CASE

T社 物流業

物流企業が中長期ビジョンを構築する必要性と構築事例

物流業界の課題と長期ビジョンの重要性

物流業界では、働き方改革関連法によって、2024年4月以降トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限される「物流の2024年問題」があります。この問題により、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなる状況が起きています。また、2027年度以降に需給ギャップが発生し、2035年度にはトラック輸送の供給が需要に対して10%不足する可能性も指摘されています。
さらに、少子高齢化に伴う人口の減少により、2030年には輸送力の大幅な不足が危惧されています。これは「2030年問題」と呼ばれ、人手不足に対する対策が必要とされています。
人材確保、働き方改革などが急務となっているのです。
一方で、AIや自動運転車、ドローンといった技術の進化により、物流の生産性が向上する可能性があり、これらの技術は物流課題の解決策として期待されています。

このように目まぐるしく変化する社会構造・産業構造、不確実性がますます高まる時代では「未来をどうしたいか?どうなりたいのか?」がぼやけ、目の前の競争環境を勝ち抜くことだけに終始しがちです。
昨今の物流業界の課題に対応していくためには、短期施策では効果に限界があり、中長期で全社横断的な事業戦略と経営戦略構築が求められます。不確実な時代だからこそ今、自社を成長へと導く長期的な未来ビジョン・計画が重要なのです。

物流企業の長期ビジョン構築事例

(1)長期ビジョン構築の背景

ここで物流企業の長期ビジョン構築をご支援させていただいたT社の事例をご紹介します。
T社は、製造メーカーの物流機能が独立して子会社化した、売上100億円の物流会社です。親会社の製造機能が国内から海外に移転したため、案件のグループ比率は20%、外部比率は80%となっています。アセットを持たない利用運送を主な事業としているため、営業利益率が低いという課題を抱えておられました。

新たにグループ会社から抜擢された新社長が会社の現状を確認した際、以下の課題が浮き彫りになりました。

①社員が目指すべき長期ビジョンや中期経営計画がない。
②アセットが少なく、強みを明確にできない。
③営業利益が高まらないビジネスモデルになっている。
④組織の高齢化や中堅世代の空洞化が顕著で、明確な人事戦略もない。
⑤社員の育成が進んでいない。

これらの課題に対処するため、まずは会社が今後どのように成長・発展していくかを明確にするための長期ビジョンを構築することになりました。そのビジョンの中に、上記の課題を解決するための戦略を組み込み実行具体策に落とし込んでいかれました。社員が一丸となって目指せる目標設定を行うことが最優先と判断されたのです。

(2)長期ビジョン構築の進め方

次にどのように長期ビジョンを構築していったのか、その進め方を見ていきましょう。

①現状分析
まず長期ビジョンを構築する際には自社の現状を把握する必要があります。
外部環境の機会と脅威を正しくとらえ、そのうえで自社の資源、課題を整理し現状認識を行います。

②定性ビジョンの構築
次に10年後の自社のありたい姿を明確にし、社員がわかりやすく覚えやすい言葉として表現します。
これが定性ビジョンとなります。

③戦略の方向性を検討
現状認識で明確になった自社の状況と、10年後のありたい姿のギャップを埋めるための実行策が戦略に落とし込まれていきます。このとき大きく事業戦略、経営戦略の2つに分けて整理をしていきました。
事業戦略、経営戦略の方向性は下記となります。

<事業戦略>
・強化ドメインを明確にした強みの明確化
・M&Aによる自社アセット強化と事業の拡大

<経営戦略>
・人材育成と採用・人事制度の見直し
・DX化による生産性向上・働き方改革

➃定量ビジョンの構築
事業戦略と経営戦略から定量ビジョンを構築。
さらに、KGI達成のためのKPIを設定し、重点戦略の進捗管理を行っていきます。

⑤アクションプランの構築
長期ビジョンの中で事業戦略、経営戦略の方向性を示し、具体的なアクションプランを構築しました。
アクションプランを実行するための様々なプロジェクトを立ち上げ、推進体制を構築されています。

物流企業が長期ビジョンを構築する意義

(1)長期ビジョン構築後のご状況

T社の長期ビジョン構築をご支援、現在も実行推進までサポートさせていただきながら、同社は長期ビジョンで掲げた定性目標、定量目標を達成するために着実に前進されています。構築1年目の今期は増収増益を見込まれているそうです。
長期ビジョンは構築がゴールではなく、スタートです。そのため長期ビジョンをどのように達成させるかも踏まえて設計することがポイントとなります。

(2)物流企業こそ長期ビジョンが必要となる

物流企業が長期ビジョンを構築することは、変化する市場環境に対応し、競争優位性を確立・維持し、持続可能な成長を実現するために不可欠です。これにより、企業は長期的な視点で戦略を立て、社員一丸となりありたい姿の実現のために進んでいくことが可能となります。長期ビジョンは、企業の未来を切り拓くための羅針盤となり、全てのステークホルダーにとって価値ある存在となるでしょう。

会社プロフィール

T社 物流業

[ 所在地 ]
大阪府

業種 物流業
売上高 100億
従業員数 200名

コンサルタント紹介

山本 剛史
タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部山本 剛史
村上 幸一
タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
高島 健二
タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部高島 健二
土井 大輔
タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔

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タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
68年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
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コンサルティング実績

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