COLUMN

2026.09.30

建設現場における生産性向上の課題と具体的対策

建設現場の生産性向上は、技術革新と業務改革を組み合わせながら、
持続可能な現場運営を実現していくことが求められます。

目次

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建設現場における生産性向上の課題と具体的対策

建設業界を取り巻く環境

(1)建設現場の生産性向上とは?

建設現場における生産性向上とは、限られた人員・時間・資源で、より高い品質と成果を生み出すことを指します。しかし建設業界は、紙図面・手書き日報・属人化した業務などアナログ作業が多く、他産業と比較しても生産性が低い水準にとどまっています。国土交通省の調査でも、建設業の生産性は長年横ばいであり、業務の非効率が構造的に存在していることが示されています。
さらに、2024年4月より働き方改革関連法が建設業にも適用され、時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)が義務化されました。従来の「長時間労働でカバーする」働き方は完全に限界を迎えており、現場の施工品質を維持しながら生産性を高めるためには、業務プロセスの見直し(BPR)とデジタル活用の両輪が不可欠です。

(2)建設業界の外部環境変化

建設市場は堅調に推移している一方で、資材価格の高騰、労務費の上昇、原油価格の変動など、企業の収益を圧迫する外部要因が増えています。また、AI・IoT・BIM・ロボティクスなどの技術革新が進み、建設現場にもデジタル化の波が押し寄せています。多様なデジタルツールが登場し、自社に合う技術を選択できる環境が整いつつあります。
制度面では、電子帳簿保存法・インボイス制度など、バックオフィス業務のデジタル化を求める動きも強まっています。これらの外部環境の変化は、従来のアナログ中心の業務運営を見直し、デジタル活用による効率化を進める必要性を一層高めています。

建設業界を取り巻く課題

建設業界を取り巻く課題

(1)就業者数の構造的減少と人手不足

建設業界の人手不足は、単なる採用難ではなく、就業者数そのものが構造的に減少していることが最大の要因です。総務省「労働力調査」のデータでは、1997年(685万人)をピークとして減少傾向となり、2023年はピーク時比70.5%の483万人となっています。2025年度には最大約90万人の技能労働者が不足するとの試算もあり、市場は拡大する一方で、働き手は減るという"需要と供給の逆転現象"が起きています。

出典元:総務省「労働力調査」

(2)営業利益率の低下

資材価格・外注費・労務費の高騰により、建設業の利益率は低下傾向にあります。

営業利益率はピークだった2018年3月期(2017年度)の8.5%から2024年3月期(2023年度)には3.1%まで低下しました。なお2025年3月期(2024年度)は5.0%へ回復しています。

原価管理の精緻化、予算・実績のリアルタイム把握が不可欠です。

▼クリックで拡大します 売上高・粗利率・営業利益率 推移 出典元:東京商工リサーチ「上場ゼネコン53社 業績動向調査」

(3)アナログ文化・属人化による非効率

国土交通省のDX政策資料では、建設業の生産性が他業界と比較しても低いことが問題視されており、理由として、以下のアナログ文化が大きな障壁になっていると示されています。

➀紙図面・紙台帳が中心でデータ化されない
➁日報・検査記録が手書きで転記作業が多い
➂属人化した業務により、情報共有が進まない
➃現場での変更が多く、データ更新が煩雑

これらは現場の生産性を大きく阻害する要因となります。

▼クリックで拡大します 2022年産業別生産性試算 出典元:国土交通省「建築分野のDX政策に関する最近の動向」

(4)働き方改革による業務見直しの必然性

時間外労働の上限規制により、従来の働き方を変えなければ、案件を断らざるを得ない、品質が低下する、若手が定着しないといった悪循環に陥ります。
「人を増やさずに成果を出す」 ための業務改革が求められています。

生産性向上を実現した事例

生産性向上を実現した事例

事例➀空調設備工事業A社「物流・加工ネットワークによる現場工数の大幅削減」

A社は空調設備工事を中心に展開する総合設備企業であり、首都圏の大規模案件を多数手掛けています。同社が抱えていた課題は、現場での加工・組立・荷受け作業に多くの人員と時間が割かれ、施工管理者が本来業務に集中できないという構造的な非効率でした。

そこで同社は、協力会社・物流会社と連携し、独自の物流・加工ネットワークを構築。資機材をロジスティクスセンターに集約し、オフサイトで加工・組立を行ったうえで現場へ搬入する方式へ転換しました。

その結果、

・ホテル新築現場:工数34%削減
・オフィス新築現場:工数11%削減
・現場施工工数:170人工 → 60人工(65%削減)
・揚重作業:47%削減

という大幅な生産性向上を実現。
特に、現場での加工・組立作業がほぼゼロになったことで、施工管理者は安全管理・品質管理・工程管理といったコア業務に集中できるようになり、現場全体の運営品質が向上しました。

事例➁総合建設会社B社「働き方改革とDX推進による現場効率化」

B社は全国で建築・土木案件を展開する総合建設会社です。同社が抱えていた課題は、現場社員の長時間労働と、属人化した業務による情報共有不足でした。

そこで同社は、働き方改革とDX推進を同時に進める「全社改革プロジェクト」を立ち上げ、以下の取り組みを実施しました。

・現場の課題を可視化するための全社アンケート・業務棚卸し
・本部・支店・現場を巻き込んだ徹底議論(対話会)
・パーソナル管理の導入による労働時間の見える化
・PCログ管理による勤務実態の把握
・BIM活用による施工計画の高度化
・RPAによる事務作業の自動化

これらの取り組みにより、

・時間外労働の上限規制違反ゼロ
・職員の意識が激変し、働き方改革が定着
・管理者が本来業務に集中できる環境を整備

といった成果が得られています。
特に、BIMとRPAの活用は現場のムダ削減に大きく寄与し、若手社員の定着率向上にもつながっています。

現場改善を進めるポイント

現場改善を進めるポイント

現場改善を進めるうえでは、「何から着手すべきか」「どの順番で進めるべきか」が曖昧なままでは改革が進みません。生産性向上は、単なる効率化ではなく、現場の働き方・組織の在り方・デジタル活用を総合的に見直す取り組みです。以下のポイントを押さえることで、現場改善を着実に前進させることができます。

(1)現状の悪さ加減を把握する

紙文化・属人化・二重入力・転記作業など、現場の非効率を定量的に把握します。どこにムダがあるのか、どの業務がボトルネックになっているのかを明確にすることが改革の第一歩です。

(2)アナログ業務の削減(BPR)

不要業務・低付加価値業務を排除し、業務フローを刷新します。特に、紙台帳・紙日報・紙の検査書類などはデジタル化の効果が大きく、現場の負荷軽減につながります。

(3)オフサイト化・分業化の推進

現場で行っていた加工・組立・事務作業を店社側へ移管し、現場は施工に集中できる体制を構築します。A社のように物流・加工をオフサイト化することで、現場の省人化が一気に進みます。

(4)デジタル化・システム導入

原価管理・日報・工程管理・安全管理などをデジタル化し、データ連携を進めます。デジタル化は目的ではなく、業務改革を加速させるための手段であることを忘れてはなりません。

(5)リアルタイム経営の実現

ERPや基幹システムを活用し、全社業績・部門業績・物件別収益をダッシュボード化します。リアルタイムで状況を把握できる体制は、迅速な意思決定と現場支援につながります。

まとめ

まとめ

建設現場の生産性向上は、就業者数の減少・利益率の低下・働き方改革・アナログ文化といった複合的な課題を解消するための必須テーマです。特に、今後は「人が減るスピードが、育成のスピードを上回る」構造的課題が続くため、現場の省人化・標準化・デジタル化は避けて通れません。
その実現には、

➀現状の課題・非効率の把握
➁アナログ業務の削減(BPR)
➂オフサイト化・分業化
➃デジタル化・システム導入
➄リアルタイム経営の実現

というステップが必要です。

A社・B社の事例が示すように、現場の作業を減らし、管理者の負荷を減らすことが生産性向上の本質です。建設現場の生産性向上は、現場力の強化・収益改善・働き方改革・企業競争力向上を同時に実現する、まさに経営の中心テーマです。今後も、技術革新と業務改革を組み合わせながら、持続可能な現場運営を実現していくことが求められます。

著者

タナベコンサルティング
インダストリー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

林 祐太

営業コンサルティング会社にて、IT・製造・人材・WEBマーケティング業界などへ新規事業開拓のコンサルティング及び、営業戦略・戦術の立案に従事したのち、当社に入社。前職の経験から、業界や規模を問わず、営業面の業績改善や新規事業の立上げなどを得意とする。

林 祐太

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