CASE

A社 中堅総合建設会社

中堅総合建設会社A社における、働き方改革プロジェクト。
現場の生産性を向上し、時間外労働を削減

関西・関東にて、土木建築工事業を展開する中堅の総合建設会社A社が弊社と取り組んだ働き方改革プロジェクトをご紹介します。現場の生産性を向上し、時間外労働削減につながった4つの取り組みとは?

進まない「働き方改革」への対策。何から進めたらよいか

(1)人手不足に伴い、現場社員への負荷と時間外労働は増すばかり

同社は関西、関東にて、土木建築工事業を展開する中堅建設業で、地域に強い顧客基盤を持つ老舗企業です。同社においても人材不足と働き方改革への対応は大きな課題でした。特に建築工事においては主にマンション施工を行っており、首都圏エリアのマンション開発の増加により、現場社員への負荷と時間外労働の増加が問題で、2024年からの働き方改革関連法への具体策がなかなか進まない状況にありました。そこで、まず、現場の働き方の実態を定量的かつ定性的に抑えるため、実態調査から始めることとし、以下を実施しました。

①現場業務の棚卸し、業務フロー整理

②定量的調査:デジタル機器、専用スマートフォンを活用した現場社員の業務時間調査
毎日現場社員が、何の業務に何分費やしているかを15分毎に計測するサンプリング調査を約二週間実施

③定性的調査:現場社員へのヒアリング
現場社員へヒアリングし、何の業務が長時間労働の要因となっているか、業務の削減・簡素化、サポートを希望することについて、現場社員の生の声を集めました。

④改善策策定:改善策を具体化し、改善を実行していくための取り組みを推進しました。

(2)付加価値業務への時間配分が40%未満、他社より低い水準

調査の結果、所長や主任が付帯業務に時間を取られ、本来注力すべき業務(付加価値業務)に1日の40%しか時間を費やせていないことがわかりました。弊社では、多くの建設会社で同様の調査をしており、モデルとなる仕事の進め方をしている所長は、通常、付加価値業務の割合が50%~60%程度であり、他社の全社平均値(45%)に比べ低い水準にありました。
同社の場合、その最大要因は、書類作成・事務業務、いわゆる「紙面作成」に所長、主任の現場の中心メンバーが多大な時間を費やしていることにあると考えました。例えば、安全書類、諸官庁への提出書類、施工計画書、各種検査記録、完成図書、ISO書類などです。また、請求書処理、図面作成にも所長へ負荷が多くかかっていることも判明しました。そこで、対策として、働き方改革プロジェクトを立ち上げ、以下の4つの改善に取り組みました。

図1:現場社員の業務時間調査の結果

現場社員の業務時間調査の結果

出所:タナベコンサルティング作成

働き方改革プロジェクト 4つの取り組み

(1)その1 現場書類の簡素化・削減

現場で主に使用している書式を全て洗い出したところ、73種類の書類がありました。各書類の作成目的、作成者、作成頻度、記入項目をプロジェクトメンバーでチェックしました。すると、多くの改善点が見つかりました。例えば、必要性は低いが慣習的に作成している、作成目的や記入内容の重複、必要以上の頻度での作成、多人数の押印が必要などです。
それらの書類を削減、統合、項目の削減、作成頻度と押印者の最小化を実施した結果、半数以上の書類が改善され、年間約500時間の時間削減効果に繋がりました。

図2:書類の簡素化(一例)

書類の簡素化(一例)

出所:タナベコンサルティング作成

(2)その2 現場サポートチームの立ち上げ

所長主任の付帯業務を分業化するため、専属的にサポートするチームを立ち上げ、現場へ派遣することが必要と考えました。そこで、現場社員に本社に集まっていただき、サポートを求める付帯業務は何かを話し合う座談会を開催したところ、50以上の業務についてサポートを求めるという声が上がりました。プロジェクトメンバーでそれら業務について、実施頻度、業務時間、必要人数、業務の難易度、サポートの必要度を検証し、まずは、4名の事務員を配置し、各現場を順番に回り、1年以内に習得可能な比較的易しい20の業務について、現場への支援を行うこととしました。
開始にあたっては、業務の標準化のため、サポート業務マニュアルの作成、事務員への指導を行いました。そうして半年後、現場社員へアンケートを実施した結果、平均で1日約90分の時間削減に繋がっているとの回答が寄せられました。

図3:サポート業務手順書SAMPLE

サポート業務手順書SAMPLE

出所:タナベコンサルティング作成

(3)その3 請求書のデジタル化

同社の請求書処理業務は協力会社と紙面でやりとりすることが主となっており非効率でした。月初には所長が請求書を本社へ持参しないといけないなど、移動時間のムダも発生していました。そこで、弊社が提携する外部パートナー企業(株式会社燈様)と連携し、請求書のデジタル化を進め、これにより毎月月末に2~3日かかっていた所長の請求書関連業務を大幅に短縮することができました。

弊社外部パートナー(一例):株式会社燈。東大発のAIを活用し、中小の建設業向けのDXを推進するスタートアップ企業。建設業特化のChatGPTの活用や注文書・請求書・領収書の電子化で改革を推進しています。建設業向け請求書処理システム「デジタルビルダー」は42都道府県150社に導入実績があります。

参照:https://akariinc.co.jp/news/posts/press_digibill

(4)その4 CADオペレーター配置による、図面作成業務の分業化

同社では図面作成業務において、所長に多大な負担がかかっていました。特に竣工図作成においては、所長は竣工後も現場に残り、長い場合は1ヶ月近く竣工図作成をしないといけないということが発生していました。そこで、図面作成業務の効率化を図るため、以下の対策をとりました。本社にCADオペレーターを配置し、施工期間中、所長はCADオペレーターへ図面の修正指示をしチェックのみを行う、CADオペレーターは所長からの指示に基づき図面を修正し翌日にバックするという進め方に変えました。その結果、所長が図面修正に手を動かす必要がなくなり、図面修正時間が劇的に減少、竣工図作成のために1ヶ月間現場に残るということがなくなりました。

このように同社とは、現場の実態調査から始め、課題を定量的にかつ定性的に把握し、改善を進めました。その後、働き方改革をさらに促進するため、同社とはDXビジョンを構築し、デジタル化推進の取り組みを進めています。課題を数値で抑え、課題にピンポイントに対策を打つことが重要と言えます。まずは、そこから始めてみてはいかがでしょうか。

CADオペレーター配置による、図面作成業務の分業化
■Before:基本的に、現場監督・主任が図面作成・修正をしていた。
■After:本社にCADオペレーターを配置。現場で所⾧が日々施工図を更新する箇所を赤ペンでマークし、修正内容を現場監督から、CADオペレーターへ伝え、CADオペレーターが図面修正を行うようにした。その結果、現場監督の図面作成の時間が大幅に削減された。

図4:図面作成業務の分業化

図面作成業務の分業化

出所:タナベコンサルティング作成

会社プロフィール

A社 中堅総合建設会社

[ 所在地 ]
大阪府

業種 総合建設業
売上高 500億
従業員数 500名

コンサルタント紹介

山本 剛史
タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部山本 剛史
村上 幸一
タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
高島 健二
タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部高島 健二
土井 大輔
タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔

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