COLUMN

2026.09.30

建設業の生産性向上・人手不足を打破する
「ミドルオフィス」構築のポイントと取り組み事例

人手不足に悩む建設業の現場を支える「ミドルオフィス」。
その構築のポイントを3社の事例で解説します。

目次

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建設業の生産性向上・人手不足を打破する「ミドルオフィス」構築のポイントと取り組み事例

建設業の課題

(1)「現場任せ」がもたらす長時間労働と業務過多の実態

現在、多くの建設業・設備工事業が、少子高齢化に伴う人手不足や、時間外労働の上限規制への対応に追われています。現場の最前線で指揮を執る現場社員の業務負荷は限界に達しつつあり、これまでの現場任せの体制では企業の持続的な成長どころか、日々の工事を安全・円滑に完遂することが困難な時代を迎えています。こうした背景から、建設業界全体において「いかに現場の業務効率を高め、生産性向上を実現するか」が最重要課題となっています。

(2)定量分析で判明した「その他事務処理」が占める時間の多さ

現場の生産性向上を具体化するためには、業務活動の定量的な把握が不可欠です。弊社が建設会社において現場社員の業務時間を調査した例によると、現場監督は1日の業務時間のうち「15~23%」もの時間を「書類作成・事務処理」に費やしていることが判明しました。さらに見積作成や図面チェック等も含めると、1日の業務時間の約2~3割を現場監督が本来集中すべきコア業務(付加価値業務)以外の作業に追われているのが実態でした。毎日これほどの時間が現場の負担となっている事実は、建設業における生産性向上の大きな余地を示しています。

ミドルオフィスとは

ミドルオフィスとは

(1)目的:フロントとバックをつなぎ、組織的な生産性向上を牽引する

ミドルオフィスとは、最前線の「フロントオフィス(現場)」と、総務や人事などの「バックオフィス(本社など)」の中間に位置し、現場の事務作業や後方支援を専門に担う組織や機能のことです。その目的は、フロント機能を「顧客との直接接点」や「技術的なサービス価値提供」「緊急対応」といったコア業務へ集中させ、現場の生産性向上を最大化することにあります。現場に集中していた非付加価値業務をミドル機能へ移管し、標準化・効率化を進めることで、現場全体の生産性向上が恒常的に達成される仕組みが作られます。ミドルオフィスにより、ある建設会社では1現場につき「1日約2.5時間、年間約600時間」の現場社員の時間削減効果へとつながりました。

(2)主な業務:工数管理から作図支援、手続きサポートまで

ミドルオフィスが担う具体的な業務範囲は多岐にわたり、これらを集約することで劇的な生産性向上をもたらします。

施工準備・近隣対応

起工式や竣工式といった式典の有無確認、計画書の内容確認、業者手配・打合せ、近隣挨拶まわりや案内状の作成など。

施工中の事務サポート

現場の工数管理、作業指示書や工事日報の作成・確認、各種検査記録の作成・整理。

技術的支援・書類

施工図(作図)の支援や修正、施工体制台帳・施工体系図の作成・提示、見積もりや社内手続き・各種申請書類のサポートなど。

(3)ポイント:生産性向上の成否を分ける「現場監督経験者」の登用と「部署名」

ミドルオフィスを開設しても機能しない要因は、現場監督の「これまでは自分がしてきた業務だから自分でやるべきだ」という意識の壁にあります。この事態を回避し、生産性向上を軌道に乗せるための最大のポイントは、ミドルオフィスのトップに「現場監督として現場を差配してきた経験豊富な人材」を据えることです。現場監督経験者であれば、どの業務をどこまでミドルオフィスで引き受けられるか的確に判断でき、現場側も安心して仕事を預けやすくなります。また、部署の名称も重要です。部署名に「サポート」や「支援」という単語を含めると、社内外で「ここは脇役組織だ」という意識が生まれ、現場から「雑用のような仕事を振っておこう」という扱いを受けやすくなります。生産性向上の効果を発揮させるため、現場と対等に貢献する組織であるというイメージを連想させる名称(例:プレフロントチーム等)にこだわることが重要です。

ミドルオフィス構築における建設業の取り組み事例

ミドルオフィス構築における建設業の取り組み事例

(1)本社CADオペレーター配置による「業務フロー再構築」事例

建設業A社では、ミドルオフィスを組成し、これまで現場監督や主任が自ら行っていた図面作成・修正のフローを抜本的に再構築し、大幅な生産性向上を達成しました。具体的には、本社にCADオペレーターを集約・配置しました。現場では所長が日々の変更箇所を図面に赤ペンでマークし、その修正内容を現場監督から本社のCADオペレーターへ伝達して図面修正を任せる体制へ移行しました。改善の結果、現場監督の図面作成時間が大幅に削減され、本来やるべき施工管理業務への時間配分が可能となりました。発注業務や請求書チェックのフロー見直しも同時に行い、所長の事務処理時間は月間約10時間(約5%)短縮され、原価低減と生産性向上の双方を両立する成果を上げています。

(2)ミドルオフィス(現場支援チーム)の組織体制、役割区分を明確化した事例

建設業B社では、ミドルオフィスの組織体制を構築するにあたり、スタッフの経験値に基づいた明確な役割区分を導入しました。現場監督の経験を有する人材には、全ての業務を熟知した「統括責任者」の役割を設定。現場での主任以上の経験を有し、専門的な建築知識を持つ人材には、施工図の確認・修正や現場のフォローアップを行う「テクニカルサポートスタッフ」として配置しました。さらに未経験者やパート層には、CADや測量サポート、写真整理、各種申請業務を行う「現場事務」を割り当て、チーム全体の体制を整備しました。これにより、シニア人材や育児・介護等で現場常駐が難しい優秀な人材の力を活かした、持続可能な生産性向上体制が確立されました。

(3) 「対話会」による、我が事目線の生産性向上事例

建設業C社では、ミドルオフィス導入前に、会社任せではなく「現場社員が、我が事目線」で行動できるよう、現場社員を本社へ集め「対話会」を年10回以上開催しました。対話会では、働き方改革の目的を講義でインプットし、グループディスカッションで「現場で何ができるか」を徹底議論しました。参加者アンケートでは94%が「有意義」と回答し、「他現場の好事例や時間管理への意識を共有でき、向き合い方が変わった」と、現場と本社のマインドセットを一新し、全社的な生産性向上の機運を高めることに成功しています。

まとめ

ミドルオフィスの構築は、単なる「事務作業の単純な外注化や下請け化」ではありません。それは、これまで現場監督個人のスキルと長時間労働に依存していた建設業のビジネスモデルを組織力による効率的な運営へとシフトさせる「構造改革」です。まずはデジタルツールやヒアリングにより現場の業務活動を「見える化・数値化」し、不要な書類を削減・簡素化しながら、ミドルオフィスへ移管できる業務フローを再構築していくことが必要です。そして、現場を熟知した現場監督経験者のトップ・統括登用、スキルに応じた適切な組織体制のデザイン、および現場と本社の壁を取り払う対話活動による意識改革が重要となります。自社に最適化されたミドルオフィスを正しく構築できれば、労働基準法の上限規制をクリアするだけでなく、社員が生き生きと働ける経営基盤と生産性向上を図ることが可能となります。

著者

タナベコンサルティング
インダストリー&ドメインコンサルティング
ゼネラルパートナー

大裏 宙

前職はBtoC向けサービス事業(外食・教育・介護・保育)を全国展開する上場企業に勤務。経営企画、店舗開発、FC加盟店開発、新規事業立ち上げを経験し、当社へ入社。主に建設業における事業戦略構築、人材育成、働き方改革推進を得意とし、全国で多数の実績を有する。

大裏 宙

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