デジタルマーケティングの潮流とは
- 奥村:
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本日はTCG(タナベコンサルティンググループ)の一員であるリーディング・ソリューションの中田社長に、デジタルマーケティングの潮流や企業が抱えるデジタルマーケティングの課題、そしてリーディング・ソリューションが提供するデジタルマーケティングソリューションについてお伺いします。中田社長、よろしくお願いします。
- 中田:
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よろしくお願いします。
- 奥村:
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早速、デジタルマーケティングの潮流についてお伺いしますが、まずは簡単にリーディング・ソリューションのご紹介をお願いします。
- 中田:
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私たちリーディング・ソリューションは、BtoB企業に特化したデジタルマーケティングの支援業務を行っております。私たちの特徴は、戦略から計画づくり、施策実行、効果測定、改善まで、デジタルマーケティングのすべての流れを一括して請け負うことにより、短期間でデジタルマーケティングを立ち上げて成果を出すこと。そこを得意としている会社です。
- 奥村:
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ありがとうございます。デジタルマーケティングはなかなか成果が出にくいものですが、リーディング・ソリューションの場合は一貫してサポートしてもらえるわけですね。
それでは、潮流についてお伺いしていきたいと思います。デジタルマーケティング市場において、リーディング・ソリューションがサービスを提供されているのはBtoBの領域だと思います。最近特に、デジタルマーケティングの取り組みが活発化していることを肌で感じていますが、デジタルマーケティング市場は今、どのようなトレンドが顕在化しているのでしょうか。
- 中田:
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感じておられる通り、コロナ禍をきっかけに多くの企業が「デジタルマーケティングをやらなきゃいけない」と考えるようになりました。さらに、「やるか、やらないか」を通り越して「どれだけやるのか」という考え方へと少しずつ変わってきています。そこが大きな変化として挙げられますが、中でも最近の傾向として見えてくるのが、目標の変化です。
以前は、「デジタルマーケティングによって露出がどれだけ増えたのか」に高い関心が寄せられていました。デジタルマーケティングを推進している企業であっても、「問い合わせがどれだけ取れたか」を気にされるところが大半でした。つまり、広告の代替施策として捉えられていましたが、ここ最近は「受注にどれだけつながったか」とか、経営戦略の一環としてデジタルマーケティングを見たときに「デジタルマーケティングを使ってどれだけ事業インパクトを出していくか」といったところに多くの企業の関心が移ってきています。これは大きなトレンドとして挙げられると思います。
- 奥村:
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なるほど。事業インパクトを重視するのであれば、求められているKPIやKGIそのものもガラッと変わってきていると言えるのでしょうか。
- 中田:
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そうですね。5年ぐらい前は、問い合わせ件数や資料のダウンロード数、あるいは見込み客の開拓数といったものがメーンの指標でした。デジタルマーケティングに掛けた費用に対してそれらの数字がどれくらい取れているのかが指標になっていましたが、ここ最近は受注額や受注企業の規模、あるいは取引規模やライフタイムバリューがどのくらい見込めるのかなどを見ながらマーケティング活動を評価していくケースが増えています。
- 奥村:
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ありがとうございます。すでにデジタルマーケティングは、標準実装すべき経営技術になっていると言えますね。
企業が抱えるデジタルマーケティングの悩みと本質的課題
- 奥村:
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次に、企業が抱えるデジタルマーケティングの悩みと本質的な課題についてお伺いしていきます。まずは、デジタル投資という切り口についてですが、デジタルマーケティングと言ってもその手法は多岐にわたっており、どこまでやるかによって投資額は大きく変わります。企業が陥りやすいデジタル投資の落とし穴についてはどのようにお考えでしょうか。
- 中田:
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デジタル投資と言ったとき、多くの企業が考えるのがインフラ面の投資です。例えば、「ウェブサイトをリニューアルしよう」「マーケティングオートメーションを導入しよう」「SFA(営業支援ツール)と連携しよう」といったように、インフラ面の投資やデータマネジメントの仕組みに投資をするケースが一番多いですね。加えて、もう1つ多い投資は、「広告をたくさん打とう」など、施策に対する投資です。
この2つの投資額が大きいわけですが、そこに投資をしてちゃんとリターンを得るには、仕組みを回せるしっかりとした組織が必須です。そうでないと、インフラ投資しても上手く使いこなせません。見当違いの広告を打ってしまったり、せっかく来た問い合わせが営業に上手くつながらなかったり。そうした結果にならないように、本来は組織をつくるところにちゃんと投資をすべきです。そうした部分への投資と併せて、インフラや施策に分散的に投資することが必要だと思っています。
よくある落とし穴としては、わかりやすいデジタル施策やデジタルツールの導入に目を奪われてしまい、「自社ではデジタルマーケティングをどう使うのか」が曖昧なまま仕組みだけを作ってしまうこと。そういった投資が多いところが落とし穴だと思います。
デジタル・事業の両面に精通した人材が必須
- 奥村:
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(デジタル施策やツールを導入するだけでは)インフラやツールを使える限られた人にスキルが偏ってしまったり、デジタルマーケティングで得た問い合わせをどう営業にパスするのかといった問題が出てきたりします。
そういった問題を放置した状態で、なかなか本来のゴールにつながらない結果が重なるうちに、「うち会社にはデジタルマーケティングは馴染まない」という話になってしまうことも実際にあるのではないでしょうか。
- 中田:
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そうですね。BtoB企業における人の問題や、デジタルマーケティングにおける人の問題はかなり大きいと思います。そもそも営業活動で事業を成り立たせてきたのがBtoB企業の姿ですから、そうした組織においてデジタルを使いこなし、かつマーケティングも分かる人があまりいない現状があります。
最近は、BtoC出身のマーケティング経験者を採用して上手く回していこうという取り組みも見受けられますが、BtoBの場合は事業をちゃんと理解していることが何より重要です。商品や事業、商流がちゃんと分かっていないと、マーケティングをしたところでなかなか成果につながりません。加えて、独自の営業プロセスがあるためなおさら難しいのです。
人の問題として、デジタルが分かっており、かつ事業もよく分かっている人材がいるか。さらに、その両方を分かっている人がデジタルマーケティングを推進するのが理想の姿ですが、経営の人材配置の観点から見た際に、そういった貴重な人材をなかなかデジタルマーケティングに配置できないという問題があります。このため、事業のことも理解してくれる事業者をパートナーとして上手くお付き合いしていくなど、一部は外部を頼ってみることも必要なのかなと思います。
- 奥村:
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事業も分かってデジタルも分かっている人材こそ、経営にも必要な人材だったりします。ですから、経営資源をバランス良く配分ができないことに悩まれている企業も多いと思います。
課題を整理すると、投資の領域においてはシステム最適、あるいは施策最適に陥ってしまっていることが課題として挙げられます。結局、デジタルマーケティングが戦略と紐付いていないことや、組織内でどう回すのかという体制と紐付いていないことが、非常に大きな落とし穴になると言えます。もう1つ、人の観点では、特にBtoBのデジタルマーケティング領域においては事業がわかることが重要なエッセンスになるということですね。
社内を動かせる人材をリーダーに
- 奥村:
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DXを推進する際、必ず直面するのは人の問題です。どんな人を育てるか、また採用すれば良いのかといった相談をよく受けますが、社内でデジタルマーケティングを日常的に推進していくに当たって人の課題はどのようなところにあるのでしょうか。
- 中田:
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デジタルマーケティングを推進していくに当たって、一番大きな壁になるのは社内を動かせるかどうかです。マーケティングというのは、突き詰めるとコンテンツづくりに集約していきます。
要は、コンテンツをつくって人に見せること。そうした観点から言うと、社内でコンテンツを集めたり、つくったものに対してちゃんとフィードバックしながらモチベーションを保ったり、社内の協力体制をつくっていくような働きをできる人材がいるかどうかは大きなポイントになります。つまり、デジタルマーケティングをBtoB企業で推進する際、成否を分ける一番の要因は推進リーダーが社内を動かせるかどうかという部分になります。ですから、デジタルの知識は置いておいて、社内を動かせる人材をトップに据えることが一番大事なのではないかと思います。
- 奥村:
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なるほど。そこは盲点になりやすい部分です。どうしても、「DX人材を育成したい」「デジタル化を進めたい」という話になりがちですが、結局のところは目的に即して組織を動かせるかどうかがポイントなるのですね。ここまでのお話で投資と人の課題感について整理ができました。
そのような課題に対して、中田社長がお考えになるデジタルマーケティング推進のポイントはありますか。また、クリアしなければいけない本質的な課題に対するアドバイスをお聞かせください。
- 中田:
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やはり最終的には組織をどうつくるかというところに集約されるため、組織をつくるための戦略があるのかがポイントになります。そもそも戦略がないと組織をつくれませんし、機能しません。戦略をつくって、それがきっちりと戦術に落とし込まれ、組織が機能して施策が実行される流れが重要です。軸となる戦略がないのに組織ありきの考え方で組織をつくってもダメですし、インフラありきでつくってもダメ。戦略をちゃんとつくり、すべてが一貫して実行される状態をつくることが非常に大事だと思います。その意味では、戦略をつくって、きちんと成果フォースにつなげるところまで考えると、BtoB企業の場合はリードタイムが1年から3年ぐらいかかることもあります。
- 奥村:
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長いですね。
- 中田:
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実際に何らかの問い合わせを受けたところから受注が決まるまでや、コンテンツをつくり始めてからそれが事業に影響するまでの期間を考えると年単位の話になってきます。その期間をしっかりと待ちながら、戦略を持って「1年目は○○までやる」「2年目は△△までやる」というふうに決めながら、確実に戦略を実現していくことが大事だと思います。
- 奥村:
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体制の前に、やはり戦略が重要ということですね。「戦略のミスは戦術でカバーできない」とタナベコンサルティングでもよく申し上げます。リーディング・ソリューションの場合は大企業から中堅企業まで本当に幅広い業種・業態のお客さまとお付き合いがありますが、企業規模や業種にかかわらず戦略のミスがある事例を経験されているわけですね。
- 中田:
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そうですね。戦略がないケースは多いですね。戦術だけある、あるいは施策だけある、組織、インフラだけあるなど。1つの部分にだけフォーカスしているケースは多いですね。
LSが提供するデジタルマーケティングソリューション
- 奥村:
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最後に、リーディング・ソリューションが提供するデジタルマーケティングソリューションについてお伺いしたいと思います。タナベコンサルティンググループとの連携によるマーケティング戦略の再構築や、そこからマーケティングの実装までをカバーするBtoB企業に向けた営業のデジタルシフトコンサルティングというサービスがありますが、それらのポイントを簡単に解説いただけますか。
- 中田:
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これまでBtoB企業のデジタルマーケティング支援についてお話する中でさまざまな課題を挙げたように、デジタルマーケティングを推進する上で、BtoB企業が直面する壁がいくつか存在します。戦略がない、組織がない、あるいはインフラだけある、などです。
デジタルシフトコンサルティングは、そうした問題を1回でクリアできるような戦略をつくり、戦術をつくり、組織をつくり、施策実行するものです。PDCAを回しながら成果が出るところまで一貫して支援するかたちで、約1年という短期間で一気に立ち上げるサービスになっています。
通常ならば、戦略はA社に頼み、施策や広告はB社に依頼しなければならないところを、弊社が一貫してすべてを請け負うことで、確実に課題を超えられるデジタルマーケティングの体制づくりを支援するサービスです。
- 奥村:
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私どももいくつか支援させていただいていますが、1年間あれば社内に仕組みが浸透してきますし、外部のパートナーに任せて良い領域もクリアになってきます。
デジタルマーケティング3領域でサービス強化を目指す
- 奥村:
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今後の展望についてですが、リーディング・ソリューションにおいて伸びているサービスや、今後開発していきたい領域、あるいはサポートを広げていきたいドメインなどがあればご紹介いただけますでしょうか。
- 中田:
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デジタルマーケティングの範疇は大きく3つに分けられます。1つは一般的な取引をつくるためのデジタルマーケティング。これは多くの企業で導入されているものであり、ウェブサイトに集客し、そこで集めた問い合わせを営業につなげていくかたちです。途中でマーケティングオートメーションというツールを使ったり、インサイドセールスのチームが電話で対応したりするなど、デジタルと営業を上手くつなげてスムーズに受注まで流す仕組み。現在、最も多く実施されているデジタルマーケティングであり、もちろん弊社でもそうした支援を行っております。
一方、今後注力していきたい分野としては、大口の顧客にフォーカスし、営業部門とマーケティング部門が一緒に顧客の攻略を行う仕組みづくりです。例えば、攻略する会社を決め、攻略するためのシナリオを営業部門とマーケティング部門で一緒に考えていく。さらに、マーケティングの中でも、デジタルを使った方が良い領域はデジタルマーケティングが担当し、人が動いた方が良いところは営業部門に任せるなど、一緒に(大口顧客1社1社に対する最適なマーケティング施策を)考えてアプローチする「アカウント・ベースド・マーケティング」と言われるカテゴリーがあります。この部分が2つ目です。
3つ目は、小口取引や遠隔地取引です。押さえきれていない小口や遠隔地の受注を全部取りに行く、あるいはつくっていく「ECマーケティング」というものがありますが、この辺りに関して言えばBtoB企業はまだほとんど取り組んでいません。弊社はECマーケティングの領域にすでに取り組んでおり、今後はさらに力を入れたいと思っています。通常のデジタルマーケティングはもちろん、大口取引の開拓、小口・遠隔地開拓といった領域のサービス提供もすでにスタートしているため、その辺りの支援も広げていきたいと考えています。
- 奥村:
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ありがとうございます。デジタルツールを使い始めたというレベルも含めると、デジタルマーケティングに取り組むBtoB企業は増えています。
ただ、さまざまなサービスがある中で「どのような企業がアカウント・ベースド・マーケティングに即しているのか」、あるいは「自社のECマーケティングの成功確率がどのぐらいあるのか」を知りたい企業もあると思います。現状のレベルや適性を判定していただくことは可能なのでしょうか。
- 中田:
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商材特性によって、先述したデジタルマーケティングの3パターンの中でどの方法が良いかは決まってくると思います。ある程度は商材の特性と商流で判断できますが、さらにターゲット数が明確になれば概ねどの手法が合うかが分かると思います。
- 奥村:
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ありがとうございます。本日はリーディング・ソリューションの中田社長にデジタルマーケティングの潮流と企業が抱える課題、そしてデジタルマーケティングソリューションについて伺いました。中田社長、本日は誠にありがとうございました。
- 中田:
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ありがとうございました。
BtoBデジタルマーケティングの専門ノウハウと豊富な経験をもとに、クライアント企業の成長・発展に貢献していきたいと考えています。