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近年、「温暖化」・「気候変動」の影響は顕著になってきており、食品業界を支える重要な「原料」に対して大きな影響を与えています。食品企業においては、この要素を踏まえた中長期ビジョン策定が必須であり、10年~30年先の原料環境を踏まえた、長期的施策を中期経営計画に組み込むことが求められます。
つまり、自社の「持続可能性」を高める具体的対策・アクションプランを掲げ、実行していくことが必須であると言えるのです。
「持続可能性」を踏まえた食品企業の動向
(1)「温暖化」・「気候変動」による顕在化されたインパクト
近年、「温暖化」・「気候変動」という言葉を聞くことは多くなり、その影響を実感することが多くなってきています。平均気温の上昇や線状降水帯の発生等が起こった結果、農産物・水産資源の北限上昇・産地+原料品種の変化が起こっています。
一例としては、ワイン用のブドウの産地が変化していることが有名です。北海道ではかつて冷涼な気候により、その寒さに耐えられる品種が多く収穫されてきましたが、温暖化の影響によりピノノワールの好適地に変わった結果、ブルゴーニュの名門ワイナリーが北海道に進出するということが事実として起こっています。裏を返せば、温暖化によりかつてのブドウの好適地であったブルゴーニュで良質なブドウが収穫できなくなってきているということです。
私たち食品業界においては、このような「温暖化」・「気候変動」の影響を避けることはできず、どのように適応していくのかが求められています。
(2)「温暖化」・「気候変動」に対応する「持続可能性」のアクション
上記に伴い、中長期ビジョンにおいて具体的な「持続可能性」のアクションを打ち出し、実行する食品企業が増えています。
カゴメは、2025年のありたい姿として「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる企業になる」を掲げ、取り組む社会課題の一つとして、「持続可能な地球環境」に取り組むことを宣言しています。
参照:カゴメ株式会社 ありたい姿・ビジョン
カルビーは「カルビーグループの成長戦略」の冒頭、2030年に向けて「気候変動」の課題に対応していくと明記しています。
参照:カルビー株式会社 2030ビジョン
具体的なアクションとしては、伊藤園グループが 新・中長期経営計画(2023年4月期~2027年4月期)において、7つのマテリアリティ(重要課題)として、「持続可能な国内農業」や「環境」を掲げ、茶産地育成事業や自然由来の製品を主とする事業モデルを鑑み、人類共有の地球環境を守る課題へ積極的に関与することを掲げています。
参照:株式会社伊藤園 ニュースリリース
このような取り組みは大企業のみならず、中堅・中小企業でも行われています。
ブルドックソースでは、「長期ビジョン BGI 2032 中期経営計画 B-Challenge2025」において、将来の環境予測の一つとして、「野菜の希少化(原材料調達難の可能性)」を掲げ、「持続可能な原材料の調達」を行うとしています。
参照:ブルドックソース株式会社 長期ビジョン/中期経営計画
上記の観点で自社の「原料」において「持続可能性」を踏まえたアクションがこれからは必須であると考えられます。
「持続可能性」を踏まえた食品業界における中長期ビジョンの考え方
(1)「持続可能性」を踏まえた中長期ビジョン策定のポイント
上記を踏まえると食品関連企業において、中長期ビジョンを策定するにあたっては「持続可能性」を踏まえた施策を組むことが必須であると言えます。それを行う際の具体的手法について、タナベコンサルティングのコンサルティングメソッドを踏まえて下記の3点を押さえていただきたいと考えています。
①20~30年後の市場環境予測を視点に入れる
食品業界においては工場の建設等の大規模投資を踏まえると、計画段階から竣工まで数年かかることは多くあります。大規模投資を踏まえるのであれば、投資の償却期間を踏まえると20年以上先の市場環境を踏まえて判断を行うべきであると言えます。そのため、戦略策定の前提となる外部環境分析においては、20~30年先、つまり2050年前後の予測を視野に入れるべきであると言えます。分析のためのフレームワークは「SWOT」などのシンプルなものでかまいません。20~30年先の視点で、Opportunity(機会)・Threat(脅威)を整理するべきであると言えます。
②市場環境予測をもとに戦略に落とし込む(クロスSWOT)
①により市場環境および2050年前後でも続くであろう自社の強み(Strength)を見出したら、その要素を掛け合わせたクロスSWOTのS×OやS×Tの視点により、戦略を導き出すべきと言えます。特に「S×T」の掛け合わせで考えられる戦略が一般的に「持続可能性」を視点でのアクションプランとなることが多いため、このアクションを見落とさず具体的対策に落とし込んでいく必要があると言えます。
③ESG・SDGs・CSRの要素を加味する
①②の観点に加えて、自社のサステナビリティ方針を踏まえ、ESG・SDGs・CSR視点でのアクションプランも考えるべきであると言えます。①②の考え方で導き出したアクションプランは「自社都合」の要素が強くなりがちです。「社会の公器」としてこれからどのようにありたいか、という視点で考えるためにはサステナビリティの視点でアクションプランを考えることも必要であると言えます。前段で例に挙げた企業はこの点もしっかり踏まえていると言えます。
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