応じて素早く軌道修正することで、無駄なコストを抑えつつ有効策を見出せるようになります。

(5)アライアンスやネットワークを活かす「仲間づくり志向」

新規事業の推進や成長には、自社だけで成果を狙うのではなく、積極的に外部パートナーや業界横断のネットワークを組成し、知見やリソースを共有する"仲間づくり"の姿勢が不可欠です。スピード感のある市場開拓や技術進化への対応は、社内資源だけでは限界があるため、業界団体、大学、ベンチャー企業や取引先との共創関係を構築し、「自社の強み」と「外部の力」を掛け合わせた成長加速を目指しましょう。

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自社のリソースの考え方
自社のリソースの考え方
※出所:タナベコンサルティング作成

4. 新規事業拡大で絶対に避けたい失敗と対策

(1)「過去の成功モデル」の形だけを真似る

多くの新規事業担当者が陥りがちなのが、「成功した事例のノウハウ」や「親会社の成功パターン」を、現場へのヒアリングや実証を経ずにコピーしてしまうパターンです。しかし事業環境や顧客、構成メンバーはそれぞれ異なり、表面的な模倣では真の成長は期待できません。求められるのは、自社独自の強みや価値提供の源泉を見極め、ゼロベースで戦略を設計することです。

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事業性を評価する際のチェックリスト(一部抜粋・例)
事業性を評価する際のチェックリスト(一部抜粋・例)
※出所:タナベコンサルティング作成

(2)失敗を過度に恐れて"守り"に入る

新規事業はトライ&エラーが醍醐味です。ところが、初期の小さな失敗で叱責や減点評価が強調される企業風土では、担当者がチャレンジを避けるようになり、ビジネスの成長余地が大きく損なわれます。「失敗は成長の一部」と捉え、仮説検証と改善を高速で繰り返せるカルチャーづくりに経営層が積極的に関与することが何より重要です。

(3)「数字だけのKPI」や現場が動けない目標設定

KPIを設ける際、売上や利益といった最終成果だけを重視すると、達成困難な目標に現場が翻弄されてしまうことが多々あります。「具体的に誰が、どんな行動で、数値達成に近づけるのか」を細かく設計し、"現場が動けば成果もついてくる"ような現実的KPIに落とし込むことを忘れてはなりません。

(4)他部門との断絶・サイロ体質の放置

新規事業推進プロジェクトが既存部門や他領域から孤立し、コミュニケーションやナレッジ共有が不足すると、シナジーが生まれないどころか、短期的な事業撤退につながる恐れすらあります。部門横断的なMTGや成果発表、ワーキンググループの設置などを通して、内外の知見を積極的に"混ぜる"ことが成長の後押しになります。

(5)「現場任せの自己責任論」または「経営陣だけのトップダウン」

極端に現場任せにしたり、逆に経営陣だけが独断で意思決定を重ねることはどちらも危険です。新規事業の軸や目標は共有しつつ、現場リーダーには一定の裁量を与えて"自律的な現場運営"を促進します。方針や狙いを丁寧にすり合わせつつ、日々の意思決定は現場のリアリティ重視で進めることが大切です。

5. 事例で学ぶ:新規事業拡大の成功条件

例えば、ある企業ではOJTが形骸化し、日々の業務の属人化が進むことでナレッジの蓄積・継承がうまくいかず、事業成長が頭打ちになったという実例があります。その一方で、「現場起点の仮説検証サイクル」を高速で回し続けた企業では、立ち上げ当初のつまずきを乗り越えて、本業の新たな成長ドライバーを創り出しています。部門横断の活動や外部知見の積極的導入により、「自社だけでは到達できなかった新規顧客層の開拓」や「組織全体の学びの共有」にも成功しています。

6. おわりに

新規事業の拡大を"第二のエンジン"として本格始動させるためには、従来型の手法・成功体験への依存を捨て、変化を味方につけた進化志向の組織づくりが肝要です。現場へのMVVの浸透、双方向コミュニケーション、現実的KPI設計、学びを重ねながらの成長基盤の強化――これらを複合的に進めることこそ、事業成長の最大加速策であると知っておきましょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
チーフマネジャー
國末 悠太

「いかなる時もクライアントと共に」をモットーに、クライアントに寄り添ったコンサルティングを展開。「戦略構築(川上)×マーケティングDX(川中・川下)」を得意としており、体系的な経営支援を実施。クライアントの成長をサポートすることが地域社会に貢献するという考えのもと、使命感を持って活動中。

國末 悠太
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