COLUMN

2025.11.20

事業ポートフォリオの作成手順と活用のポイントを解説

目次

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事業ポートフォリオの作成手順と活用のポイントを解説

【結論】
「事業ポートフォリオ」という言葉を聞く機会は増えたが、自社に置き換えた場合にどう作成・活用すればよいのかわからない。今更聞くに聞けない常識となりつつある事業ポートフォリオについて、作成手順と活用のポイントをご紹介。

事業ポートフォリオの基本理解

事業ポートフォリオの背景

グローバル化の進展やデジタル革命など経営環境が激変する昨今、既存事業だけでの経営目標の達成が難しくなりました。また、ESGや働き方改革などの対応に迫られたことで既存事業の収益低下を招いた企業も多く、今ビジネスモデル転換の足掛かりとしての事業ポートフォリオへの関心が高まっています。

事業ポートフォリオの目的

自社の経営資源やコアコンピタンス、市場の成長性やリスク、社会的価値などを踏まえ複数の事業を分解し組み合わせることで、新たな付加価値を創造したり相乗効果による成長戦略を模索したりすることが事業ポートフォリオ作成の目的です。
各事業の収益性や成長リスクを可視化することによって、経営判断の迅速化や精度の向上、将来をかたちづくる成長事業を見極め戦略的に資源を集中させることで、自社の未来を自ら意思をもって創造します。

事業ポートフォリオの基本理解

事業ポートフォリオ作成のメリットと注意点

事業ポートフォリオ作成のメリット

事業ポートフォリオのご相談で、よくある課題は大きく2つです。
1つめは、個々の事業戦略はあるものの部分最適で終わっており、全社視点で検討された戦略がないこと。
2つめは、過去の延長で事業運営がなされているため、価値の毀損した事業に経営資源が滞留しており、成長分野に再分配なされないことです。
これらの課題を解決し企業価値を最大化するためにも、ポートフォリオによる事業状況の可視化、ポートフォリオ組み換えによる将来の企業価値の目標設定とシミュレーションが有効です。また、最終的には事業ポートフォリオの基本方針・見直し基準の設計ができることが、ポートフォリオ作成のメリットといえます。

事業ポートフォリオ作成時の注意点

「事業性評価」と「財務効率評価」を行ないますが、その中でも事業性評価については何点かの注意点があります。
1点目は、詳細な分析が必要になることです。
同一地域で同一商品・サービスを同一顧客に提供する場合、他社との違いが生まれにくい同質(コモディティ)化が起こり、より詳細な分析が必要となります。具体的には、主要顧客のインストアシェアの算出や市場がもつリスク(政治的・経済的・社会的)を把握するためのPEST分析などです。
また、2点目は、数値を導く定義づけが難しいことです。
具体的には、「マーケットの魅力度(市場規模)」を算出する際の市場領域の定義や、成長性や投資額算出の根拠や定義が挙げられます。
どこまでを算入するかによって結果が大きく変わるため、将来の見直しの際にも活かせるよう算出数字の根拠や定義は明確にしておくことが重要です。

事業ポートフォリオ作成のメリットと注意点

事業ポートフォリオ作成の手順

事業ポートフォリオは自社が展開している事業の一つ一つの現状を整理し、今後の戦略の方向性を決める際に非常に便利なフレームワークです。ここではその手順を説明します。

事業性評価(市場価値評価)

事業性評価として、市場の魅力度(=機会)と自社の競争力(=強み)の掛け合わせで事業を分析します。市場の魅力度としては「市場規模」「市場の成長性」「市場の安定度」「自社商品・サービスの横広がりの可能性」「ライバルとの競合度」などを加味します。
自社の競争力については、「粗利益率(限界利益率)」「技術・開発力」「営業・ブランド力」「固有技術強化に必要な開発投資額」「今後の設備・人材投資の必要額」などを根拠に分析します。
上記2軸による事実の分析で、既存事業の現状が「有望領域」「強化領域」「残り福領域」「死に体領域」のいずれにあるかを把握し、将来のあるべき姿を検討します。

有望領域

市場成長が期待でき、かつその市場で自社が強い競争力を発揮できている事業です。市場シェアや自社の強みを維持継続する施策が効果的です。

強化領域

市場自体には魅力があるものの、自社の強みが活かされていない状況にあります。市場ニーズに応えるために、鍛えるべき弱みの発掘も含めて競争力の高め方を研究する必要があります。

残り福領域

市場の成長や収益性に陰りがあるものの、他社の撤退により上位のポジションで事業運営がなされている領域です。過度な設備や人材投資なしに全社における貢献度を考えた上での事業継続を検討する領域です。

死に体領域

市場の魅力度・自社の競争力ともに低いため、競争力を高めて残り福領域へのシフトを考えるか、撤退してより魅力のある市場に資源を投入するかを考えるべき領域です。

財務効率評価(経済価値評価)

財務効率評価については「売上成長性」と「資本効率」の2軸で分析します。いわゆる投資判断の根拠となるもので、売上成長性からは事業拡大・撤退判断の軸となる事業の成長度合いを、資本効率からは事業の費用対効果を測ります。ここでは特に重要な資本効率を図る3指標を紹介します。

ROIC(投下資本利益率)

Return on Invested Capitalの略称。事業用資産・負債から創出された事業利益を図る指標

ROE(株主資本利益率)

Return on Equityの略称。株主資本に対しての資本効率を測る指標

ROA(総資本利益率)

Return on Assetの略称。総資本に対しての資本効率を測る指標

これらの指標を用いて既存事業が「投資領域」「成長領域」「再成長領域」「撤退領域」のどこに該当し、今後どの領域を目指すかを検討し、ストーリーとして整理します。

事業性評価(市場価値評価)と財務効率評価(経済価値評価)

また、上記図のように、自社の事業を4象限に分けることで、既存の事業で注力すべきところ・見直すべきところを把握することができるとともに、自社が新たに取り組む事業の方向性が見えてきます。

経営戦略における事業ポートフォリオの活用

ポートフォリオの評価は定期的に見直すことが重要です。これは、既存事業の市場の魅力や自社の競争力が、新分野からのライバルの参入やDX・新技術の台頭により急変する可能性があるためで、中期ビジョンや中期経営計画策定のタイミングで見直されることが一般的です。

強化領域にある事業をいかに有望領域まで成長させるか。残り福領域から有望領域に成長させるためにエリアを絞る戦略は妥当か。死に体領域の事業をいかに撤退するか。

既存事業に隣接する分野への参入、新たなチャネルの開拓や自社内機能の外注化、既存事業とのシナジー効果の高いM&A等、選択肢は多岐に渡ります。市場動向にあわせて事業ポートフォリオを最適化し、タイムリーに戦略をアップデートして参りましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
チーフマネジャー

影本 陽一

営業マネージャーの経験を生かした営業戦略立案、目標達成マネジメント支援など、「目標達成が当たり前のチームづくり」を得意とする。 その他、マーケティング支援や中長期ビジョン構築をはじめ、ブランディング活動による組織の活性化、人事制度の構築、「元に戻らない教育制度」の構築と実施、実施後のフォローアップを手掛けている。

影本 陽一

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