COLUMN

2022.11.11

SDGs先進国の取り組みから読み解く、SDGs推進のあり方

自社のSDGsへの取り組みを推進するにあたり、業界をリードする企業の取り組みや、競合企業の取り組みなどは検討するにあたって調査したことがあるのではないでしょうか。SDGsは全世界で取り組む必要がある目標です。今回は日本ではなく、世界に視点を変えて、SDGs先進国であるスウェーデンの取り組みから、SDGs推進のあり方を見つめ直すきっかけづくりをしていきましょう。

世界から見た日本のSDGs達成度の評価とは?

2022年度SDGs達成度ランキング、日本は第19位

SDGs達成度ランキングは、国連の研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が、持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標に対する達成度合いを国・地域別に示した「持続可能な開発レポート2022」にて発表しされています。現在日本においては世界で第19位に位置しており、2021年度から1ランクダウンした結果となっています。全世界で取り組むSDGsにおいての、日本の達成・未達成目標から現在の日本の課題を把握し、改めて私たちができること・すべきことを考察していきます。

【引用】
Sustainable Development Report(持続可能な開発レポート)2022
https://s3.amazonaws.com/sustainabledevelopment.report/2022/2022-sustainable-development-report.pdf
日本貿易振興機構(ジェトロ) ビジネス短信「SDGs達成度、日本19位に低下」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/a6ab9ec1719f24e8.html

日本のSDGs推進の課題

上記レポート内では、日本のSDGs17の目標に対しての達成度を「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階で評価しています。世界から見たときの日本は、以下のように評価されています。

■達成済み
目標4. 質の高い教育をみんなに
目標9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
目標16.平和と公正をすべての人に

■深刻な課題がある
目標5. ジェンダー平等を実現しよう
目標12.つくる責任、つかう責任
目標14.海の豊かさをまもろう
目標15.陸の豊かさもまもろう
目標17.パートナーシップで実現しよう

実は達成済みとされているのは、4つの目標しかありません。しかもこの達成項目は戦後から取り組みを行ってきた内容であり、直近の努力の結果ではなく、既に土壌が出来上がっていた結果に起因します。
その上で日本の現在地として残りの13の目標は課題とされており、特に上記5つの目標は深刻な課題と評価されています。日本はまだまだSDGsの取り組みについては課題を多く抱えています。
特に「目標12.つくる責任、つかう責任」においては2022年より深刻な課題が残るとの評価にランクダウンしています。
19位という結果は決して満足いく内容ではなく、国際社会が求める水準に達していない状況を理解し、行動することが求められています。

SDGs達成度ランキングTOP3のスウェーデンから学ぶ、SDGs推進の取り組み

スウェーデンのサステナビリティの捉え方

サステナブル(持続可能な)という言葉から連想されるのは、気候変動などの地球環境問題をまず思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。

日本ではエコ・省エネ・節電などの環境やエネルギーに関する表現が一般的になっており、具体的な対策として取り組みイメージがしやすい項目となっています。一方スウェーデンにおいては、日本と同様の環境やエネルギーに対する意識に加え、貧困や飢餓、働き方や女性の社会進出、ジェンダー問題、生涯学習なども含んでサステナブルという言葉を捉えるという違いがあります。

背景としてスウェーデンでは幼少期から自然環境やジェンダーについての教育機会を提供しており、かつSDGsの目標に基づく原則として以下の3項目を掲げ制度を整備し、政府、企業、国民が一体となって活動を行っています。

■3つの原則
1.自然に還せる量の資源しか取らない
2.地下よりも地上のエネルギーを選ぶ
3.生物の多様性を保護する

人間はあくまで環境の一部であり、環境・全ての生物は地球上で繋がっているという観点で物事を捉える意識が根付いていることが大きなポイントです。SDGsが国民生活に馴染み、日常行動から対策を講じるといった現実的な対策が実践できている点は企業にとっても学ぶべき姿勢です。

持続可能な社会を実現する教育制度

スウェーデンには1962年に始まった「キープ・スウェーデン・クリーン(Håll Sverige ren)運動」という活動があります。多くの学校はこの運動に参加し、学校周辺や公園など子どもたちにとって身近な環境をきれいに掃除する活動を実施するなど、子どもたちは身近な場所で小さなことから行動に移す経験を通じて、毎日できる小さな行動が大きな変化を起こすことを体験しています。スウェーデンの人々のSDGsに取り組む姿勢には、このような子どもの頃からの教育と経験も大きく関係していると言えます。

またジェンダーの観点においても、同国では1998年に、国内の教育方針が見直され、性別の固定概念を生まない取り組みを進めています。「ジェンダーニュートラル」を掲げるプリスクールが設置され、先生が「男の子」と「女の子」と表現せずに「名前」で呼ぶ、おもちゃを色や見た目で男女で区分しない、など、これまでの性に対する印象や固定観念を生まないように工夫しています。

現在の日本においても2020年から小学校においてSDGsの義務教育が開始されるなど、今後の未来を担う世代が学び・体験する仕組みが整いつつあります。このような教育を受けてきた人材を雇用することになる企業においても、SDGsをビジネスに取り入れ成長する意識の情勢と、新たな世代を受け入れるための組織風土・組織体制の構築が求められます。またSDGs推進に向けた浸透方法として、取り組む指針を示し教育という制度と共に推進する仕組みを作るという点においても企業が学ぶべき点であります。

SDGsに対して取り組むということは、目標を掲げるだけでは推進できないという点、推進する人を育てると共に仕組みにすることで推進力を増す必要がある点、この2点がスウェーデンの取り組みから学ぶべきポイントです。

スウェーデン企業の取り組み事例

グローカル的思考でビジネスを拡大するSCANIA(スカニア)社

グローカルとは、グローバルな視野を持ちつつ、ローカルでできることに取り組んでいくという考え方です。

持続可能な社会の実現に向けて、グローバルな問題に目を向けつつ、地域からできること、自分自身ができることを考えて行動できるグローカル的思考を持つ消費者・生産者が広がっていることがスウェーデンの大きな特徴です。消費者意識の変化に対して企業は適応が求められ、エシカル消費のニーズに対応する商品・サービスを提供し続けていくことが企業に取って重要な課題となります。

ここではスカニア社の事例を紹介します。
同社は事業戦略の一環として、脱炭素化・循環型ビジネス・日知人の持続可能性を将来的に持続可能な事業を行うために実現しなければならない3つの優先分野を設定しています。再生エネルギーを使用するなど環境的持続可能性に配慮しながら、持続可能な輸送システム(人の健康や安全を脅かしたり、環境を危険にさらしたりすることなく、経済的および社会的発展に貢献しながら、人や物を輸送すること)を追求し続けている同社は、SDGs推進企業として世界で注目されています。

一例として、同社は再生可能燃料の生産、効率的で再生可能なエネルギーの開発を自社の目標に設定しています。電気自動車の普及、充電スタンドや電力供給基盤設備に力を入れ、走行中に充電できる電気道路の開発も進めるなど、グローカルな視野を持ち、先進技術を活かした地域課題解決、取り組みを通じたSDGs目標の達成に向けて、サステナビリティに挑戦し続けています。また女性の社会進出や男女の賃金格差をなくすなど、社会的な課題に対しても積極的に取り組み、企業価値を高めています。

同社は「持続可能なソリューションを通じてお客様の収益性を高めることと、責任あるビジネスを追求することは、収益性の高い企業であり続けるための相補的な長期的視点である」と考え、持続可能な輸送ソリューションの提供に留まらず、事業活動を通じて生じる社会・環境への責任を持つことを掲げており、成長を続けています。

【引用】
スカニアジャパン株式会社 SCANIAの持続可能性
https://www.scania.com/jp/ja/home/about-scania/sustainability.html

スウェーデンの取り組みから学ぶべきポイント

日本との環境は異なりますが、SDGsに取り組むという共通目標はスウェーデンも一緒です。
その中で私たちが学ぶべきポイントは大きく2つです。

1.グローカルな視点を持つこと
2.SDGs推進の意識浸透に向けた人材育成(教育)と推進するための仕組みづくり

企業においても上記の意識を持つことで、事例企業のように事業領域拡大・企業価値向上の機会に繋がります。 この機会にグローカルな視点を意識し、新ためて自社の強みを活かしてできることを検討し、SDGsの目標達成に向けて取り組みましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

河村 周平

電気機器業界にて営業、営業企画・商品開発部門マネージャーを経て、当社に入社。業界・規模問わず、企業ごとのコアコンピタンスを活かした事業戦略構築・新規事業立ち上げ支援を得意とする。また、SDGsの立ち上げから社内推進/戦略構築/企業ブランディングなどの実績も多く持つ。

河村 周平

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