COLUMN

2024.02.02

物流業界のトレンド 現状の課題と今後の展望

物流業界のトレンド 現状の課題と今後の展望

皆さまもご承知の通り、2024年4月にトラックドライバーの長時間労働の改善に向けトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間となります。他方で、物流の適正化・生産性向上について対策を講じなければ2024年度には輸送能力が約14%不足し、さらにこのまま推移すれば2030年度には約34%不足する※と推計されています。これがいわゆる「物流の2024年問題」です。この「物流の2024年問題」への対応を加速することを目的として、経済産業省、農林水産省、国土交通省の連名で、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定し2023年6月2日に発表されました。

引用元:経済産業省

国が求める"物流事業者"の取り組み事項

1.物流事業者の取り組み事項として「実施が必要な事項」下記10項目としています。
(1)物流業務の効率化・合理化
①業務時間の把握・分析
(2)労働環境改善に資する措置
①長時間労働の抑制
②荷待ち時間や荷役作業等の実態の把握
(3)運賃の適正収受に資する措置
①運送契約の書面化
②運賃と料金の別建て契約
③コスト上昇分や荷役作業等に係る対価の運賃・料金への反映に向けた取り組み
④契約内容の見直し
⑤下請け取引の適正化
⑥トラック運送業における多重下請構造の是正
⑦標準的な運賃の積極的な活用

しかし、物流事業のビジネスモデルは受注型であり事業者単独での改善には限界がきています。

国が求める'物流事業者'の取り組み事項

引用元:経済産業省

荷主側に共通する取り組み事項

同時に、発荷主・着荷主にも実施が必要な事項として下記10項目を明示しています。

(1)物流業務の効率化・合理化
①荷待ち時間・荷役作業などにかかる時間の把握
②荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール
③物流管理統括者の選定
④物流の改善提案と協力

(2)運送契約の適正化
①運送契約の書面化
②荷役作業等に係る対価
③運賃と料金の別建て契約
④燃料サーチャージの導入・燃料費等の上昇分の価格への反映
⑤下請取引の適正化

(3)輸送・荷役作業等の安全の確保
①異常気象時等の運行の中止・中断等

です。
他業界からすると"あたり前"かもしれません。業界の慣習・常識は他業界では非常識と言われる事があります。

荷主側に共通する取り組み事項

物流事業者(業界)の本質的課題

そもそも、事業(=企業)は顧客や仲間(従業員)から"選ばれる理由"が必要です。
なぜ、A社と取引するのか・なぜB社に委託するのか・・・。
基本的に物流事業者は物流6大機能と呼ばれる「輸配送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」「システム」のいずれかを提供する対価として料金を収受している。例えばa~b地点に輸送するために片道6万円をもらう。ということです。
それ自体は間違いでもなく、ビジネスとして当然ですが"選ばれる理由"を何にするか決めることが必要です。
昨今、「メーカーなどの荷主の物流部門が弱くなっている」と聞くことがあります。1990年代から物流機能を外部委託する荷主が増えてきました。その結果、ブラックボックス化しており災害やイレギュラー事態が起こった時の引き出し(手段)を荷主側が持っておらず物流事業者に「早く届けてくれ」と伝えるだけと言った非常にひどいことを聞いたことがあります。

荷主側における物流の本質的な課題は「物流はコストと考え、物流の位置づけが低い荷主が存在する」事です。
物流事業者側における本質的な課題は「選ばれる理由が不明確(安価、お願い営業など)な事業者が存在する」事です。

物流事業者(業界)の本質的課題

タナベコンサルティング作成

物流事業者の方向性は"選ばれる理由"を軸としたビジネスモデルを再構築すること

2024年問題をチャンスとして捉えて成長している物流事業者には2つの共通点があります。
1つ目は「自社の特徴・強みを明確にしてビジネスモデル・事業戦略を明確にしています」
2つ目は「顧客(荷主)との取引を軸として事業を成り立たせています。」
当然、平準化のために同業からの案件も対応しています。

自社の価値を明確にして展開している物流のビジネスモデルは4つあります。
1)物流+αモデル
2)サービス特化モデル(もしくはエリア特化モデル)
3)ドメイン特化モデル
4)本業拡大モデル

これまでの実績・扱い荷種や取引顧客の中に必ず自社のノウハウがあります。私はノウハウという言葉を「詳しく聞かなくてもわかること」と定義しています。荷物や業界・得意先の特性によって気を付けないといけない事があると思います。それがノウハウです。そのノウハウを活かして他の顧客に提供するのか、ノウハウを活かして提供するサービスを増やしていくのか。これまで多くの物流事業者のご支援をさせて頂きましたが"変化して成長"している企業は必ず目指す姿が明確でありその姿に向けたビジネスモデルを構築されています。
今、世間では物流業界は人気が無い、2024年問題で大変だ。といった情報に飲み込まれそうです。確かに課題はありますが企業経営には常にアンバランスをバランス化させていく活動です。 惑わされず、自社のビジネスモデル構築とそのための不足を着実に解決していきましょう。
必ず、顧客からも従業員からも地域からも選ばれる存在になれると信じて進んでいきましょう。

物流事業者の方向性は'選ばれる理由'を軸としたビジネスモデルを再構築すること

出所:タナベコンサルティング作成

著者

タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

土井 大輔

大手システム機器商社を経て当社に入社。2016年より“物流が世の中を支えている”と物流経営研究会を立ち上げ、物流業のサステナブルモデルを開発。”荷主側“の経営課題を把握した上で物流会社の事業戦略構築を得意とする。また、製造・卸売・小売・サービス・建設業の経営支援も数多く手掛け、熱意あふれるクライアントファーストの姿勢でのコンサルティング展開で多くのファンを持つ。

土井 大輔

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業66
200業種
17,000社以上
   長期ビジョン・中期経営計画に関する無料相談会開催中!