image1

今週のひとこと

事業経営はライバルとの対決である。
顧客の期待を超える満足を
常に提供しよう。

☆ BtoB企業も無視できないWebマーケティングの基本

 「効果測定ができる」。このメリットに注目し、Webマーケティングに取り組むBtoB企業が増加しています。
 ただ最近、BtoB企業に属している方々から「Webマーケティングを推進したいが、取り組み方が分からない」「何をすれば、各顧客との関係性に応じた施策になるのか」という課題をよく耳にします。
 そこで、今回はBtoB企業の方々がWebマーケティングに初めて取り組む際の三つのポイントをご紹介します。

 まず一つ目は「購買プロセスを可視化させる」ことです。Webマーケティング戦略を立案する際に、まず顧客が購買に至るまでの各検討段階を抽出します。例を挙げると、1.無関心、2.課題意識、3.情報収集、4.比較検討、5.決定・導入などです。そしてこの検討段階ごとに顧客がどんな心理状態かを書き出しておきます。この抽出作業は自社の営業担当者と一緒に検討します。
 特にBtoB企業は購買担当者だけでなく、決定権者や購買商品使用者など意思決定に複数人が関わることも多く、関与する全ての人に納得いただけなければ購買に至らないのは明白です。そのことを加味した抽出ができなければ、施策自体がミスマッチとなり成果は上がりません。そうならないためにも顧客に合った施策を講じることができるよう、プロセスを熟知している営業担当者へのヒアリングは有益です。

 そして二つ目は「購買プロセスごとに施策を検討する」ことです。一つ目のポイントで整理したプロセスごとにWebでの施策を検討します。基本的に活動内容はオフラインでの施策と同様、情報を提供することです。手法としてはWeb広告、SNS、SEO、メルマガ、ダウンロード資料などコンテンツ配信などが挙げられます。各購買プロセスに橋渡し役としてどんな施策が良いのか。また、すでに実施しているオフライン上の施策があれば配置し、例えば展示会出展、新聞・業界誌などへの広告出稿、セミナー、カタログなどの施策を割り振り、オフライン上で足りない施策をオンライン施策で展開することができないかなどを検討してみることです。プロセスごとにオフライン・オンラインを同時に実施し、成果を比較検討すれば、自社にとって今後最適な施策を選択する判断材料ができます。

 最後の三つ目は「コンテンツを生み出す仕組みをつくる」ことです。既述した顧客の検討段階の3.情報収集や4.比較検討などで講じる施策で情報提供を実施する際、どんな情報提供をすれば良いか、と悩むことが多いと思います。また、マーケティング担当者だけで考えるとコンテンツ開発の数に限りがあるのも想定できます。
 例えば、あるBtoB企業は、マーケティング担当者が競合先を比較した資料を記事化し、営業担当者は顧客から質問された内容を記事化するといった具合に役割を分担し、各営業支店が持ち回りで記事を蓄積していく仕組みにしています。ある顧客からの質問事項は、他の顧客からも聞かれる可能性が高く、想定問答集として活用できるため、社内でのノウハウ共有にもつながります。

 これらのことを踏まえ、積極的なWeb活用で顧客へ有益な情報提供を行い、顧客を引き付け、売り上げアップにつなげていただければと思います。

足田 悟史
SPコンサルティング本部
副本部長

consultant_reviewbanner


資源の投下と顧客の行動が直結しているか

小売店・商業施設で物販や個人向けサービスを行う店舗型ビジネスは、「待ちの商売」と呼ばれる。顧客が来なければ、売り上げは見込めない。これは事業の問題点ではなく、事業特性である。もし、それが会社のアキレス腱となるならば、自社の事業そのものが店舗型ビジネスに向いていないと考えなければならない。

従って、店舗を構える小売業やサービス業が売り上げを上げるために必要な資源(成長エンジンへの燃料)は、①ハードウエア(店舗・施設)、②人材(採用・育成)、③広告宣伝・販売促進の三つである。このうち①と③への投資について、それぞれの重要なポイントを述べていきたい。

ハードウエア投資のポイント

ハード面への投資においては、店舗(または施設)の設計コンセプトを明確にすること、そしてコンセプトと現場で行われるオペレーション(作業)との整合性が重要である。これを深く考えずに新設・増床や改装を行い、結果として無意味な投資になってしまうケースが多々見られる。

(1) 設計コンセプト

どの企業も、マーケティングやブランディングの観点から考察を重ね、店舗・施設のコンセプトを練っている。設備投資額が数千万~数億円に及ぶことも多い。そのため、第一歩となる設計コンセプトが一朝一夕に決まることはない。投資回収計画など定量的な施策から、経営者のビジョンに至るまで、ディスカッション内容の幅と深さは相当なものになる。

そうしたディスカッションを経て、経営者が社内に設計コンセプトを発信すると、一気に士気が上がる。「なぜ、そんなにテンションが上がるのか」と従業員に聞くと、「お客さまが来店して、私たちが接客する姿を思い浮かべるから」といった反応が返ってくる。

逆に、あまりはっきりしない設計コンセプトだと従業員の反応は薄い。自分たちが接客している姿を具体的に思い描けないため、反応のしようがないのだろう。ピンときていない従業員の間では、「そんなに予算を使っていいのか」「建てる意味があるのか」という議論まで始まる場合もある。

店舗や施設で活躍したいと願う従業員は、顧客と関わり合うことを望んでいる。とりわけ士気の高い人材は、「良い提案をしてリピート購買につなげ、顧客にとって唯一無二の店に成長させて業績に貢献する」という流れを理解している。そのためにも従業員の士気を高めるコンセプトが必須である。

経営者が自分の思いを込めてコンセプトを設計しても、現場から共感を得られなければ意味がない。従業員に届かないコンセプトは、コンセプト自体が存在しないのと同じなのである。

(2) オペレーションとの整合性

前述したように、店舗型ビジネスの基本は「顧客を待つ」ことだ。私は店舗・施設の良しあしを、この「待機時間」の活用度合いで判断する。そもそも" 待つ" という行為は、顧客が来るまで休憩するということではない。準備を整えて接客機会に備える作業であり、購入や契約に至る過程の一つだからである。

大切なのは、この待機時間をいかに使うかだ。固定ファンが多く、新たな顧客も創出している店舗・施設の共通点は、この時間を活用して有効な商品提案方法の周知や接客レベルの向上などを追求している。つまり、どうすれば待機時間を" 提案時間" に変えることができるかを研究し、生産性を上げている。

一方、業績が芳しくない店では、「待機時間=休憩時間」という認識がまん延している。「待機」できていないため、顧客が来店したときのあいさつはバラバラで、誰が接客に行くかをスタッフ同士でけん制し合う。売り場の人間関係の" 序列" で最も立場が弱い(若い)スタッフが接客に対応するも、経験が浅いため購入につなげられず、バックヤードで先輩のスタッフが小言や嫌味を言う――。こんな店舗や施設の業績が上がるはずもない。

ハードウエアに投資した結果、店舗や施設への来店客数が増えていくことが最良である。だが、来店客数が増えても、買い上げ客数が減っては意味がない。例えば、集客強化を目的に店舗の大幅増床に踏み切ったものの、スタッフの新規採用を考慮しなかったため、売り場の人員不足と接偶レベルの低下を招き、対顧客提案がおろそかになるといった具合である。

かつて、来店客数の対前年比は、店舗・施設の実力を示すバロメーターであったが、現在は有効なシグナルではなくなっている。現在は、「顧客への提案件数(アプローチ数)」を重視すべきだ。

店舗・施設の設計コンセプトとオペレーションの整合性を取るという観点が必要である。コンセプトとオペレーションの整合性とは、換言すれば「舞台・演者・演技がマッチしているか」である。これがピタリと合っている店舗・施設は、顧客にとってもスタッフにとっても" 居心地の良い場所" になる。

広告宣伝・販促投資のポイント

店舗型ビジネスでは、広告宣伝と販売促進(以降、広宣・販促)への資源投下が欠かせない。とはいえ、紙媒体やウェブ、SNSなどメディアは多岐にわたるため、売上高および営業利益に占める年間支出コスト比率は他業種に比べ際立って高くなる。

私がコンサルティングの現場で感じるのは、広宣・販促の金額や対売上高・営業利益比率に対する考え方が、非常に主観的な経営者が多いということだ。「多い、少ない」「意味がある、意味がない」「広宣・販促にお金を使わないから〇〇できない」などのタラレバ話まで、反応はバラエティーに富んでいる。

こうした反応を見るたびに、客観的な基準を定める重要性を痛感する。業種・業態により基準は異なるが、自社の広宣・販促費が" 成り行き投下" になっていないかを検証いただきたい。

(1) 資源の投下基準は何か

店舗型ビジネスでの広宣・販促には、「やめることが怖くてやめられない」という本音と実態がある。これは顧客と向き合う現場の最前線(店長・支店長・所長など)だけではない。役員クラスであっても、情緒的な理由で例年通りの資源投下を決定することが多い。

以前、私もフードサービス業に身を置いていたので、広宣・販促費の予算を削減したり、やめたりすることへの恐怖感は理解できる。しかし、費用の垂れ流しを防ぐためにも、判断軸を確立しなければならない。

(2) 営業利益へリターンさせる

「広宣・販促に連動して来店があったか、なかったか」で費用対効果を測っている企業が多い。しかし、来店客数のみを判断軸にすると、「何人来たのか」だけが注目され、店舗の実態(何人買ったのか、何がよく売れたのか、利益はいくらだったのかなど)が置き去りにされてしまう。

広宣・販促費は、本業利益である「営業利益」にリターンさせたい。営業利益はオペレーションとの因果関係が明白だ。来店客数や買い上げ客数(利用客数)を最重要指標にすると、肝心な部分を見失う。

設計コンセプトをとがらせ、店舗・施設を作って形にし、そこでスタッフが活躍することにより業績はつくられる。来店客数や買い上げ客数(利用客数)の推移は、業績を上げる過程にすぎない。利益が上がっていない時点の数字だけで次の投下判断を行うと、成り行き投資を助長しやすい。投下した資源が回収できているのかという判断を現場に求める必要がある。例えば、「〇人が来店されました」から、「〇円の利益貢献をしています」という報告に変える必要があるということだ。

この判断軸を、他の指標とすり替えてはならない。また、指標の数を増やしてもいけない。さまざまな判断軸があると、広く薄く資源を投下することになり、重点がぼやけてしまう。

店舗型ビジネスにおける資源投下は、ハードの設計コンセプトをしっかりと立て、従業員に届くよう明確化し、オペレーションとの整合性を図る。そして、広告宣伝・販売促進費の投下基準を定め、利益貢献(営業利益)を測定することが重要である。

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • 本部長代理 戦略コンサルタント
  • 浅井 尊行
  • Takayuki Asai
  • ビジョン構築、経営戦略構築~展開のコンサルティングで、製造~卸売~小売・サービス業など、幅広い分野で活躍中。特に、戦略を現場へ展開するマネジメント教育を得意とし、現場主義での真摯な指導を通じ、幹部育成~社員の行動改革を実現し、クライアントから高い評価を得ている。

1_miraibanner

未来の環境に適応できる自律したリーダーへの成長を支援
 
 
「郷土の発展」を願う思いが原動力となって成長
 
「親父以外は誰一人、賛成者がいない。それでも郷土の発展を願い、豊饒の海を埋め立てることを決めた。社是に掲げるその願いを受け継ぐことが、わが社の使命なんですよ」
 
三河湾に面した渥美半島で、港湾運送を中心に複合サービス事業を展開する愛知海運産業。代表取締役社長・山田俊郎氏が「親父」と語るのは、創業者・山田一美氏のことだ。1933年、セメント材料や食料品を海上輸送する汽帆船団を組織して田原回漕店を開業し、戦時下の企業統合を経て1950年に新会社を設立。地元の田原町(現田原市)の町長を務め、三河港田原地区の埋め立て造成や愛知県重要港湾の指定をけん引した、地域のリーダーでもあった。
 
郷土の未来を見据えた決断には、海苔養殖や漁業で暮らす人々の「埋め立て反対」の声と交渉を重ねる苦労があったが、見事にチャンスを呼び寄せる。トヨタ自動車田原工場の誘致(1979年操業開始)を実現し、800ha(ヘクタール)の工業地帯が生まれ、地元産業・経済の活性化へと結び付いていく。苦しかった漁業者の生計も、補償金を元手に畑を買い、トタンにかやを敷く草屋根から立派な瓦ぶきへと、豊かな暮らしに変わった。
 
郷土発展の原動力となることで、愛知海運産業も成長軌道を描き始める。港湾運送に建設、燃料、海洋レジャー、自動車整備などの事業で貢献し、グループ売上高(2019年3月期) は145億9200万円、社員数500名超の「地域ナンバーワン企業」へと発展を遂げている。その道程に、転機となる一つの出会いがあった。
 
「売上高が25億円、社員70名を超えたころ、組織化できていないのに気付き、タナベ経営に相談したのです。おかげで会社の骨格ができましたし、その時の経営診断書は、いまも当社の宝物です」
 
 
計画的な教育を推進し社内異業種交流の成果も
 
経営のバトンを俊郎氏が継承してから28年余り、赤字は一度もない超優良企業。
 
「勢いよく走り続け、狙った仕事は確実に取ってきました。ただ、社員教育がおろそかになってしまった」と振り返る俊郎氏。QC活動や交通安全、営業の研修に加え、3年前から計画的な社員教育を推進し、新たにチームリーダー育成研修や幹部研修がスタートしている。狙いはもちろん、経営幹部候補の育成だが、教育機会の少なかった社員に「研修とは何か」を知ってもらうことも目的だ。
 
「研修で会社のルールを学び、その通りにやれば、仕事が無駄なくスムーズに進み、楽しめるようにもなる。そこから先は、自分で考えて挑戦していくことも大事だぞ、と」(俊郎氏)
 
期待した成果は、着実に表れている。言われたことをやるだけでなく、次の一手のために何が必要で、どう展開すればいいのか。自ら情報をつかみ、生かそうとする姿がその証しだ。
 
さらに、「面白い変化」(俊郎氏)も生まれている。
 
「社名は『海運』ですが、当社は20業種を複合展開しています。各事業の社員が一堂に会することで、社内で異業種交流的に、互いにやっていること、考えていることを分かり合えるようになった。実はそれが一番、うれしいんですよ。タナベ経営の研修はディスカッションも多いし、そこで何か化学反応が生まれるんでしょうね」
 
常務取締役・八木祥綱氏も、手応えを感じている。
 
「グループ間の連携がしやすくなるのは、大きなメリット。1+1=『2+α』の相乗効果が生まれるのが、とても楽しみです」(八木氏)
 
 

愛知海運産業 代表取締役社長 山田 俊郎氏


 
 
 

港湾運送を中心に複合サービス事業を展開する愛知海運産業。三河港の発展に大きく貢献


 
 
人生のキャンバスになる「100年企業」を目指す
 
人材が育ちグループ力も高まる先に、100周年への道がある。海運事業では、三河湾田原地区に3万tクラスの大型船が入港可能な水深10mの埠頭整備も計画中である。大型船の入港をきっかけに、今後の港・地域の発展、そして200億円企業の仲間入りを果たすべく、一歩一歩着実に歩み始めている。
 
「社是の願いを受け継ぎ、次の世代もその使命を果たすために、『100年企業』を目指しています。人を育て、その感性に磨きをかけて、一人一人が自律して会社を強くしていくわけですが、これからはリーダーシップの在り方も変わっていくでしょう。
 
先代や私のようなトップダウンから、合議制になるのか、それとも新しい社長像が生まれるのか。先のことは分かりませんが、恐れることはありません。『企業は環境適応業』とタナベ経営の創業者・田辺昇一さんが言われたように、どう時流を先読みし、適応できるか。例えば、AIをどう使うかもその一つでしょう」
 
俊郎氏がいつも、社員に発信し続けているメッセージがある。「会社は人生のキャンバス」。それは、「全ての社員が多様な個性を発揮する集団になって、それぞれに楽しみながら、自分なりの彩りで幸せを描き出そう」ということ。「一色では、会社は経営できません」(俊郎氏)と笑顔で語る言葉も、多様化する未来を見通す道標になっている。
 
 
 

愛知海運産業 常務取締役 八木 祥綱氏


 
 

PROFILE

    • 愛知海運産業㈱
    • 所在地:愛知県田原市田原町柳町6
    • 創業:1950年
    • 代表者:代表取締役社長 山田 俊郎
    • 売上高:145憶9200万円(グループ計、2019年3月期)
    • 従業員数:500名(グループ計、2019年9月現在)

 
タナベ担当者より
 
愛知海運産業の創業者・山田一美氏は、1963年から田原町長として地域の発展に貢献。1981年、企業経営の基本を学ぶために、当時のイーグルクラブ東三河支部(タナベ経営)に入会された。
 
3代目社長・山田俊郎氏は創業者の志を引き継ぐとともに、赤字を一期も出さず「地域№1企業」を目指し、実現してきた立役者。現在も地域の大きなプロジェクトを見据えながら、次世代幹部社員の育成に尽力されている。2020年で設立70周年を迎える同社は、「100年先もファーストコールカンパニー」を目指し、未来創造に挑んでいる。
 

タナベ経営
経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
串田 時江


 
 
 

  • お問合せ・資料請求
  • お電話でのお問合せ・資料請求
    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所