CASE

経済産業省 近畿経済産業局 総務企画部 中小企業政策調査課

成長を阻むのは「継承されない能力」
~暗黙知を継承可能な組織能力へ転換する~

本記事は、近畿経済産業局が実施した、令和7年度に中小企業実態調査(成長志向企業に対する支援能力・体制強化に向けた「組織越境型伴走支援実践研修」の有効性検討に関する調査)事業をもとに、タナベコンサルティングの取り組みを紹介するものです。
企業の成長を支える重要な知識やノウハウは、多くの場合、特定の個人の経験や勘に依存しています。
しかし、その暗黙知が継承されないままでは、人材育成や事業承継は進まず、組織の成長も停滞します。
近畿経済産業局とタナベコンサルティングは、企業支援人材の育成を題材に、組織越境型伴走支援実践研修の中で「暗黙知を形式知へ転換し、誰もが学べる仕組みを構築できるのか」というテーマに取り組みました。これは企業支援に限らず、多くの組織に共通する暗黙知継承の課題を考えるうえでの実証事例です。

▼近畿経済産業局
令和7年度中小企業実態調査(成長志向企業に対する支援能力・体制強化に向けた「組織越境型伴走支援実践研修」の有効性検討に関する調査)調査報告書

組織越境型伴走支援実践研修調査レポート(以下、組織越境型伴走支援実践研修調査レポート)

なぜ組織は成長すると弱くなるのか

(1)属人化という見えない経営課題

企業の成長を阻む要因として、人材不足が語られることは少なくありません。
しかし実際には、優秀な営業担当者、熟練技術者、工場長、管理職などが持つ知識や経験が組織内で共有されず、特定の個人に依存していることが成長のボトルネックになっているケースが多く存在します。
こうした能力は長年の経験によって培われるため、本人も言語化できないことが少なくありません。
結果として、以下のような課題が発生します。

•後継者が育たない
•育成に時間がかかる
•事業承継が進まない
•組織拡大が難しい

(2)支援機関も同じ課題を抱えていた

この課題は企業支援機関においても同様でした。
企業から高い評価を受ける支援者は存在する一方で、その支援プロセスや対話の技術、課題設定の方法は暗黙知として個人に蓄積され、組織的な継承が難しい状況にありました。近畿経済産業局が着目したのは、「どうすれば優秀な支援者を増やせるか」だけではなく、「どうすれば優秀な支援者の暗黙知を継承できるか」という問いでした。

成長を阻むのは「継承されない能力」

出典:組織越境型伴走支援実践研修調査レポート

暗黙知を形式知へ変える挑戦

(1)暗黙知継承を目的とした実証プロジェクト

こうした問題意識のもと、近畿経済産業局は令和7年度「組織越境型伴走支援実践研修」を実施しました。
自治体、公的支援機関、金融機関、商工会議所などの支援人材が組織の枠を越えて集まり、地域企業への伴走支援を共同で実践する取り組みです。タナベコンサルティングは、本事業において研修運営に加え、「優秀な支援者がどのような思考を行い、どのように企業と向き合っているのか」を観察・分析し、継承可能な能力モデルへ転換するプロジェクトとして企画・設計を行いました。

(2)実践現場から暗黙知を可視化する

プロジェクトでは、経験豊富な支援者をロールモデルとして配置し、地域企業8社への伴走支援を実施しました。
参加者は企業訪問や経営者との対話を通じて、課題設定や現状分析のプロセスを実践的に学びました。
さらに、支援後の振り返りや対話記録の分析を通じて、以下の観点を整理し、

•どのような問いを投げかけているのか
•何を観察しているのか
•なぜ経営者との信頼関係が構築できるのか

これまで言語化されてこなかった暗黙知の可視化を試みました。

能力継承はすべての企業に共通するテーマ

能力継承はすべての企業に共通するテーマ

出典:組織越境型伴走支援実践研修調査レポート

能力継承はすべての企業に共通するテーマ

(1)企業支援だけの話ではない

今回対象となったのは企業支援人材でしたが、同様の課題は業界や職種を超えて見られます。
営業、技術開発、生産管理、品質管理、マネジメントなど、企業の競争力を支える能力の多くは暗黙知として存在しています。そして、それらが継承されなければ、企業は人材を確保しても持続的な成長につながりにくくなります。つまり不足しているのは人材そのものではなく、「能力を継承する仕組み」であるとも言えます。

(2)組織能力をつくることが成長戦略になる

今回の取り組みは、企業支援人材の育成を題材としながら、「暗黙知を形式知へ転換し、誰もが学べる仕組みを構築する」ことについて検証した実証事業でした。この実証は、個々の人材が持つ暗黙知を組織内で承継し、組織全体の能力へとつなげる可能性についても示唆しています。タナベコンサルティング は、多くの企業変革支援の現場において、以下のようなテーマに向き合ってきました。

•経営者の意思決定
•営業人材の育成
•技術伝承
•次世代リーダー育成

本事例は企業支援人材を対象とした一つのケースですが、本質的にはあらゆる企業が抱える「能力継承」という経営課題への挑戦です。企業の持続的な成長には、優秀な個人の力に加えて、その能力を組織全体で再現できる仕組みが重要です。今回の取り組みは、暗黙知を組織能力へとつなげる一つのモデルケースであるといえます。

出典:組織越境型伴走支援実践研修調査レポート

出典:組織越境型伴走支援実践研修調査レポート

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山本 剛史
タナベコンサルティング
専務取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部山本 剛史
村上 幸一
タナベコンサルティング
常務取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
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タナベコンサルティング
上席執行役員
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上席執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔

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