COLUMN

2022.08.31

長期計画策定・推進による企業体質の強化

中長期計画で、変化をマネジメントする

企業を取り巻く環境は、コロナ・円安・インフレ・物流混乱・ウクライナショック等々で、多くの経営者から『現在の状況の中で打ち手を考えることが難しい、過去の経験から判断することができない』という言葉を聞く。この環境下では、直近の経済動向を見通し打ち手を考えるのは確かに困難であり、だからといって日々変わる外部環境に右往左往するのも得策ではない。先の見通しが難しい今だからこそ、10年後など長期的なビジョン(ありたい姿)を描き推進していくことが重要だと考えている。

そして、長期的なビジョンを描く中では、『自社が変化することを前提とした』ビジョンを描いていただきたい。事業戦略において例を挙げると、コロナ・円安等々に収益性が左右されないビジネスモデルを作る為にどうするか?であり、経営戦略において例を挙げると、
(1)SDGsを踏まえた長期ビジョン
(2)ダイバーシティと働き方改革(多様な働き方の提供)
(3)DX:デジタルトランスフォーメーション

これらは世界の潮流でもあるが、こと日本においては「人口減少によって発生する課題(経営課題)」と捉えることができ、長期ビジョンや中期経営計画の中では必ず検討課題として盛り込んでいただきたい。極論を言うと、これらのことを検討していない中期経営計画は、外部環境の変化を全く盛り込んでいないと言える。外部環境の変化を自社に関連性があると捉えるか、つまり自社事として捉えられるかどうかが重要である。

中期計画策定のポイント

変化することを前提としたビジョンを描いていただきたいと上記で記したが、その中でも必ず検討し、定量的に考えてほしいポイントが下記の2点である。

(1)利益率の向上

企業の中期経営計画を拝見していると、売上高と利益額は高めようとする企業が多いものの、粗利益率、営業利益率を変えていない企業が多い。強い企業となる為には、利益率の向上が不可欠であり。
①粗利益率をどう上げるか(どう商品、サービスの付加価値を高めるか)
②営業利益率をどう上げるか(どう生産性を高めるか)
の二つの利益率を特に意識していただきたい。
粗利益率を上げる為には顧客視点が重要となりブランディングの検討が必要となる。
また、デジタル化の推進等で生産性を追求することによって、営業利益率が改善する。

(2)LTV向上

企業の収益力を図る指標として、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を用いることを筆者は推奨している。LTVとは、「単価 × 数量 × リピート率 = LTV」という式で表すことができ、LTVを高めることが企業の収益力を高めることにつながるのが、この式を見るとお分かりいただけるであろう。LTVを高める為に自社の提供価値を顧客視点から見直し、『顧客価値』として昇華させていくことがブランディング活動となり、価値を顧客へ知らしめ、繰り返しの購買行動へ繋がるような導線を設計する為にデジタルマーケティング等の検討も必要になってくるであろう。ぜひ我が社固有の、我が社らしいLTVを定義付けし、社員全員でLTVを高める活動に重点を置いていただきたい。

また、もう一つお伝えしたいポイントとして、中期経営計画の数値策定を行うにあたっては、ぜひ『晴曇雨の3つのコース』で策定することを提言したい。冒頭の『変化をマネジメントする』為に、晴(良い)の場合はこの計画、雨(悪い)の場合はこの計画・・・というように想定される変化を複数パターンで検討し打ち手の準備しておくこと、つまり『悲観的に考えて楽観的に行動すること』が、経営の鉄則である。

経営は顕微鏡と望遠鏡

筆者は常々、経営とは顕微鏡と望遠鏡の使い分けだと考えている。
顕微鏡とはつまり目の前を見ること、今日の業績、今月の結果にこだわることである。
望遠鏡とは遠い未来、長期ビジョン・中期経営計画を見据えた行動をすることである。

顕微鏡と望遠鏡はそれぞれ独立しているものではなく、両方を見据えた経営をしていただきたい。人間の目に例えると、毎日・毎月の業績や方針を追いかけるばかりで目は疲労してしまうであろう。時には遠くを眺める(=長期ビジョンに沿って行動する)ことが、目の健康を保つ上では欠かせない。企業活動にも同様のことが言える。

長期ビジョン・中期経営計画から毎年の経営計画・部門方針が策定される企業が多いゆえ、当然、毎日・毎月の結果が長期ビジョンにもつながっていくが、短期と長期の話は混同しないように明確に分けていただきたいと考えている。会議によって報告・議論する内容を分けるのも一つである。長期ビジョンを力強く推進させる為には形骸化させないことが必要であり、定期的な進捗レビューからの課題共有、方針の修正は欠かせない。ぜひ最低でも四半期に一度はしっかりと推進メンバーが長期ビジョンを振り返る場を設けていただきたい。
最後に、長期ビジョンを推進することはバックキャスティングで未来を自ら創造することである。その為には、自社のこれまでのビジネスモデル等々を自ら否定しなければならないと考える方もいらっしゃるかもしれない。しかし、過去を否定するのではなく肯定していただきたい。自社の過去を否定するのではなく「自社がそのままでいることを否定」して、長期ビジョンを描いていただきたい。

経営においては、『過去肯定、未来創造、現状改善』の考え方が重要である。これまで会社が歩んできたことを振り返り強みを見つけ出す。そして変化することを前提に長期ビジョンを描く。長期ビジョンの実現に向けて明らかになったギャップを埋める為の戦略・戦術を具体化し推進する。この善循環サイクルを推進していただきたい。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

伊達 清一郎

産業機械を扱う専門商社で営業、Webマーケティング等での顧客開拓を経て当社に入社。「現場主義」をモットーとし、実践的かつ泥臭いコンサルティングで成果を出すことを信条に活動中。前職で培った、法人顧客を対象としたルート営業・新規開拓営業のノウハウを活かし、BtoB営業力強化、業務改善、マーケティング戦略立案、ビジネスモデル構築等のコンサルティングを得意とする。

伊達 清一郎

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