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昨今のグローバル化に伴い、大企業だけでなく、中堅・中小企業もグローバルマーケットの獲得を狙い、海外進出をしています。しかし一方で海外進出に失敗する企業も多くあります。海外進出に失敗した理由は様々ありますが、その理由の1つとして海外進出にあたり事業計画を十分に作成できていなかったということがあります。このような状況を踏まえ、今回は海外進出のための事業計画には何が必要なのか、計画作成のステップやポイント・リスク対策について解説していきます。
海外進出のための事業計画作成の3つのステップとポイント
まずはじめに海外進出のための事業計画を策定する前に、そもそも今のわが社およびわが社を取り組まく状況を正しく理解し、進出を検討している国のマーケット調査をすることが必要です。今は昔と違い、日本だけでなく中国・韓国企業も様々な国に進出しています。つまり競争が以前よりも激化しているということです。このため海外に過度な期待を持って進出する企業の大半は失敗しています。わが社の強み(他社と差別化できているもの)をしっかりと把握し、進出国で勝負できるか、あるいは進出国でのポテンシャルはどれくらいあるのか事前に調査することが必要です。またその際には進出にあたっての規制調査も必要ですし、最終的には実地調査も必要です。デスクトップ調査だけでは調べきれないことは当然ありますので、実際に現地に足を運んで現地の方の話を聞くことで分かることもあります。しかし、市場調査は具体的な収益に結びつく前段階のコストになるので、あまりコストをかけたがらない会社がありますが、本気でその国で勝ちたいと思うのであれば、市場調査に対して積極的に投資していくことが肝要です。
調査実施後はその調査内容を基に、今後の事業計画を立てていきます。例えば、販売会社を作って拡販していきたいのであれば、主に誰をターゲットにして何をどのようにして販売していくのかが事業計画では重要になってきます。また事業計画を策定する際は数値計画も必要です。数値計画がなければ予定通りにいっているのかどうか、振り返って定量的に検証できなくなります。また数値計画を作成する際はP/L(損益計算書)だけでなく、C/F(キャッシュフロー計画)も必要です。いつどのような投資をする予定なのかを明確にし、そのために必要な借入も含めて会社として事業を継続するための計画を作ることが重要です。数値計画を作るうえでは、いつ黒字化するのか、いつ投資した資金を回収するのかを明示することも必要です。また前向きなことばかりでなく、撤退基準を事前に決めておくことも重要です。進出判断よりも撤退判断の方が難しく、撤退が遅れてしまったが為に損失が膨らんでしまったというケースも多々あります。
最後に誰がいつまでに何をするのか、いわゆるアクションプランを明確にしていきます。期限がなければダラダラと時間だけが過ぎてしまいます。またアクションプランの進捗管理をするためにガントチャートを作り、今どの段階にいるのかを見える化することも重要です。進捗を管理できるような仕組みを作り、PDCAを回していくことが必要です。
以上3ステップ(市場調査・事業計画策定・アクションプラン作成)が海外進出のための事業計画を策定する際のステップです。
海外進出でよくある失敗とリスク対策
海外進出でよくある失敗とリスク対策について説明します。市場調査フェーズでよくある失敗としてまず1つ目に現地で紹介された人を信じ過ぎ、一気に多額の投資をしてしまうというケースがあります。現地の人から得られる情報は重要ですが、盲目的にならずに客観的に見る視点、複数の方からの意見を聞いたうえで判断することが必要です。日本人をターゲットにして騙すような人も海外にはいるので、注意が必要です。
2つ目は数値計画および撤退基準が曖昧な状態で海外進出したために、進出後に赤字が続いたとしても日本からの資金供与で生き延びて、損失が膨らんでしまうというケースです。
これは先述した通り、P/L計画・C/F計画に加えて撤退基準を事前に作成することで、計画通りに行かなかった場合の損切りを早期に判断して防ぐことができます。また撤退基準については判断できないような曖昧な定性的な基準ではなく、「3期連続赤字」など定量的な基準を設けることで誰が見ても同じ尺度で判断できるようにすることが重要です。
3つ目は海外の進出や投資ではよくあることですが、当初の予定より工期や期間が伸びてしまったが、何が原因で伸びているか、いつ完了するかが分からなくなってしまっているケースです。事前にスケジュールを見える化し、期限を決めて定期的(1週間に1回など)に進捗確認できる仕組みを作ることができれば、上記リスクは回避されます。オーナー会社の場合、社長の一存で決めることがあるかもしれませんが、そのような場合でも事前にスケジュール表を作成して、今どのステージでいつまでに何をしないといけないのかを見える化することが重要です。
まとめ
以上が海外進出のための事業計画作成のポイントとリスク対策です。最後に皆様にお伝えしたいのですが、どれだけ調査しても分からないことは当然にあります。しかし分からないから動かないというスタンスでいれば、いつまでたっても動くことができず、気づいた時には世の中から取り残されていることがあります。つまりリスクを犯してでも海外で成功するという強い意思をもって進むことも時には必要だということです。またどれだけ良い計画を立てたとしても実行できなければ意味が無いですし、実行する人がいなければ絵に書いた餅になります。事業計画の実現可能性を高めるためにも、計画を立てるだけでなく計画を推進する体制をデザインすることも同時に必要です。既に事業計画を作成している皆様も今回のコラムの中で出来ていないところは見直して、改めて自社の海外進出のための事業計画を見直してみましょう。
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