COLUMN
コラム
建設業界の抱える現状の課題と2024年の展望について紹介していきます。
2024年4月からの「働き方改革関連法」適用目前
減少し続ける日本の人口と高齢化が進む建設業従事者
人口は14年連続減少傾向
建設業就業者数は約500万人、前年同月比で11万人(2.2%)増加
日本の人口は2023年1月1日時点で1億2242万人、2008年をピークに14年連続で減少、全47都道府県でも減少しており、今後2048年には1億人を割り込む見込みとなっています。人口減少の主な理由は、少子高齢化であり、2023年に過去最高となった65歳以上の高齢者割合29.1%は、2048年には約40%近くまで増加する見込みとなっています。
出所:建設業の就業者数の推移(総務省資料より引用)
日本の人口動態と連動する形で建設業においてもその就業者数は高齢化が進み、減少傾向ではあるものの、総務省統計局によると23年9月時点で、建設業における就業者数総数は503万人で前年同月と比べて11万人(2.2%)増加。前月比では24万人増加しています。しかしながら、コロナショックを抜けた建設投資の持ち直しによる受注増(工事量の増加)や大阪万博開催に向けた施工力の確保などが要因と考えられ、恒常的な増加とは言えない状況です。
「物価高」「工期延期」「融資返済難」 建設業の倒産件数は増加傾向へ
建設業の倒産件数は増加傾向へ
返済ピークを迎えるコロナ禍でのゼロゼロ融資
帝国データバンクの調査によると、2022年度(2022年4月から2023年3月まで)の建設業の倒産件数は、1291件と20、21年度に比べて大幅に増加しています。
参照:帝国データバンク
主な要因は、「物価高」「人手不足」であり、建設現場で「資材が来ない」「予算よりも価格が高い」「人がいない」などの常態化により、工期も「ずれ込む」悪循環が発生しやすい環境となり、中小建設業の倒産を押し上げる要因となっています。23年度についても前年度と比べ早いペースで倒産件数は伸びておりこの流れは24年度も引き続き継続すると思われ、「資材と人材(施工力)の安定調達」が企業存続のカギとなりそうです。
倒産の要因は、「物価高」「人手不足」だけではありません。コロナによる景気悪化に対する企業の運転資金の確保のため、2020年3月から政府系金融機関でいわゆる「ゼロゼロ融資」がスタート、20年5月からは民間金融機関も実施しました。コロナ禍で売上高が減った事業者に対し実質「無利子・無担保」で融資を行っていましたが、22年9月(民間金融機関は21年3月)に貸付を終了しています。中小企業の約2割超が利用したともいわれるゼロゼロ融資ですが、制度実施中は「不正融資」や「ずさんな審査」が問題とされることが多く、当初予定されていた返済猶予期間も終了し、一部の融資はすでに返済時期に入っています。返済のピークを迎えている「ゼロゼロ融資」において経営難から返済ができず、倒産・廃業へ向かう企業も少なくないと思われます。
2024年の目下の課題は「2024年問題(働き方改革関連法の適用)」
4月から罰則規定
2019年に働き方改革関連法が施行され、そこには「時間外労働の上限規制」が盛り込まれていますが、建設業においては環境改善に時間がかかる点を考慮し、適用まで5年間の猶予が与えられていました。2024年3月で猶予期間が終わり、4月からは建設業においても残業規制などが盛り込まれた改正労働基準法が適用されます。これには罰則規定も明文化されており、違反企業においては社名の公表などもあり、企業信用の低下にもつながる厳しいものとなっています。
多くの建設会社が働き方改革関連法適用の認識はあるものの、抜本的な改革、効果的な改善策や長時間労働削減の対策など実施できておらず、その時を迎えようとしています。
2025年万博開催・2027年以降のリニア中央新幹線開通、民間投資も活況、その他社会インフラ整備に合わせた建設需要増
2024年度建設投資は約72兆円と微増傾向
施工力、人材確保、生産性の向上が存続のカギ
(一財)建設経済研究所の10月発表のデータによれば、2024年度の建設投資については、72兆2,400億円と前年度比で微増(1.1%)となっています。政府分野投資である国の直轄・補助事業の 2024年度当初予算は、各省庁の概算要求額の公表では前年度並みの規模である約7兆円の公共事業関係費が確保される見通しとなっています。さらに、2025年に予定されている大阪・関西万博開催に向けた建設の追い込み、周辺開発や開業が延期となったものの引き続き建設工事が続くリニア中央新幹線、地方に目を向ければ、熊本県や北海道における半導体製造工場建設など、民間建設投資も増加傾向となっています。その大規模改修やリニューアル、高速道路や橋梁等の社会インフラ維持メンテンナンスの需要は堅調に維持される見込みです。
原材料費・エネルギーコスト増をはじめとした物価高や人件費高騰、さらに労働者の賃金上昇トレンドとバブル崩壊以降のデフレ経済からインフレ経済へ経済状況が移行しています。建設投資額も堅調に増加傾向であり、2024年は工事量も一定程度確保できると思われます。その中で仕事量を確保し、利益を残し、持続的成長を続ける建設会社になるためには、「施工力・人材確保」と「生産性の向上」の2つを求めなければいけません。
下請・協力会社との関係性の強化はもちろんのこと、同業他社とのアライアンス、パートナーシップ関係の構築などを行い、十分な「施工力」を確保しすることが必要です。さらに、魅力ある建設会社として採用の強化、育成、定着、活躍させる人材育成の仕組みへと見直しをすることも必要です。
「生産性の向上」においては、「一人当たり売上高」「一人当たり営業利益」「一人当たり○○」など、一人当たりの生産性KPIを設定し、その向上を図っていく必要があります。生産性向上のための業務の見直しや役割・職務の見直し、さらには組織の見直しなど抜本的な改革を行っていく必要があります。
経済環境が大きく変わるこの変革期において、環境適応できず自然淘汰されないよう会社も変革をしなければいけません。
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