COLUMN

2024.10.22

中期経営計画の立て方
~社員の協力を得られる中期経営計画とは~

目次

閉じる

中期経営計画の立て方~社員の協力を得られる中期経営計画とは~

多くの企業において中期経営計画の必要性が増しており、その策定をご支援する機会は日に日に多くなっていると感じます。
一方、策定した計画が現場との乖離が大きく結果として推進されない例もあります。なぜそのような状況に陥ってしまうのでしょうか?一般的に中期経営計画には多くのリソースを割くことがありますので、投資対効果の観点からも計画が推進されないということが避けなければなりません。
本コラムでは、そうした問題が生じる問題点とそれを避けて計画を策定するステップについて解説していきます。

中期経営計画

(1)中期経営計画はメッセージを明確に伝える

中期経営計画とは、経営の向かう方向を中期(3~5年)の期間で目標を設定しその実現方法を計画書としてまとめたものを指します。中期経営計画の伝えたいメッセージを受け手に正しく伝え、時には現場の協力を仰ぎながら計画に沿った企業活動を推進する必要があります。
中期経営計画の策定において、様々な進め方がありますが、大別すると下記2パターンに整理することができます。

パターン①:経営者の独断で作成された緻密で見た目もセンスの高い計画
パターン②:様々な階層を巻き込んで作成されたシンプルで分かりやすい計画

どちらを選択するかは、多くの企業で議論されるポイントです。以下に、パターン①に固執する理由とその問題点について考察します。

(2)計画策定のポイントは短期的な成果に拘りすぎないこと

パターン①に固執する理由

・迅速な意思決定:
経営者が独断で計画を策定することで、迅速に意思決定を行い、計画を早く実行に移すことができます。これにより、環境の変化に迅速に対応できる場合があります。

・経営者のビジョン反映:
経営者のビジョンや戦略が直接反映されるため、経営の方向性が一貫性を持つことができます。特に強力なリーダーシップが求められる状況においてはその必要性が高いと言えます。

・短期的な成果:
詳細で緻密な計画は短期的な成果を上げるのに適しており、投資家や株主に対して明確な説明がしやすくなります。



パターン①の問題点

・協力の欠如:
経営者の独断で策定された計画は、従業員や中間管理職の協力を得にくくなります。計画が現場の実情に合わない場合、実行段階で問題が生じやすくなります。

・コミュニケーション不足:
従業員が計画の背景や目的を十分に理解していないと、モチベーションが低下し、計画の実行に消極的になることがあります。

・柔軟性の欠如:
経営者の視点だけで作られた計画は、現場の変化に対応する柔軟性に欠ける場合があります。現場の声を反映させることができないため、実際の運用で問題が生じやすくなります。



まとめ

多くの会社がパターン①の計画策定に固執する理由は、短期的な成果や迅速な意思決定のメリットを重視するからではないでしょうか。しかし、計画の実行段階での協力や柔軟性の観点から見ると、パターン②のように様々な階層を巻き込んだ計画の方が長期的には効果的です。中期経営計画を推進するためには、計画の作成段階において社員との協力とコミュニケーションを重視し、現場の声を反映させることが重要となります。

中期経営計画

中期経営計画の策定ステップ

(1)中期経営計画の策定の流れ

中期経営計画が社員の協力を得られず、現場で実行されない原因として、現場の声が正しく反映されていない点が挙げられました。これらを踏まえ、現場の声を反映させながら中期経営計画を策定していくステップを下記に示します。

①内部調査の徹底
②経営理念・ビジョンの共有
③具体的な目標設定
④全社員の参加と意見反映


これにより、社員が計画に納得し、協力して実行に移すことが可能に繋がります。
下記には上記のそれぞれのステップに応じて社員を巻き込むより具体的な方法について記載します。

(2)コミュニケーションを重視した計画策定

社員とのコミュニケーションを重視した事例を下記に示します。

①内部調査の徹底
内部調査を徹底的に行い、自社の強みと弱みを明確に把握することが重要です。
・現場インタビュー: 現場の従業員や中間管理職へのインタビューを通じて、日常業務の中で直面している課題や改善点を把握します。
・データ分析: 過去の業績データや市場調査データを分析し、トレンドやパターンを明確にします。特に現場社員と共有しておかなければならないデータについてはより明確な根拠も合わせて押さえておく必要があります。

②経営理念・ビジョンの共有
経営理念やビジョンを社員と共有することが不可欠となります。共有することによって、一貫性のある計画が担保されます。
・ミッションの明確化: 企業の存在意義や目指す方向性を明確にし、それを社員全員に正しく伝えます。
・ビジョンワークショップ: 全社員を巻き込んだワークショップを開催し、経営理念やビジョンについて意見交換を行い、共通理解を深めます。

③具体的な目標設定
アクションプランの詳細化: 各目標を達成するための具体的なアクションプランを作成し、担当者や期限を明確にします。

④全社員が参加する機会を設定する
社員の意見が反映されることが、計画に対する納得感が向上に繋がります。
・意見募集(アンケート): 社員から意見を募集し、それを計画に反映させていきます。また、フィードバックを迅速に行い、意見がどのように反映されたかもしっかり伝えなければなりません。
・定期的なミーティングと発信: 計画の進捗や課題を定期的に共有し、全社員が一体となって取り組む環境を作ります。

中期経営計画の策定ステップ

人材を重要視する経営環境からも中期経営計画は現場視点が求められる

詳細な経営計画を成功させるためには、冒頭示したパターン①の迅速性とパターン②の協力のバランスを取ることが求められます。本コラムにおいてはパターン②を中心にその重要性について記載しましたが、より人材を重要視していく経営環境からも今後も注目していかなければならない視点であります。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

千葉 惟平

建設会社にて土木建設資材を製造する工場のマネジメントに従事後、当社へ入社。現場で培った経験を基に、クライアントの「現場力」向上を支援。工場の生産管理指導をはじめ、製造業の現場改善、生産性改革、社員教育、人事戦略構築(採用・人事制度・教育計画策定)などを得意としている。

千葉 惟平

WEBINAR

一覧ページへ

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業66
200業種
17,000社以上