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2025.10.07

海外進出を成功させるためのパートナーの選び方

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海外進出を成功させるためのパートナーの選び方

日本の中堅・中小企業にとって、国内市場の縮小が進むなか、海外市場の開拓は将来の成長を見据えた不可避の選択肢となっています。アジアや欧米を中心に広がる旺盛な需要、技術力を求める現地企業の存在、そしてデジタル化による距離の壁の低下など、海外市場に進出するための環境は整いつつある一方で、自社単独での進出は多くのリスクと負担を伴います。そのような状況下で、ターゲットとする海外市場における現地パートナーとの提携は、有効かつ現実的な手段として注目されています。そこで本稿では、海外進出を成功させるためのパートナーを選ぶプロセスについて説明いたします。

パートナーの選定の意義と注意点

ここでいう「パートナー」とは、現地での販路を担う代理店、共同開発を行う技術提携先、あるいはライセンス契約によって自社製品を展開する企業など、多岐にわたります。共通するのは、現地市場に対する理解とネットワークを持ち、進出企業が最初からすべてを抱え込むことなく、スピーディかつ低リスクで展開を始められるという点になります。
特に言語、商習慣、制度などが異なる国・地域では、パートナーの存在が極めて大きな意味を持ちます。現地の規制に対応し、販促活動を柔軟に実行できるのは、パートナーならではの強みです。日本の中堅・中小企業にとっては、人的資源も限られるなかで、現地との接点を築くための「橋渡し役」として、信頼できるパートナーの存在は非常に重要な価値がある存在です。
ただし、海外パートナーとの提携にはメリットだけでなく注意点もあります。パートナー企業はあくまで独立した第三者であり、自社の子会社ではないため、必ずしも自社の意向どおりに行動してくれるとは限りません。販売方針やブランディング、顧客対応などにおいて、自社の期待と異なる対応がなされる場合もあります。また、業績の可視化や活動の進捗確認が難しいことも多く、十分な管理や情報共有の仕組みを構築しておくことが重要となります。契約面での取り決めだけでなく、定期的な対話や関係構築を通じて信頼関係を強化し、協業の質を高めていく必要があります。

パートナーの選定の意義と注意点

パートナー選定のポイント

日本企業が海外パートナーを選定する際に最も重視すべき点は、パートナー企業が、自社がターゲットとするエンドユーザーとの強固なネットワークを持っていることです。どれほど製品力があっても、現地市場で販売実績や顧客基盤がなければ、販路開拓は困難となります。さらに、現地市場特有のニーズ、購買プロセス、価格感度などを深く理解している企業であれば、自社製品の訴求ポイントや販売戦略の立案にも大きく貢献します。そのため、パートナーの選定では「誰に、どのように販売できる力を持っているか」を慎重に見極めることが成功の鍵になります。
また「相手企業の信頼性」と「自社との相互補完性」を見極めることも重要です。企業の規模や財務状況、過去の取引実績、現地での評判などを多角的に調査し、信頼できる相手かどうかを確認する必要があります。その上で、自社の製品・技術・サービスと相手企業の販売力やネットワークが相互に補完し合うかを見極めます。
そして、財産や販売条件、役割分担言語や文化、商習慣の違いを理解し、誤解や摩擦を避けるためにも、双方の期待値を明確に共有し、段階的に信頼関係を構築する姿勢が重要です。加えて、契約面では知的財産権について明確に取り決めることで、後のトラブルを回避することができます。慎重かつ戦略的な対応が成功の分かれ目となることでしょう。

パートナーサーチのプロセス

それではパートナーを探す具体的なプロセスについて、タナベコンサルティングが提供するパートナーサーチのプロセスに従って説明いたします。またこのプロセスを図で示した図表1も合わせて参照ください。

パートナーの条件設定

まず、自社にとって望ましいパートナー像を明確にします。対象国・地域、企業規模、業種、販売チャネル、技術力、顧客基盤などを具体的に定めることで、以降の候補選定の精度を高め、効率的な調査活動につなげることができます。

ロングリストの作成

条件設定をもとに、該当する企業をリストアップします。公開データベース、業界団体、展示会情報、紹介ネットワークなどを活用し、対象企業を幅広く抽出します。通常、数十社程の「ロングリスト」を作成します。

優先順位の設定

ロングリストに基づき、各企業の情報を収集・分析し、関心度・実力・親和性などを基準に優先順位を設定します。「大変興味あり」「興味あり」「興味なし」などに分類することで、効果的なアプローチが可能となります。

コンタクトの準備

パートナー候補にアプローチする前に、自社紹介資料(会社概要、製品情報、強み、提携目的など)を英語または現地語で準備します。簡潔でわかりやすい資料を用意することで、相手の関心を引きやすくなります。

コンタクト

優先順位に従って候補企業にメールや電話で連絡を取り、自社の事業や提携の意図を伝えます。相手の関心や反応を確認しながら、初回ミーティングの設定や情報交換へと丁寧かつ迅速に進めていきます。

初回Webミーティング

関心を示した候補企業とオンラインで初回の打ち合わせを実施。お互いの事業概要や期待する連携内容を確認し、文化的な相性や意思疎通のしやすさも含めて評価します。ここでの印象が今後の進展を左右することになります。

対面ミーティング

関係が前向きに進展した場合、現地での訪問または展示会等を通じた対面ミーティングを行います。製品の実物提示や経営陣との直接対話により、信頼関係の構築や具体的な協議が進められるため、最終判断の重要なステップとなります。
特に「初回Webミーティング」と「対面ミーティング」で強調したいのは、現地で長年事業を展開しているパートナー候補とのオンラインまたは対面での面談を通じて、現地市場に関する貴重な情報を直接得られるという点です。例えば、市場のトレンドやニーズ、競合状況、さらに自社製品が受け入れられる可能性についても、具体的に質問できるようになります。このように現地企業から得られるリアルな情報は、今後の市場戦略を立案するうえで大きな価値を持つため、ぜひ積極的に活用することを推奨します。
上で説明した各プロセスは、自社でも対応可能なものではありますが、現地事情や業界構造に精通したコンサルティング会社に依頼することで、より精度の高いパートナーサーチが可能となります。専門家は現地ネットワークや独自の情報源を活用し、信頼性や適合性の高い企業を効率的に抽出でき、商習慣や交渉の進め方への理解も深く、ミスコミュニケーションや無駄な接触を減らしながら、効果的なマッチングを実現できる点が大きな利点です。

図表1 タナベコンサルティングの海外代理店開拓プロセス

タナベコンサルティングの海外代理店開拓プロセス

出所:タナベコンサルティング作成

パートナー選定の際の重要なポイントを端的に3つにまとめると下記の通りとなります。

パートナー選定の重要ポイント

  1. パートナー企業が自社のターゲットとなるエンドユーザーと強いつながりを持っているか。
  2. 信頼できるかどうか、そして自社の弱みを補ってくれる存在かどうか。
  3. 文化や条件の違いを理解し、事前に期待値をすり合わせること。

パートナーサーチのプロセス

まとめ

海外市場への進出において、信頼できるパートナー選定は成功の鍵を握ります。自社に合った条件設定から候補企業の調査、段階的な関係構築まで、慎重かつ戦略的なアプローチが求められます。特に、エンドユーザーとのネットワークや市場理解の深さは重要な判断基準です。また、社内リソースが限られる場合は、専門コンサルタントの支援を活用することで、精度の高いパートナーサーチが可能となります。信頼関係の構築を大切にし、持続可能なビジネス展開につなげていくことが重要となります。

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