CASE
事例
株式会社マックシステムズ
中長期的な計画やビジョンが形骸化してしまわないための具体策
株式会社マックシステムズは愛知県に本社を構える、電子計測器・試験器の販売、検査機・試験器の設計製作、受託試験(信頼性試験/EMC試験/分析)、受託開発(電子回路、ソフトウェア)を手がける企業です。
計測・試験のトータルプランナーとして、常に最新の情報と技術を取り入れ、お客様に最適な計測・試験システムを提案されています。
目的化してしまう中長期的な計画やビジョンの策定
昨今、組織経営における中期経営計画は全体の約3/4の企業が策定している状況です。(図表1)
出典:タナベコンサルティング作成
多くの企業が中期経営計画の重要性に気づき、策定をされていることが見て取れます。
しかしながら、計画達成のためのアクションプランの実行ができておらず、計画の策定が目的となってしまっていないでしょうか。
これは中期経営計画のみならず、ビジョン策定においても起こり得ることだと考えられます。ビジョンが単なる目標と化してしまい、どのようにしたらそれが達成できるのかについて実行の具体策が無いために社員の方向性が一致していない状況が散見されます。
本事例では中長期ビジョンが形骸化しないための仕組みづくりに焦点を当て、教育の観点から組織としての遂行力(ケイパビリティ)を向上させた事例について紹介します。
2030ビジョンと3か年計画で挑む人材育成
策定したビジョンが形骸化しないようにするためにはビジョンの浸透と人材の育成が不可欠です。
マックシステムズ様においては、社員全員がビジョンを達成に向けた取り組みを遂行できる人材に成長するため、2030中長期ビジョンを策定し、3年かけて浸透を図りながら推進・人材育成を行いました。
以下にこの取り組みの要点を示します。
最も重要なポイントは、2030ビジョンを単なる口先だけのモノにせず、社員全員に浸透させるための時間と教育を十分に確保して実施したことです。(図表2)
出典:タナベコンサルティング作成
1. 「未来創造プロジェクト」の始動(初年度)
まず初めに、部長・課長クラスのメンバーを巻き込んで2030年中長期ビジョンを策定しました。
自社の現状を成長要因・強み・外部環境の変化の3つの要素から分析し、その結果をもとにマックシステムズ様における2030のあるべき姿(2030ビジョン)を策定、「自動車に関わるあらゆる産・官・学に対して、情報力とMAC(マックシステムズ)のアライアンス力により、お客様に信頼され選ばれ続ける企業」というビジョンを描きました。この一連の取り組みを通して、部長・課長クラスのメンバーにはリーダーとしての自覚と会社についての理解を深めていただきました。
2. 次世代幹部候補向けの教育プログラム「次世代BOOST12」(2年目)
2030ビジョン実現に向けて、次世代幹部候補である係長・主任クラスのメンバーを対象に、「次世代BOOST12」という教育プログラムを展開しました。リーダーとしての役割理解など、幹部に必要な基礎教育を行い、2030ビジョンに向けた個々の役割や責任を考えていただきました。これにより、2030ビジョンを各人が内面化する意識を育成しました
3. 会社全体へのビジョン浸透教育「真HOPE JUMP」(3年目)
3年目には「真HOPE JUMP」というプログラムを展開しました。このプログラムの目的は、一般メンバーに2030ビジョンを浸透させることです。また、「未来創造プロジェクト」と「次世代BOOST12」のメンバーが講師となり、一般メンバーの意識改革を促すと同時に、「人をつくる」ことにも主眼をおいて実施しました。カリキュラムの内容は講師陣でディスカッションを行ったうえで決定し、部下の成長課題に焦点を当てた教育を実施しました。
創業30周年記念のクレドブックと教育体系の整備
これまでの取り組みに加え、ミッション・ビジョン・バリューを策定することにより、会社の共通言語を設定し、組織としての遂行力向上を図りました。また、社員が迷った時の指針とするために、創業30周年を機にクレドブックを作成し、社員一人ひとりが携帯・いつでも確認できるようにしました。(図表3)
出典:タナベコンサルティング作成
クレドブックが形骸化するのを避けるため、具体的に「どのような行動がクレドの体現につながるか」を明確化し、社員全員がクレドを体現するための教育体系を整備しました。
この教育体系のポイントは3か年にわたる「未来創造プロジェクト」、「次世代BOOST12」、「真HOPE JUMP」を各階層別の教育に組み込みつつ、共通の教育体系とスキル別の体系を並行して導入したことです。(図表4)
出典:タナベコンサルティング作成
これにより、各人が自身の受けるべき教育を明確にすることができました。さらに昇進に向けた成長目標も意識できるようになりました。
まとめ
中長期的な目標が形骸化してしまわないための仕組みづくり事例を紹介しました。
ポイントは以下3点です。
(1)中長期的な目標や計画は策定が目的ではなく、それを実行するための具体策まで考えることが重要です。
(2)本事例では全社員の教育と育成に時間をかけることにより、組織としてのビジョン遂行力を向上させました。
(3)教育においては社内のメンバーが講師として参加することにより、一般メンバーの教育に意識改革を促すと同時に、「人をつくる人をつくる」ことにも主眼をおいて実施しました。
この事例からの学びは、中長期的な計画やビジョンを達成するためには策定だけでなく、それを実現するための仕組みづくりが重要であるということです。
中長期的な計画やビジョンを達成するためには、社員一人ひとりの理解と行動が欠かせません。
本事例では教育を通じてビジョンを共有し、具体的なステップに落とし込むことが、持続可能な成功への道を開く要因となりました。
会社プロフィール
株式会社マックシステムズ
[ 所在地 ]
愛知県名古屋市中区錦1-7-2 楠本第15ビル6F
所在地 | 愛知県名古屋市中区錦1-7-2 楠本第15ビル6F |
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設立 | 1993年4月26日 |
代表者 | 鈴木 晴之 |
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取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
- タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部高島 健二
- タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔