CASE
事例
B社 メーカー系上場企業
"変化"を前提とした長期ビジョンを構築し、
毎年チャレンジを繰り返す
10年中長期ビジョンと3カ年中期経営計画の策定方法についてB社での実施事例を振り返りながら解説していきます。
B社はある地域で老舗企業と呼ばれるメーカー系上場会社である。ある製品群で一定規模のシェアを維持しているものの、昨今、経営改革の遅れは否めず、目新しい中期計画は打ち出せていない状況でした。社員数も500人を超え、トップが一声かければ、瞬時に動く組織規模ではなく、社内にも閉塞感が漂っていました。
精緻な3カ年中期計画はあるけれども・・・日増しにつのる危機感
目標であるはずの中期経営計画が目標を見失っているという矛盾
3カ年計画の中期経営計画を経営企画室を中心に策定しているものの、商品別チャネル別に昨対比●%という積上げ式の思考から脱することが出来ず、経営資源の配分や、投資判断も近視眼的なものに陥っていました。
社員に向けて直接発表される中期経営計画も無味乾燥な数字が羅列されたペーパー数枚のみという状態であり、詳細はIR情報を見れば掲載されているので、各自確認するようにとのスタンスであり、社内への浸透度も非常に弱いものでした。
また、今も創業家である会長の発言力が大きく、「未来のことは予想してもわからない。中長期ビジョンの策定は意味がない。目の前のことを1つ1つきちんとやりなさい」という指示のもと、中長期の目指すべきビジョンも明文化されていない状況でした。
以上が経営企画室メンバーよりタナベコンサルティングに相談のあった課題(危機感)であり、短期(3年)ではなく長期(10年)のビジョン構築をプロジェクト型で進めることになりました。
中長期ビジョン策定で、企業価値向上を目指す!
今の時代に必要なことは能動的に変化すること
プロジェクト形式とメンバー選定
プロジェクト編成は、会長の甥である社長をリーダーとし、現役員を中心とした経営幹部メンバーが討議を重ねながら練り上げていく方式(※注釈1)を採用しました。
社長は自身が持つビジョンの核(もしくはキーワード)のみを抽象的に示し、他の経営幹部メンバーはそのイメージを具体的な内容へと落とし込んでいく方式となります。
B社に関して言えば、社長は10年後のなりたい姿をある程構想されており、折に触れ、経営会議や、年度方針の場で発信をしていたものの、会長への遠慮(配慮)から明文化することはなかったようです。
※注釈1:メンバー選定方法とプロジェクト形式にはその目的に応じて、タナベコンサルティングでは複数の選択パターンを用意し柔軟に対応しています。
<経営に参画するメンバーを増やす>
初回の討議で分かったことですが、社長の構想する中期ビジョンの内容を他の役員陣は文面通りに復唱は出来るが、戦略の中身や背景が説明できませんでした。役員陣がこの状態であるから、それ以下のレイヤー層の理解度は推して図るべしです。これでは立派な計画を策定しても推進力が増すことは考え難く、長期ビジョン構築後は、出来るだけ多くのメンバーを巻き込んで中期経営計画づくりに参画させることを提案、了承いただきました。
事業ポートフォリオで成長する の意味を説く
事業ポートフォリオの組み替え(※注釈2)に対する認識は決して高くはありませんでした。理由として、B社には主力事業が全売上げ構成比の90%以上を占めており、残りの2事業も5%未満。現役員陣も全て主力事業の出身であり、無理もない状況でした。
事業ポートフォリオの変革議論で、役員陣から再三発せられた言葉が、「2,3年では無理です」「受注もしてしまっているし、担当者も簡単には抜けない」というのが言い分です。
このように長期(10年)視点で議論をしていても、短期(2,3年)の視点に陥ることはコンサルティングの現場では、珍しくありません。
それでも粘り強く議論を重ねて、半年後にまとめ上げることが出来ました。
以下に策定した中長期ビジョンのサマリーを記します。
1.事業ポートフォリオを主力事業、社会事業、イノベーション事業の3つにセグメントし、各セグメントでの10年後構成比目標を設定。
2.各セグメントそれぞれで新規事業を検討する(中期経営計画への引継ぎ事項)
3.長期視点での投資目標の決定
4.M&Aビジョンの決定
5.10年後の組織デザインとサクセッションプランの策定
※注釈2:上場企業を中心に「事業ポートフォリオマネジメント(事業構成の最適化により経営資源の最適配分と投資効率の向上を図ること)の重要性が高まっています。「コーポレートガバナンス・コード」改訂版では、事業ポートフォリオ方針の策定や開示に関する補充原則が新設され、取締役会で決定した事業ポートフォリオの見直しと経営資源の配分(設備投資・研究開発・人材投資など)について、株主の理解を得ることが求められます。
後日、会長へ中期ビジョン策定の報告を行いました。
下記が今最も大事なことであると説明し、大変共感頂きました。
・変化の激しい時代に大事なのは、正確な将来予測ではなく、納得性である
・10年、20年先を見据えた長期ビジョンで「自社のなりたい姿」「どのような価値で社会へ貢献するのか」を語り、明文化する
・社内外のステークホルダーにも納得してもらって共に実現させることを呼び掛ける
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コンサルタント紹介
- タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部山本 剛史
- タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
- タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部高島 健二
- タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔