DX導入におけるデジタル投資は「既存ビジネスの効率化」に留まっている傾向
デジタル投資は、既存ビジネスの維持・運営に約8割が占められている状況が継続
2022年7月に公開されたDXレポート2.2では、DX導入に取り組む事による重要性は広がっているという、良い傾向になっている一方で、デジタルへの投資が未だに既存ビジネスの維持、運営に約8割占められている状況が続いており、DX導入に対して投入される経営資源が企業成長に反映されていない事を指摘しています。
DX導入における本質的目的である「バリューアップ(サービスの創造・革新)」の取り組みにおいては、実際に成果がでている企業は1割未満に留まっているのが実態です。
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DX導入において進む二極化
バリューアップへの取り組む企業の特徴
DX導入においては、「既存ビジネスにおける効率化」に留まる企業と、「バリューアップへの取り組み」において成果が出ている企業との、二極化が今後一層進むものと考えられます。
DXレポート2.2では、DX導入において成功する企業の共通する目指す方向性として、「既存ビジネスの効率化・省力化」ではなく、「新規デジタルビジネスの創出」や、既存ビジネスであっても「デジタル技術の導入による既存ビジネスの付加価値向上(個社の強みの明確化・再定義)」であり、その取り組みの結果、全社的な収益向上を達成しているとされています。
DXで収益向上を達成するための要因として、経営トップがDX導入に関して、ビジョンや戦略だけではなく、「行動指針(社員全員のとるべきアクション)」も具体的に示しており、それらの分析と結果共有によって企業の変革を促していることが企業価値向上につながるとしています。
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引用元:経済産業省「DXレポート2.2(概要)」令和4年7月(7頁)
以上を踏まえ、DXレポート2.2においては、DX導入で成功するための具体的なアクションとして以下を提示しています。
1.デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること
2.DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示すこと
3.経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、
互いに変革を推進する新たな関係を構築すること
DX導入のメリットと成功事例
DX導入企業が二極化している現状において、いち早く「バリューアップへの取り組み」への投資を行い、かつ経営陣の理解度、適切な企業文化の醸成。さらには、全てのステークホルダーがDXの意義とメリットを理解し、具体的な取り組みを進めていくことで、先行者利益によるメリットを享受できるといえます。
これには、新たなデジタル技術を取り入れるだけでなく、組織の文化や思考方法、ビジネスプロセスを変革することも含まれます。
DX導入企業が二極化している現状において、先行者利益によるメリットを享受するには、
以下の3点が必要です。
(1)いち早く「バリューアップへの取り組み」への投資を行うこと
(2)経営陣の理解度を深めて、適切な企業文化を醸成すること
(3)全てのステークホルダーがDXの意義とメリットを理解し、具体的な取り組みを進めていくこと
これには、新たなデジタル技術を取り入れるだけでなく、組織の文化や思考方法、ビジネスプロセスを変革することも含まれます。
DX導入の成功事例として、「DXグランプリ 2023」に選定された日本郵船株式会社の取り組みがあります。
日本郵船株式会社では、中期経営計画の実現のための戦略として「ABCDE-X」を策定し、AX・BX(中核事業の深化と新規事業の開拓を両輪とする基軸戦略)をCX(人材・組織変革・グループ経営変革)・DX・EX(エネルギートランスフォーメーション)によって支える戦略を打ち出しています。
この中でDXは他の4つのトランスフォーメーションを実現するEnabler(イネーブラー、何かを遂行するための手段)としての重要な役割を担っていると位置づけています。
さらに、同じ志を持つパートナーとの協業を深め、知恵を出し合うことで、社会的に最適なソリューションを生み出すことを目的としていると明言し、積極的にステークホルダーへの開示、発信を行っています。