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不動産デベロッパー業界におけるESG・サステナビリティの取り組みとは?先進企業の事例も併せてご紹介します
ESG・サステナビリティとは
非財務諸表も加味した総合力で企業は評価される
ESG(読み方:イーエスジー)とは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の頭文字をとった略語です。
企業が環境・社会・企業統治に配慮する考え方であり、企業が社会に果たすべき責任の指標でもあります。ESGは、企業が持続的に成長するためには欠かせない考え方として世界に広がっており、裏を返せばESGが示す環境・社会・企業統治の3つの観点への取り組みや配慮が不十分な企業は、持続的成長が見込めない企業だということを意味します。
これまで、投資家は財務諸表(B/S、P/L)によって投資判断を行ってきました。
しかし、近年では、投資家の価値観も変化してきており、財務諸表に加えて非財務諸表(ESG:環境・社会・企業統治の視点)を加味した総合力で企業を評価するようになりました。
不動産デベロッパー業界における取り組みの変化
Environment(環境)からSocial(社会)へ
不動産デベロッパー業界においても、ESGは浸透しており、拡大を続けています。日本の不動産デベロッパー業界の特徴として、これまでは「Environment(環境)」、特に省エネルギー推進など環境負荷低減に関連する取り組みが先行していました。
しかし、2011年に発生した東日本大震災の影響や、2015年に国連サミットで採択されたSDGsの認知度の高まり、2019年に流行した新型コロナウイルスの影響によるテレワークの常態化により、自然災害の脅威への対応(BCP対策)、地域活性化、多様な働き方・暮らし方などの環境負荷低減以外の社会的問題に広く取り組むことが求められるようになりました。
このような社会背景や環境の変化を受け、国土交通省は、2021 年に「不動産分野の社会的課題に対応する ESG 投資促進検討会」を立ち上げ、より多くの資金が「Social(社会)」の課題解決につながる取り組みに投資されるように、環境の整備を進めています。「不動産分野の社会的課題に対応するESG投資促進検討会 中間とりまとめ」の中で、不動産に関する利害関係者とそれぞれの課題を以下のように整理しています。不動産オーナーや事業者は、利用者となるテナント、そこで働く人々、居住者、その地域社会に対し、多様な働き方や快適さ、自然災害や防犯対策、経済・文化の活性化、街の魅力向上などの課題を解決することが求められています。
出所:タナベコンサルティング作成
三井不動産グループの事例紹介
場・交流機会の提供で新産業の創造および発展に貢献する
不動産デベロッパーのなかでも社会課題の解決に先進的に取り組む企業として、三井不動産グループの事例をご紹介します。
同グループは、ロゴマークである「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げており、街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会をめざしています。
そのビジョン実現に向けた取り組みの一つに、日本橋エリアでのオープンイノベーションによる新産業創造、があります。日本橋エリアは、江戸時代から薬草や薬を扱う薬種問屋が軒を連ねており、現代も大手製薬会社が本社を構えるなど、多くの医療関連企業が集積しています。同グループは、その日本橋エリアにおいて、2016年に産学の有志が中心となって、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)を設立しました。会員は、再生医療・個別化医療・創薬・医療機器・ヘルスケアITなどのライフサイエンス研究・産業に関わる団体・法人・スタートアップ企業・個人が対象です。これまで接点のなかった団体・法人・スタートアップ企業・個人に出会いの場・交流機会を提供することで、オープンイノベーションの促進に貢献しています。さらに、新たな分野との化学反応も生じており、その一つが、宇宙航空研究開発機構 JAXAのLINK-J 加入をきっかけとした宇宙ビジネス共創プログラム「X-NIHONBASHIプロジェクト」の始動です。宇宙関連領域のビジネスの拡大にも挑戦するなど、新たなイノベーションを育むプラットフォームの役割も担っています。
さいごに
ESGの考え方を経営に取り入れるにあたって、自社を取り巻く社会課題、自社の責任で解決しなければならない社会課題の正しい現状把握を行うこと、自社の競争優位の源泉、参入障壁、コアコンピタンス(強み)を把握し、自社の事業活動を通して課題解決を行うことが重要となります。
今回、不動産デベロッパー業界のESG・サステナビリティの取り組みについて、ご紹介しました。
不動産デベロッパー業界は、人の生活に密接にかかわっているからこそ、環境だけでなく社会課題の解決に対する取り組みの幅も広く、また、積極的に実践することで得られる効果も大きいでしょう。
東京を中心として、グローバルな都市間競争が行われているなか、ただ良い建物を立てるだけでは勝てない時代となりました。不動産デベロッパー業界が、場・交流機会を提供によりイノベーションを創造して街としての価値を生み出し、プラットフォーマーとして日本の産業競争力を強化することは、今後不動産デベロッパー業界に求められる大きな社会課題といえるのではないでしょうか。
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