CASE
事例
C社 中堅設備工事会社
建設業における働き方改革と業務効率化の実現:
工務部の設立と現場との役割分担による成功事例
はじめに
建設業界は、長時間労働や人手不足といった課題が長年にわたり指摘されてきました。特に近年では、政府主導の「働き方改革関連法」の施行により、労働時間の短縮や生産性向上が求められています。しかし、建設業界特有の業務構造や現場主義の文化が、これらの改革を進める上での障壁となることも少なくありません。
本コラムでは、ある中堅設備工事会社が「工務部」というミドルオフィスを新設し、現場との役割分担を明確化することで、業務負荷の低減と効率化を実現した事例をご紹介します。
建設業界における働き方改革の背景と課題
建設業界は、他業界と比較しても特に労働環境の改善が遅れていると言われています。その背景には、以下のような要因が挙げられます。
1.長時間労働の常態化
工期の厳守が求められる建設業界では、現場監督や職人が長時間労働を余儀なくされるケースが多いです。特に現場監督は、施工管理、品質管理、安全管理、工程管理など多岐にわたる業務を一手に担っており、慢性的な業務過多に陥りがちです。
2.人手不足の深刻化
少子高齢化の影響で、建設業界の労働力人口は減少傾向にあります。特に若年層の採用が難しく、現場の負担が増加しています。
3.業務の属人化
現場の業務は、経験やノウハウに依存する部分が多く、業務の標準化や効率化が進みにくい状況があります。
これらの課題を解決するためには、単なる労働時間の短縮だけでなく、業務そのものの見直しや分担が必要です。そこで注目されるているのが、ミドルオフィスの設立です。
具体的な取り組み内容
以下では、実際に工務部を設立した建設会社の具体的な取り組み内容を紹介します。
1. 業務分担の明確化
工務部の設立にあたり、まず現場監督が行っている業務を洗い出し、以下のように役割分担を明確化しました。
【現場監督の業務】
・施工管理(品質・安全・工程)
・現場での指揮・監督
・職人や協力会社とのコミュニケーション
【工務部の業務】
・資材の発注・管理
・工程表の作成・更新
・各種書類の作成・提出(申請書類、報告書など)
・ITツールを活用したデータ管理
この分担により、現場監督が現場作業に専念できるようになり、業務効率が大幅に向上しました。
2. ITツールの導入
工務部では、業務効率化のために以下のようなITツールを導入しました。
①プロジェクト管理ツール
工程表や進捗状況をリアルタイムで共有できるツールを導入し、現場と工務部の連携を強化しました。
②電子申請システム
各種申請書類を電子化し、作成・提出の手間を削減しました。
③クラウド型データベース
図面や契約書などの重要書類をクラウド上で管理し、必要な情報に迅速にアクセスできるようにしました。
3. 教育・研修の実施
工務部の設立に伴い、従業員に対して新しい業務プロセスやITツールの使い方に関する研修を実施しました。また、現場監督に対しても、工務部との連携方法や新しい役割分担についての教育を行いました。4. 定期的なフィードバックと改善
工務部と現場の連携がスムーズに進むよう、定期的にミーティングを開催し、双方の意見をフィードバックしました。このプロセスを通じて、業務プロセスの改善を継続的に行いました。
成果と効果
工務部の設立と役割分担の明確化により、以下のような成果が得られました。
これらを満たすアプローチについて考えます。
あくまで一例となり、絶対的な正解はありませんが、まずは独自性からアプローチします。
独自性については自社の強み・特長から考えます。
1.業務負荷の軽減
現場監督の事務作業が削減され、現場作業に集中できるようになりました。一部理論値を含みますが、その結果、労働時間が平均で約15%削減されました。
2.業務効率の向上
ITツールの活用により、書類作成やデータ管理の効率が向上しました。また、業務の標準化により、ミスや手戻りが減少しました。
3.従業員満足度の向上
働き方改革の推進により、従業員のワークライフバランスが改善され、離職率が低下しました。また、若年層の採用にも成功し、人手不足の解消に寄与しました。
4.新規性と革新性
ここでは、強みとターゲットから、様々に案出ししていくことが重要となります。この部分は特にフレームワークを使ってラテラルとロジカルを組み合わせて連想していくことが良いアプローチとなります。
まとめ
建設業界における働き方改革を実現するためには、単なる労働時間の短縮だけでなく、業務そのものの見直しが不可欠です。本コラムで紹介した「工務部」の設立と現場との役割分担は、その一つの成功モデルと言えるでしょう。
この取り組みは、業務負荷の軽減や効率化だけでなく、従業員満足度や顧客満足度の向上にもつながる点で、非常に意義深いものです。今後も建設業界全体で、このような取り組みが広がり、より良い労働環境が実現されることを期待します。
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