COLUMN

2024.03.19

労働集約型製造業の中期経営計画における3つの着眼点

労働集約型製造業の中期経営計画における3つの着眼点

労働集約型製造業を取り巻く外部環境

昨今の製造業の外部環境

日本の製造業は1980年代以降、付加価値の伸びが停滞・減少傾向に推移を続けています。その上で、昨今の製造業を取り巻く外部環境は、度重なる原価高騰、人件費上昇などでコストがかさむ等、企業にとっての逆風は大きく、今後もこの状態は続くことが予見されます。

労働集約型のビジネスモデル

製造業の中でも労働集約型のビジネスモデルにおいては、この逆風は更に痛手となり、収益構造の抜本的な見直しが求められております。その様な環境に置かれる中で、わが社の未来に対する次なる一手を模索している企業も多いのではないでしょうか。非常に重要な位置づけとして注目されているのが中長期ビジョン並びに中期経営計画です。

労働集約型製造業を取り巻く外部環境

中期経営計画における3つの着眼点

多くの課題を抱える労働集約型製造業において、中期経営計画でぜひテーマアップをしていただきたい戦略が「事業」「人材」そして「生産性」の観点で、以下の3つがあります。

1.汎用品の価格競争(コストリーダーシップ)や製品のコモディティ化による付加価値低下に対する対策立案
2.固有技術・ノウハウが属人化された結果が起因した人材力・組織力の低下に対する対策立案
3.一人当たりの労働生産性・労働分配率の悪化に対する対策立案

1.汎用品の価格競争(コストリーダーシップ)や製品のコモディティ化による付加価値低下に対する対策立案

高度経済成長期までは、製造における日本企業の付加価値は高かったものの、デフレ経済下で人件費が安い新興国へ生産拠点が移り付加価値は低下しました。さらに、設備標準化やコモディティ化が進み、汎用品製造はレッドオーシャンの領域になりやすく、常に価格競争が生まれています。
そのような中で、新しい価値を見出すためにバリューチェーンの再構築の検討は必須です。生産工程の前後に対していかにしてプラスαを見出すことができるか、バリューチェーンをフレームとして捉え、自社の強みを再発見頂きたいと考えます。
また、そもそもの製品別の粗利益・貢献利益を算出し、製品のカテゴリリストラなどを実施し、高付加価値製品へシフトチェンジすることも検討の必要があります。

2.固有技術・ノウハウが属人化された結果が起因した人材力・組織力の低下に対する対策立案

労働集約型の性質上、固有技術やノウハウといった専門スキルが個人に蓄積されやすい傾向にあります。しかしながら、現在は人材の流動性が高く、蓄積されたスキルの流出は、人材不足以上にわが社において致命的なリスクとなるでしょう。
まずは、自社の固有技術・ノウハウが人に集約されている状態を変えるために、「会社」に固有技術・ノウハウが蓄積できる仕組みを構築し、あわせて継承の仕組みづくりを実践していきましょう。
これらの仕組み構築にあたり、前提として、自社の固有技術並びにノウハウを体系的に整理し、標準化した上で形式知とすることが重要です。実行においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)との掛け算がカギとなっていると言えます。

3.一人当たりの労働生産性・労働分配率の悪化に対する対策立案

人件費の高騰が進む中、今まで以上に高いパフォーマンス力を発揮してもらわない限り、労務費過多倒産の道を断つことは出来ません。人的資本を多大に保有する労働集約型製造業においては、一番の悩みの種であり、DXへの取り組みは急務と言えます。また、生産性向上については、各機能それぞれで見直し改善を実施すると一貫性の無い取り組みになり、大きな改善に繋がらないという課題も見受けられます。
まずは、業務標準化の実施、そして各機能がコア業務へ注力できる環境づくりを合わせて実行するのが良いでしょう。第一歩となる業務の棚卸しにおいては、単に省人化・省力化・効率化を検討するだけでなく、機能においてコアとなる業務なのかどうかを念頭に置いた上で整理する必要があります。そうすると、業務集約が可能となり、ミドルオフィス・バックオフィスの関連部署への移管・RPA等のデジタル化、アウトソーシングも含め、本来注力すべき業務へ時間を割くことが可能となります。

そして、これらの判断は各部門で意思決定出来る内容では決してなく、経営判断であることも忘れてはいけません。

中期経営計画における3つの着眼点

まとめ

日本の労働集約型製造業において、現況は恵まれた環境と表すことは出来ず、今後も原価高騰や人件費の上昇は続いていくと考えられます。その中で持続的成長を続けるためには、付加価値の向上は必要不可欠です。
わが社の未来を考え、実行するためのロードマップとなる中期経営計画において、事業・人材・生産性の観点からテーマの見直しを実施し、高付加価値化へシフトしていきましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
コンサルタント

田仲 詩歩

工場自動化(Factory Automation)領域で、第二種電気工事士の資格を保有し、駆動・制御機器の法人営業として、顧客とともに製造現場の課題解決の経験後、当社へ入社。製造業や建設業を中心にコンサルタントのアシスタントとして、チームコンサルティングの支援をはじめ、クライアントサクセス、ウェビナー運営、顧客への訪問等、幅広くコンサルタントを支援している。

田仲 詩歩

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