COLUMN

2025.12.25

事業モデルから学ぶ!新規事業の成功法則と進め方

目次

閉じる

事業モデルから学ぶ!新規事業の成功法則と進め方

昨今の経営環境での企業の持続的成長のため、新規事業の意義が高まっています。新規事業の成功を左右する、進め方と事業モデルです。「社内だけで創るのか、社外も巻き込むのか」「どのような事業モデルを構築するのか」。新規事業の成功確率を高めるポイントを解説いたします。

新規事業の意義と必要性

(1)新規事業の意義

「会社の未来をつくる」新たな事業の開発が、新規事業の意義です。
昨今は物事の不確実性が高く、未来予測に困難をきたしています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとってVUCA時代と呼ばれていますが、社会や顧客は常に変化しています。「企業は環境適応業である」という考えのとおり、VUCA時代においても、企業は持続的に成長し存続する使命があります。世の中の変化に合わせた事業の適応・変容が求められており、既存事業の延長で成長を考えるのではなく、世の中の変化をチャンスと捉える、今までに取り組んだことのない新たな事業の必要性が高まっています。

(2)新規事業の必要性

経営の原理原則として「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があります。企業経営においても安定的な成長に向け、事業の多角化が必要と考える経営者が増え、事業の多角化に向けて長期的な視点で新規事業開発に取り組む企業が増加しています。タナベコンサルティングが実施した「長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査」の結果、「収益改善」「新事業開発」「事業ポートフォリオ戦略策定・転換」が重視されており、新規事業に取り組む必要性が高まっています。

▼クリックで拡大します

年齢別 次期の長期ビジョン・中期経営計画の重点テーマ

出典:「長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査レポート(2024年10月)」タナベコンサルティング

新規事業検討の進め方と選択肢

(1)新規事業検討の進め方

企業において新規事業を検討・立ち上げる場合、大きく2つの進め方に分けることが出来ます。
①社内リソースを活用し、内部で創る
②社外リソースを活用し、外部と共に創る

(2)社内リソースを活用し、内部で創る場合

社内人材を中心に新規事業を立ち上げる場合、既存の強みを最大限に活かせること、組織活性化を図れることがメリットです。自社の固有技術や顧客ネットワークを存分に理解しているため、それを無駄にしない事業設計や既存事業とのシナジーの最大化を実現します。一方、大企業や業界のリーダーポジションとなる企業においては、顧客の意見やニーズに固執し過剰品質となり市場変化に対応できずイノベーションのジレンマに陥るケースや、客観性を求めすぎて意思決定が遅くなるケースもあるため、注意や工夫が必要です。プロジェクトリーダーの選定や推進方法が重要となります。
一般的なプロジェクト組成パターンとしては3つあり、経営幹部のみで行うパターン、次期経営幹部候補メンバーで組成するパターン、社内コンペ型として主体性の高いメンバーでプロジェクトを組成するパターンがあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、自社の状況と新規事業の目的を踏まえて最も適したパターンを選択することが重要です。

≪内部で新規事業を検討する際の3つのパターン≫

▼クリックで拡大します

内部で新規事業を検討する際の3つのパターン

出所:タナベコンサルティング作成

(3)社外リソースを活用し、外部と共に創る場合

スタートアップやコンサルティング会社との共創、アライアンス、M&Aなど、これらの方法は、スピード感が求められる事業の検討や立ち上げに適しています。社内リソースが揃っていない場合や、既存事業と親和しない分野への事業展開、社外のアイデア・技術を取り入れ競争力を強化したい場合に推奨されます。一方、企業文化や考え方の前提が異なる場合も多く、プロジェクトリーダーには多くのスキルが求められます。

(4)新規事業の進め方を決める際の5つの視点

新規事業の進め方を検討する着眼点を下表に纏めています。事業化のスピード、社内のリソース、機密性と独自性、リスク許容度とコスト、実行性と客観性の観点から、自社に不足する点を分析することで自社に適した新規事業の進め方を検討します。

≪新規事業の進め方を決める5つの視点≫

▼クリックで拡大します

新規事業の進め方を決める5つの視点

出所:タナベコンサルティング作成

新規事業開発のステップ

新規事業開発の進め方は大きく3ステップあります。

(1)自社と顧客の現状認識
(2)事業モデルの構築
(3)事業計画の策定

先ず、顧客と自社の現状を客観的に分析することで、大枠の方向性を検討します。その後、誰(顧客)に、何(提供価値)をどのように(手段)提供するかを整理しながら、事業モデルを設計、構築し、具体的な事業計画へと落とし込みます。

(1)自社と顧客の現状認識

①自社の現状を把握する

新規事業を検討するうえで最初に必要なのは、現状を客観的に正しく把握することです。自社の成り立ちや既存事業を振り返り、自社の強みや弱みを整理します。また、業界や競合他社の動向から、自社のポジションを客観的に整理し、機会や脅威を整理します。ここで、なぜ新規事業に取り組む必要があるのかを、明確化することも重要です。

②顧客の現状を把握する

ターゲットを考えるに当たり、顧客は何に困っているのか、顧客の課題は何かを整理します。
ここで重要なのは、顧客課題の解像度をあげることです。この時のヒアリングは可能な限り、実際のユーザーや原体験を持つ顧客とし、それを言語化します。顧客課題に対し、自社はどのような価値を届けられるのか、どのような価値を届けたいのかという視点を整理しながら、現状を分析することが肝要です。

(2)事業モデルの構築

現状認識が出来たら、誰(顧客)に、何(提供価値)を、どのように(手段)行うかをより具体的に設計します。まずは「誰(顧客)に」、「何(提供価値)を」届けるのかを検討します。製品やサービスが具体化された段階で、必要に応じて最小限の機能を備えたプロダクト(試作品)であるMVP(Minimum Viable Product)を作成しながら、実際のユーザーへのインタビューを繰り返し、顧客にとってどのような価値があるのかを検証する必要があります。検討の初期段階は「完璧さ」よりも「試行錯誤を繰り返す」ことを重視し、柔軟に修正しながら進めることが成功のカギとなります。
「誰(顧客)に」「何(提供価値)を」届けるのかが決まったら、「どのように」行うのかを検討します。事業モデルの設計は新規事業を成功させるために最も重要です。
市場規模、収益性、投資回収期間、リスク等、事業に関わる要素を多角的に評価しながら、事業モデルを検討します。

≪10の収益モデル(一例)≫

▼クリックで拡大します

10の収益モデル(一例)

出所:タナベコンサルティング作成

(3)事業計画の策定

事業モデルの完成後は実行計画を策定します。実行計画策定フェーズでは具体的なアクションプランに加え、撤退基準の明確化が重要です。新規事業は既存事業とマイルストーンが異なるため、事業によってはローンチまでの期間が長く、既存事業の組織とコンフリクトが生まれる可能性があります。そのため、事業計画には、KPIの設定や検証可能なマイルストーンの設定が必要となり、定期的な評価の仕組みや改善検討のプロセスの設計も重要です。

まとめ

不確実性が高まる中、企業は持続的成長と存続のため、既存事業の延長ではなく、変化をチャンスと捉えた事業多角化が求められています。新規事業は事業の多角化に向けた1つの選択肢です。新規事業の進め方は、社内リソースを活用する方法と、スタートアップ、コンサルティング会社、M&Aなど社外リソースを活用する方法の2つに大別されます。進める際は、自社と顧客の現状認識、事業モデルの構築、事業計画の策定という3ステップが基本となります。特に、柔軟な試行錯誤や客観的な評価が成功の鍵となります。また、事業化のスピードやリスク許容度など5つの視点を考慮し、自社に適した進め方を選択することが重要です。計画段階では、具体的なアクションプランや撤退基準を明確化し、関係者の理解と支援を得る仕組みを整える必要があります。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
チーフコンサルタント

倉掛 太一

大手総合不動産管理会社にて、マンション大規模改修工事の施工管理、技術部門の事業企画、改修工事のブランディング推進等を経て、当社に入社。複雑な事象こそ、分かりやすく解決することを信条とする。前職での不動産管理、建物改修、リフォーム経験を強みに住宅・建設業界を中心としたクライアントの経営課題に向き合う。

倉掛 太一

WEBINAR

一覧ページへ

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
68年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
18,900社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業68
200業種
18,900社以上