COLUMN

2024.06.18

事業ポートフォリオマネジメントとは?
必要性や手法・具体例について解説

目次

閉じる

事業ポートフォリオマネジメントとは?必要性や手法・具体例について解説

複数の事業を展開する企業では、事業を俯瞰的にマネジメントして経営資源を効率的に配分し、企業全体としての価値を向上させる取り組みが必要です。
そのためのフレームワーク「事業ポートフォリオマネジメント」とはどのようなものなのでしょうか。今回の記事は、事業ポートフォリオマネジメントの必要性や手法、具体例について解説します。

事業ポートフォリオマネジメントとは

事業ポートフォリオとは、企業が展開している事業を一覧化したもので、事業全体を俯瞰的に見渡すためのツールです。
事業ポートフォリオマネジメントでは、事業ポートフォリオをベースにして各事業の評価を行います。経営資源の効率的・効果的な分配を行うために事業の組み替えを戦略的に行うものともいえます。経営方針を見直し、企業が成長するきっかけとなる経営戦略です。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)との違い

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とは、企業の扱う製品・サービスを総合的に管理するフレームワークです。経営資源を、需要の少ない製品・サービスから需要の多いものへ集中的に再配分するマネジメント手法といえます。
事業ポートフォリオマネジメントにはPPMが含まれます。事業ポートフォリオマネジメントは人材管理や社会活動を含めたすべてが対象となるフレームワークです。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)との違い

事業ポートフォリオマネジメントの必要性・目的

事業ポートフォリオマネジメントは多角化された事業の実績とリスクを評価しつつ、企業の事業バランスを適正化することが目的です。限られた経営資源を有効に活用するために必要なものといえます。

個々の事業に対しては、事業ポートフォリオマネジメントは経営リスクのモニタリングと対策をセットで行います。経営判断を迅速化して事業の新陳代謝をよくすることが求められます。

また、2018年のコーポレートガバナンスコード改定に伴い、上場企業には事業ポートフォリオに関する方針明示を強く要請されており、その内容は以下3つのポイントに集約されます。

ポイント①収益力・資本効率の目標設計

原則5-2
経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人的資本への投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。

ポイント②事業ポートフォリオの方針明示

補充原則5-2①
上場会社は、経営戦略等の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について分かりやすく示すべきである。

ポイント③事業ポートフォリオマネジメントの実行

補充原則4-2②
取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。

事業ポートフォリオマネジメントの必要性・目的

事業ポートフォリオマネジメントに有効な2つの手法

事業ポートフォリオマネジメントにおいて利用可能な分析手法(フレームワーク)はさまざまで、目的や企業の事情に合わせた手法を選択する必要があります。ここでは代表的な2つの分析手法(フレームワーク)について解説します。

手法①SWOT分析

SWOTは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の頭文字をつなげたもので、自社の強み(コアコンピタンス)を明確化するためのフレームワークです。

外部環境と内部環境をそれぞれプラス要因とマイナス要因に分けた4つの領域を作り、自社の状況を分析します。

内部環境 Strength
(強み)
Weakness
(弱み)
外部環境 Opportunity
(機会)
Threat
(脅威)
プラス要因 マイナス要因

手法②CFT(CTM)分析

CFTは、Customer(顧客)・Function(機能)・Technology(技術)の頭文字をつなげたもので、事業ドメイン(企業が主力とする事業領域)を3つの評価軸をもとに明確化するためのフレームワークです。

1. Customer(顧客):誰に対して提供するか
2. Function(機能):どのような価値を提供するか
3. Technology(技術):どのような技術を用いて提供するか

事業ポートフォリオマネジメントに有効な3つの手法

事業ポートフォリオマネジメントの4つのポイント

事業ポートフォリオマネジメントを成功させるためには、押さえるべきポイントがあります。フレームワークを用いて分析した後、どのような形で組織編成・事業運営を行うかを中心に解説します。

ポイント①投資の最適化

PPM分析の結果を反映させて投資を最適化します。
各事業の市場シェア・成長率・分野の将来性などを見極めて、成長が見込めずシェアも低い事業から成長の見込める事業に経営資源を移動させ、優先的に投資を行う必要があります。
事業のライフサイクルを考えると、成長性・市場シェアともに拡大しそうな事業には将来性が見込めます。このような事業を重要視し、タイミングを逃さないように投資を集中させることがポイントとなるでしょう。

ポイント②事業再編・再構築も選択肢になる

長く続けてきた事業や、経営者・事業部責任者の思い入れが強い事業は、成長が鈍って収益性が下がっても「維持したい」という気持ちが働き、収益改善をしようとするでしょう。
しかし、いわゆる「負け犬」になっている事業は縮小をしたほうがよいといえます。他の成長分野への投資のために撤退をして、事業を再編・再構築することも選択肢に入れましょう。

ポイント③ガバナンスを強化する

事業部の経営を事業部任せにすると、企業のトップが各事業を統制できません。事業ポートフォリオマネジメントにとって大きな支障となります。各事業が最大限の活動をすると、無駄な投資が増える恐れがあります。

マネジメントの権限を明確にし、トップの意思決定が確実に各事業に及ぶような体制が必要です。ホールディングス化をはじめとした、ガバナンスの維持を目的とした組織の設立も効果的です。

ポイント④定期的に評価する

市場は常に変化していて、価値観やニーズ、企業の評価は変わります。市場の変化に柔軟に対応するには、経営状況をモニタリングして定期的に評価する必要があります。

ESG(Environment・Social・Governance)の視点で企業価値を評価し、市場において自社の事業が価値創出に貢献しているかを見極めましょう。

事業ポートフォリオマネジメントの4つのポイント

事業ポートフォリオマネジメントの注意点

事業ポートフォリオマネジメントの注意点として次のことが挙げられます。

・各事業の権限が強く総合的な財務管理ができない企業は成功しにくい
・事業ポートフォリオマネジメントは将来の事業を対象にしていない
・将来への投資は別途策定する必要がある
・企業の体制を見直して柔軟性のある組織を目指す
・事業間の依存関係を評価できない場合がある

事業ポートフォリオマネジメントはあくまで現在の分析をもとにした施策のため、将来的な事業の拡充は別の課題となります。そのための経営資源の確保も考慮しなければなりません。

事業ポートフォリオマネジメントの具体例

事業ポートフォリオが実際に企業でどのように活用されているかを見てみましょう。
ここではメーカーと商社の具体例を紹介します。

事例①オムロン

オムロンはROIC経営によって企業価値を最大化しています。ROICは営業利益を投下資本で除した数値で、調達したお金に対していかに利益を上げたかを判定する財務指標です。

以下の経済価値評価と市場価値評価の2つの分析基準を各事業に適用して、限られた経営資源の分配を効率化しています。

・ROICと売上高成長率との2軸によるPPMによって経済価値を評価
・市場成長率とシェアとの2軸によるPPMによって市場価値を評価

事例②三井物産

三井物産では経営会議の諮問機関としてポートフォリオ管理委員会を設置しました。
委員会ではポートフォリオによる戦略立案と投資計画を策定し、定期的なモニタリングを実施して結果を取締役会に報告しています。

諮問機関には、情報戦略やコンプライアンス、サスティナビリティなどの専門委員会が存在します。これらの委員会が経営会議を強力にサポートしている体制が特徴です。社長直轄の経営会議は全社を統制する権限を持ち、コーポレートガバナンスの維持に働きます。

まとめ

事業ポートフォリオマネジメントは、複数の事業を展開する企業が持続的に成長するために必要な考え方や事業管理手法です。

事業ポートフォリオマネジメントを成功させるには、ガバナンスを強化し、企業全体の価値向上を目的とする必要があります。その上で、柔軟に各事業をマネジメントできる体制を整えましょう。

著者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

山本 剛史

大手ゼネコンにて設計・監督業務に従事後、当社に入社。事業戦略を事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定してビジネスモデル革新を行うことを得意とするタナベ屈指のコンサルタント。成果にこだわるコンサルティング展開で、特に現場分散型の住宅・建築・物流事業、多店舗展開型の外食・小売事業で、数多くの生産性改善実績を持つ。

山本 剛史

WEBINAR

一覧ページへ

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
68年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業68
200業種
17,000社以上