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昨今、企業の社会的責任と持続可能性への取り組みがますます重要視されています。
特に食品業界では、環境、社会、ガバナンス(ESG)への配慮が企業業績だけにとどまらず、長期的な成功についても影響を及ぼすことがわかってきました。
食品企業がESGに取り組むことでどのようなメリットがあるかを考えてみたいと思います。
食品企業がESGに取り組む必要性とメリット
食品産業では、食料需要の拡大、地球環境の破壊、SDGsへの関心増加などのマクロ環境変化の中、投資家や金融機関は企業におけるESGの要素を投融資の判断に組み込むESG投資・融資が拡大しています。特に食品業界は、そのバリューチェーン全体で様々なESG課題と関連しています。たとえば生産工程における温室効果ガスの排出、食品ロス抑制、食品廃棄物リサイクル、脱プラスチック、脱炭素(地球温暖化対応)など、食品業界固有の課題に対してサステナビリティへの対応が急がれているのです。
(1)顧客の信頼とブランド価値向上
ESGへの取り組みは、顧客との信頼関係を築く上での重要な要素となります。なぜなら顧客は食品企業の環境への配慮や社会的貢献を評価し、購買行動に影響することがあるからです。食品ロスの削減や脱プラスチック化は、日本においても、レジ袋の有料化や紙ストローの利用など脱プラスチックへの取り組みが推進されてきていますが、食品の安全性強化などの取り組みを進めることで企業のブランド価値が向上し、企業競争力強化につなげることができます。
(2)リスク管理とコスト削減
ESGの観点からリスクを適正に評価し軽減することが重要です。たとえば環境リスクへの対策を講じることで、将来の環境法規制や環境被害によるコストを削減することができるのです。環境汚染、廃棄物が発覚することによる撤去費用や対策に多額の費用がかかり、社会的評価が低下し、企業にとっては甚大なダメージを受けた事例もあります。またサプライチェーン全体での持続可能性の確保はビジネスの安定を高めることになります。
(3)投資家との関係強化
ESGへの取り組みは投資家・金融機関との関係を強化するためにも有益な手段となります。多くの投資家・金融機関がESG評価を重視しており、持続可能な経営に対する支援を行るケースが増えているのです。ESGの進捗状況や成果を適切にディスカッションすることで融投資の幅が広がる可能性があります。
(4)イノベーションと市場開拓
ESGの取り組みは新たなビジネスチャンスを開拓する手助けとなります。
環境に配慮した製品・商品開発やリサイクルなど持続可能なイノベーションは新たな市場の開拓につながるのです。
消費者の健康や従業員エンゲージメントの向上に焦点を当てた取り組みも競争優位性を持つ要因となるでしょう。
(5)従業員エンゲージメント向上
ESGへの取り組みは、従業員のエンゲージメントの向上にも寄与します。
社会的な貢献や企業の価値観への共感が、従業員の働く意欲を高め、従業員が誇りを持って働く環境整備をすることで、生産性や価値創造の向上につながるのです。
ESG取り組み事例
(1)キッコーマン株式会社
~食の自然環境を守る企業として、持続可能な社会の実現をめざします~ キッコーマン株式会社は、2030年に向けた環境ビジョン『キッコーマングループ 長期環境ビジョン』を策定されました。持続可能な社会の実現に向けて、長期的に取り組む分野、テーマ、目標を定め、キッコーマングループにおける環境活動をより強化する活動をされています。「長期環境ビジョン」では、3つの分野から構成されています。
①気候変動
・2030年度までに2018年度比でCO2排出量を50%以上削減
・製造プロセス改善
・エネルギー効率の高い設備の導入
・再生可能エネルギーの活用や技術革新
②食の環境
・水環境の保全と持続可能な調達の実現
・水の効率的な活用
・工場で使用した水の自然還元。
・環境に配慮した原材料の調達
③資源の活用
・食品ロスの削減
・環境配慮型商品の展開
・廃棄物の削減
・再資源化率100%目標設定
・石油由来の原材料削減
・環境配慮型商品の展開の推進
参照
https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/longterm.html
キッコーマングループでは、環境課題(E)や社会的課題(S)を取り入れることで、グループ全体としてESG活動に取り組んでいる事例といえましょう。
まとめ
食品会社がESG課題に取り組むことは、法的義務だけでなく、持続的発展を続けるために重要なステップです。上記にあげたように、ESGへの取り組みが企業のブランド価値の向上、リスク管理、投資家・金融機関との関係強化、新たなビジネスチャンスにつながる市場開拓、従業員のモチベーションの向上などのメリットにつながります。食品会社の持続的発展のためには、自らの取り組みを積極的に示していくことが必要ではないでしょうか。
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